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IPO(上場)に向けて行うべき内部統制とは? 整備の手順と注意点

2022年11月15日
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IPO(上場)に向けて行うべき内部統制とは? 整備の手順と注意点

証券取引所への新規上場(IPO)を目指すに当たっては、上場審査に向けて「内部統制」を整備する必要があります。

IPOを目指す企業は、金融庁の評価・監査基準をふまえて、計画的に内部統制の整備を進めましょう。

本コラムで、IPOに向けて整備すべき内部統制について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。

1、IPO(上場)を目指す際に重要な「内部統制」とは

「内部統制」とは、財務書類その他の情報の適正性を確保するために、会社が整備すべき社内体制全般を意味します。
以下では、上場を目指す企業が内部統制を整備するさいに考慮しなければならない、4つの目的と6つの基本的要素について解説します。

  1. (1)内部統制の4つの目的

    内部統制の評価や監査に関する金融庁の実施基準では、以下のようなことが内部統制の目的として掲げられています

    <内部統制の4つの目的>

    1. ① 業務の有効性および効率性
      事業活動の目的を達成するため、業務の有効性・効率性を高めること。
    2. ② 財務報告の信頼性
      財務諸表や、財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある情報の信頼性を確保すること。
    3. ③ 事業活動に関わる法令等の遵守
      事業活動に関係する法令や、その他の規範(社内規程、ガイドライン、社会通念など)の遵守を促進すること。
    4. ④ 資産の保全
      資産の取得・使用・処分が、正当な手続き・承認の下で行われるように、資産の保全を図ること。
  2. (2)内部統制における6つの基本的要素

    金融庁の実施基準では、以下のような要素が内部統制を構成するものとして掲げられています。

    <内部統制の6つの基本的要素>

    1. ① 統制環境
      組織の気風を決定して、組織内のすべての者の意識に影響を与えて、他の基本的要素の基礎となるもの。
    2. ② リスクの評価と対応
      組織目標の達成を阻害する要因(リスク)を識別・分析・評価して、当該リスクへの適切な対応を行う一連のプロセス。
    3. ③ 統制活動
      経営者の命令・指示が適切に実行されることを確保するための方針や手続き。
    4. ④ 情報と伝達
      必要な情報が識別・把握・処理されて、組織内外および関係者相互の正しい伝達を確保すること。
    5. ⑤ モニタリング
      内部統制が有効に機能していることを、継続的に評価するプロセスを。
    6. ⑥ ITへの対応
      組織目標を達成するための方針・手続きを定めたうえで、業務の実施において、組織内外のITに適切に対応すること。

2、金融商品取引法による「内部統制報告制度」(J-SOX)

金融商品取引法では、内部統制の整備状況を透明化するため、上場企業に「内部統制報告書」の公衆縦覧を義務付けています。
この内部統制報告制度は、アメリカの「SOX法」の日本版という意味で「J-SOX」と呼ばれています。

  1. (1)上場企業には内部統制報告書の公衆縦覧が義務付けられる

    上場企業には、毎事業ごとに、金融庁に「内部統制報告書」を提出することが義務付けられます(金融商品取引法第24条の4の4第1項)

    内部統制報告書は、EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)を通じて、5年間、公衆縦覧に供されます(同法第25条第1項第6号)。

  2. (2)内部統制報告書は監査が必要|ただし新規上場企業は3年間免除

    上場企業が金融庁に提出する内部統制報告書には、原則として、監査法人または公認会計士の監査意見を付す必要があります(金融商品取引法第193条の2第2項、内部統制府令第6条第1項第1号ロ)。

    監査法人または公認会計士によって「無限定適正意見」が述べられた場合に、内部統制が適切に整備されていると認められます(内部統制府令第6条第2項第1号)。
    したがって、上場企業は、無限定適正意見が得られるように、金融庁の実施基準に従って内部統制を整備しなければならないのです。

    ただし、新規上場後3年以内に提出する内部統制報告書については、例外的に、監査の免除を選択することが可能です(上場初年度の決算において、資本金額が100億円以上または負債額が1000億円以上の会社を除きます)(金融商品取引法第193条の2第2項第4号、内部統制府令第10条の2)。

3、IPOを目指す会社が整備すべき内部統制の内容

金融庁の実施基準では、内部統制の6つの基本的要素について、内部統制に関する評価項目の例が挙げられています。
上場企業は、実施基準で示された評価項目をふまえながら、自社の事業運営に即した内部統制を整備しなければいけません

以下では、各基本的要素のそれぞれについて、IPOを目指す会社が対応すべきポイントをまとめております。

  1. (1)「統制環境」に関する内部統制のポイント

    • 経営者が、財務方向の基本方針を明確に示す。
    • 適切な経営理念や倫理規程に基づき、社内の制度が設計運用する。逸脱した行動を適切に是正する仕組みを整える。
    • 適切な会計処理を行う。
    • 取締役会および監査役等が、経営者を適切に監督、監視する。
    • 監査役等が、内部監査人や監査法人(公認会計士)と適切に連携する。
    • 経営者が、好ましくない組織構造や慣行を適切に改善する。
    • 経営者が、企業内における適切な役割分担を定める。
    • 財務報告を適切に作成できる人材を確保、配置する。
    • 財務報告の作成に必要な能力の内容を定期的にアップデートする。
    • 従業員の責任と権限を明確化する。
    • 従業員等の責任と権限を適切な範囲に限定する。
    • 経営者が、訓練などを通じて従業員等の能力を引き出す支援をする。
    • 従業員等の勤務評価を公平、適切に行う。
  2. (2)「リスクの評価と対応」に関する内部統制のポイント

