貸したお金を返してくれない相手への対処方法と、督促を弁護士に依頼するメリットを解説
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令和元年11月、特殊詐欺対策を通じて知り合った高齢者から1千万円を超える現金をだまし取った容疑で詐欺罪に問われた京都府警の元巡査長に、懲役5年の判決が言い渡されました。また、令和5年4月には滋賀県の公務員宿舎から売却目的でスノーボードなどを盗んだ容疑で、滋賀県警の男性巡査が逮捕されています。両方とも警察官による犯罪ですが、その動機はどちらも「借金を返済するため」だったのです。
個人間の借金は、借りた側にとっては返済が困難になり、上述したような犯罪に手を染めるまでに発展する場合があります。一方で、貸した側にとっても、いつまで経っても相手がお金を返してくれないという事態に陥るリスクが存在するのです。
本コラムでは、「知人がお金を貸して返してくれない」という悩みを抱えている方のために、貸したお金を返してもらう方法や返済の督促・請求を弁護士に頼むメリットについてリーベスト法律事務所京都オフィスの弁護士が解説します。
1、返してくれないお金を取り戻すためにできることは?
まずは、友人、知人、親族など個人に貸したお金が返ってこないお金を返してくれない場合にできることを解説します。
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(1)電話やメールで返済を促す
まずは、電話やメールで連絡を取って、「遅れていること」と、「返済して欲しいこと」を伝えます。その場合に注意すべきことは、返済しない場合は会社への暴露や家族に危害を加えることをにおわせるような、脅迫罪に問われかねない発言をしないことです。
電話では、督促した記録が残りませんので、メールやメッセージアプリを使って督促をしてスクリーンショット等で記録しておきましょう。相手方からの、返信内容も保存をしておきます。 -
(2)民事調停
民事調停とは、裁判所で「調停委員」を介して双方が言い分を主張して、調停委員がトラブルの解決案を提示する手続きです。調停委員が、双方の主張を聞いた上で、双方が譲歩するかたちでのアドバイスをすることが多い傾向にあります。
話し合いの余地があれば、訴訟よりも解決までの所要日数が短くなる可能性が高く、双方が納得した上での解決が期待できます。 -
(3)支払督促
支払督促とは、金銭の支払いなどの引き渡しを求める場合に利用できる、裁判所で行う手続きです。お金を貸した人が、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の裁判所に申し立てます。
その請求が正当であると判断されると、裁判所が支払督促を相手方に送付します。
相手方が、2週間以内に異議申立をしなければ、お金を貸した人は、「強制執行」といって、給料や財産などを差し押さえる手続を申し立てることができるようになります。 -
(4)少額訴訟
少額訴訟とは、60万円以下の金銭の支払いを求める場合に限り利用できる手続きです。通常の訴訟とは異なり原則として1日の期日で審理を終えて判決が言い渡されるため早期解決が期待できる手続きです。
少額訴訟の判決は、通常の訴訟と同じ効力を持ちますので、相手方が異議申立をしなければ強制執行の申立てが可能です。
相手方が異議申立をした場合は、通常の訴訟に移行します。 -
(5)訴訟
通常、「裁判」と呼んでいるのが訴訟のことです。訴訟とは、裁判所が法律に基づき金銭トラブルのような法的トラブルを解決する手続きのことです。請求金額が140万円以下では簡易裁判所、140万円を超える金額の場合は地方裁判所に申し立てます。
訴訟では、当事者の主張や提出された証拠に基づいて認定がなされて判断が下されます。訴訟を提起する場合はそれ以外の手続きよりも、厳格な証拠が求められますので、借用書や督促の履歴などを必ず保存しておきましょう。
訴訟で勝訴すると、相手方に返済が命じられることになりますが、そのまま強制執行がなされるのではなく、訴訟で勝訴しても任意の返済がない場合は、別途強制執行の申立てが必要となることは他の手続きと同様です。 -
(6)強制執行
強制執行とは、お金を貸した人が裁判所に申し立てて、強制的に相手方の預貯金等を差し押さえてもらう手続きのことです。強制執行を行うためには、上記の手続きを経る等した上で、「債務名義」と呼ばれる判決文や調停調書等を事前に取得しておく必要があります。
また、強制執行を申し立てるためには、相手方の預貯金口座や勤務先等の差し押さえる財産の情報を知っておく必要があります。
2、自分でできる手続きはある?
相手方がお金を返してくれない場合の手続きは前述した通りです。
お金を貸した相手が返してくれない場合の解決方法は、当事者での話し合いによる民事調停や、支払督促など色々な手続がありました。
前述の方法のような、裁判所を経る手続きではなく、ご自身で行うことができるものにはどのようなものがあるのでしょうか。
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(1)内容証明郵便
内容証明郵便とは、送付した文書の内容の写しを郵便局が保存しておき、送付したことと、送付内容を証明してくれるサービスです。
内容証明郵便自体には、法的な拘束力はありませんが、独特の書式であることなどから心理的プレッシャーを感じて、支払いに応じてもらいやすい傾向にあります。
また、借金を請求した記録となるため、時効のカウントを中断させるという法的効果もあります。一般的には、内容証明郵便には下記の項目を記載します。- 文書の表題(督促状など)
- 支払ってもらう必要がある金額
- 支払い期日
- 期日までに支払わなかった場合の措置
- 日付
- 相手方の住所、氏名
- 自分の住所、氏名
内容証明郵便の発送時は、同じ内容の文書を3部準備します。1部は発送され、1部は郵便局で保管されます。もう1部は差出人の控えとなります。
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(2)執行認諾文言付き公正証書の作成
相手方の財産を差し押さえるために必要な、「債務名義」を一番簡単に取得できる方法が、執行認諾文言付き公正証書です。この書類を公証役場で作成することで、借金の返済が滞った場合にスムーズに強制執行を申し立てることができます。
お金を貸す場合は、相手方と事前に相談をしてお金を貸すことと引き換えに公正証書を作成しておくことで、強制執行への布石になりますし、給与等を差し押さえられるかもしれないという圧力を与えることが可能です。
3、弁護士に相談するメリットは?
お金を返してくれない場合、自身でも内容証明郵便を送付したり、民事調停や少額訴訟を申し立てたりすることができます。しかしながら、借金の回収は個人で行うよりも弁護士に依頼した方が回収に成功する可能性が高まりますので、弁護士に依頼することをおすすめいたします。借金の回収を弁護士に依頼するメリットは以下の通りです。
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(1)弁護士から督促されるだけで支払う方も多い
「弁護士に相談する」=「訴訟」のイメージがある方も多いと思います。しかしながら、多くの事案で、訴訟に至る前に弁護士による交渉や督促によって解決しています。借金問題の場合、弁護士からの督促文書や内容証明郵便が届くだけで、支払う方が少なくありません。早期解決を図りたい場合は弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
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(2)訴訟に対しても対応ができる
弁護士に借金の回収を依頼した場合、弁護士は「訴訟で勝訴できるかどうか」という観点で証拠を集めたり交渉を行ったりします。交渉がうまくいかず訴訟に至る場合を想定しながら交渉をしますので、二段の構えとなり借金回収の成功確率が高まります。
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(3)精神的な負担を軽減できる
お金の貸し借りで揉めている相手に対して、返済を要求したり、直接話し合ったりすることは精神的に大きな負担となります。相手との任意の交渉についても弁護士に依頼することで、相手と顔を合わせる必要がなくなるため精神的な負担が軽減されます。
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(4)法的な手続きや書類作業を一任できる
弁護士に借金回収を依頼すれば、内容証明郵便の作成から最終的な訴訟の手続きまですべてを依頼することができます。法的な手続きや書類作成の経験がない方が、一から行うと大変な労力になってしまいます。弁護士に依頼することで、日常生活や仕事に影響を出すことなく問題解決に向けての手続きをすすめることができます。
4、まとめ
お金を貸したのに返してくれない相手に対して、電話やメールで返済を催促してもなかなか返済してくれない場合もあります。その際は、内容証明による通知や裁判所での話し合いである民事調停などの方法を講じましょう。
それ以外にも、支払督促や少額訴訟、訴訟などの方法があります。
どの方法を選択すればいいのかわからない、借金問題に悩まされたくないという方は、弁護士にご相談ください。ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは個人間の借金問題についての相談も受け付けております。
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