    • 信頼性のある財務報告の作成のため、経営者、管理者が適切に関与してリスク評価を行う。
    • 内外の諸要因とその影響を適切に考慮してリスクを識別する。
    • 組織や技術の変化に応じて、リスクを再評価する仕組みを整える。
    • 表面的な事実だけでなく、動機・原因・背景等を踏まえて不正リスクの評価、対応を行う。
  3. (3)「統制活動」に関する内部統制のポイント

    • リスクを十分に軽減するための方針と手続きを定める。
    • 信頼性のある財務報告の作成に関して、権限や職責を適切に分担、明確化する。
    • 担当部署の管理者に、指揮命令系統に関する責任と説明義務を負わせる。
    • 職務規程やマニュアルなどを適切に作成する。
    • 会社の業務全体にわたって指揮命令系統を適切に機能させる。
    • 指揮命令系統の誤りを適切に調査、是正する。
    • 指揮命令系統の妥当性を定期的に検証、改善する。
  4. (4)「情報と伝達」に関する内部統制のポイント

    • 信頼性のある財務報告の作成に関して、経営者の方針や指示を、会社内のすべての者へ適切に伝達される体制を整備する。
    • 会計財務の情報を、情報システムを通じて伝達、利用できるようにする。
    • 内部統制に関する重要な情報を、経営者や管理者に対して円滑に伝達する体制を整備する。
    • 役員その他の関係者間で、情報を適切に伝達・共有する。
    • 内部通報制度などを整備する。
    • 内部統制に関する外部からの情報が、役員などへ適切に伝達される仕組みを整える。
  5. (5)「モニタリング」に関する内部統制のポイント

    • 業務活動の一環として、内部統制の有効性を日常的にモニタリングする。
    • 適切な範囲と頻度により、内部統制の有効性を独立的に評価する。
    • モニタリングの実施責任者に、十分な知識や能力を有する者を指名する。
    • 経営者が、モニタリング結果を適時に受領(じゅりょう)し、適切な検討を行う。
    • 内部統制に関する重要な情報を適切に検討し、必要な是正措置を取る。
    • 内部統制の不備に関する情報を、適切な管理者などへ適切に報告する。
    • 内部統制の重要な不備等に関する情報を、役員などへ適切に伝達する。
  6. (6)「ITへの対応」に関する内部統制のポイント

    • ITに関する適切な戦略、計画などを定める。
    • 経営者がIT環境を適切に理解し、これを踏まえた内部統制の方針を明確に示す。
    • 経営者が、リスクを低減するため、手作業とITの各領域(の区別)を適切に判断する。
    • ITの利用によって生じる新たなリスクを考慮する。
    • ITの利用などに関する方針・手続きを適切に定める。

4、IPOに向けて内部統制を整備する手順・スケジュール

金融庁の実施基準では、内部統制を構築する際のプロセスが、以下のように示されています。

  1. ① 基本的計画および方針の決定
    内部統制を構築するに当たって、経営者が一貫した基本的計画・方針を示します。
    基本的計画・方針には、以下の内容を含めることが求められます。
    (a)適切な財務報告を実現するために、構築すべき内部統制の方針・原則、範囲および水準
    (b)内部統制の構築に当たる責任者、および全社的な管理体制
    (c)内部統制構築の手順および日程
    (d)内部統制構築に関与する人員、およびその編成・教育・訓練の方法など
  2. ② 内部統制の整備状況の把握
    現状の会社における内部統制の達成度や、実施基準が求める水準と比較した際の不備などを適切に把握します。
  3. ③ 把握された不備への対応および是正
    経営者などの責任者が主導して、内部統制の基本的計画・方針に従い、実施基準が求める水準を満たせるように内部統制の不備を是正します。


IPOを目指す企業が、上記の内部統制整備を行う際のスケジュール感の目安は、おおむね以下のとおりです。
時間的な余裕を確保して、計画的に内部統制の整備を進めてください。

  1. ① 基本的計画および方針の決定
    上場5期前~上場4期前
  2. ② 内部統制の整備状況の把握
    上場4期前~上場3期前
  3. ③ 握された不備への対応および是正
    上場3期前~直前々期(初期)

5、IPOに向けた内部統制の整備は弁護士にご相談を

株式の上場準備にあたっては、金融商品取引法や上場規則などをふまえながら、多角的に検討・対応を行うことが求められます。
特に内部統制の整備については、金融庁の実施基準を踏まえて、きめ細かい対応をしなければなりません。

金融商品取引法や金融庁の実施基準については、法律の専門家である弁護士に相談することで、不明点を解決しながら適切に対応することができます

6、まとめ

会社がIPOを目指すにあたっては、金融庁の実施基準に沿った適切な内部統制を整備する必要があります。
4つの目的と6つの基本的要素をふまえつつ、実施基準における評価項目例を意識しながら、内部統制の整備を計画的に進行していきましょう

ベリーベスト法律事務所は、企業法務の一環として、IPOを目指す企業からのご相談を受け付けております。
経営されている企業の新規上場を目指すなら、ぜひ一度、ベリーベスト法律事務所にご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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