借金の時効はいつ完成する? 借金問題で悩んだときの対処法を京都の弁護士が解説
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総務省統計局が発表する平成29年の「家計調査報告(貯蓄・負債編)」によると、2人以上の世帯における1世帯当たりの負債現在高は517万円になっています。
その約9割は土地や建物のための負債ですが、中には生活費などに困り借金を重ねる方もいます。
京都府においても多重債務や任意整理に関する相談窓口を設けるなどの対策が採られていますが、借金に関しては弁護士に相談することで解決の糸口が見つかることも少なくありません。
本コラムでは、借金の時効と借金問題で悩んだときの対処法についてベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、現在の借金の時効は何年で成立する?
消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合にはその権利を消滅させることができるという制度です。
つまり借金の債権者が権利を行使しないで一定期間経過した場合には、債務者の借金の支払い義務は消滅します。
消滅時効については、改正法が2020年4月1日に施行される予定です。
現在抱えている借金については、現行法の消滅時効が適用されることになります。
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(1)原則は権利を行使できるときから10年
現行法では、原則として「権利を行使することができるときから10年」で債権は時効によって消滅することが規定されています。
たとえば返済期日がある借金(債務)の場合には、返済期日の翌日が「権利を行使することができるとき」に該当します。そのため、返済期日の翌日から10年で消滅時効になります。
また返済期日がない借金の場合には、契約日の翌日が「権利を行使することができるとき」に該当します。そのため、契約日の翌日から10年で消滅時効になります。 -
(2)例外として5年またはさらに短期で消滅する時効もある
現行法には、例外的に「商行為によって生じた債権」については「権利を行使することができるときから5年」で消滅時効になることが規定されています。
たとえば銀行や消費者金融などから借りた場合の消滅時効の期間は、5年となります。
また飲食料や宿泊料などは1年、弁護士の報酬などは2年、医師や助産師の診療報酬などは3年等,短期の消滅時効が設けられています。
2、2020年4月1日以降の借金の時効については改正される
現行法の短期の消滅時効と商行為によって生じた債権の5年の消滅時効については、改正により廃止されます。
そして改正後は、「権利を行使することができるときから10年」または「権利を行使することができることを知ったときから5年」のいずれか早い方で消滅時効が完成するものとされます。
たとえば返済期日がある借金の場合には、返済期日が到来すれば「権利を行使することができるとき」であるとともに「権利を行使することができることを知ったとき」に該当します。そのため、返済期日の翌日から5年で消滅時効になります。
なお、改正後の消滅時効は、改正法が施行される2020年4月1日以後に発生する債権に適用され、改正前に発生した債権については原則として適用されません。
3、時効が成立するために必要なこととは?
時効が成立するためには、消滅時効に必要な期間が経過することに加えて「時効の援用」が必要です。
「時効の援用」とは、消滅時効が完成したことによる利益を受けることを債権者に示す意思表示です。
たとえば,時効を援用する旨の援用通知を内容証明郵便で債権者に送付する方法等が一例です。
4、時効の完成は難しい?
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(1)時効の中断
借金の消滅時効に関しては、時効の中断などにより時効の完成が阻止されることも多いものです。
時効の中断とは、一定の中断事由があったときにはそれまで経過した時効期間がリセットされるというものです。 -
(2)時効の中断事由
時効の中断事由には、次のようなものがあります。
① 請求
請求には、「裁判上での請求」と「裁判外での請求」があります。
「裁判上での請求」は、裁判所に訴訟を提起して請求します。
「裁判上で請求」された場合には、それまで進行していた時効期間は中断しリセットされます。同様に、支払い督促の申し立てや和解および調停の申し立てがあった場合にも時効は中断されます。
また「裁判外での請求」のことを「催告」といいますが、「催告」によっても時効が中断する可能性があります。ただし「催告」は「裁判上の請求」と異なり、催告後6ヶ月以内に訴訟を提起したり支払い督促の申し立てを行うなどの手続きをとらなければ、時効中断の効力は生じません。
② 差し押さえなど
債権者が裁判所に強制執行を申し立て、債務者の財産に対して差し押さえなどが行われた場合にも時効が中断します。
③ 債務の承認
債務の承認も時効の中断事由になります。
つまり消滅時効が進行している間に一度でも借金があることを認めたのであれば、その時点で時効は中断します。
なお、借金があることを認めていることを前提とした行動をした場合にも時効の中断事由になる可能性があります。具体的には、「少額でも債務の一部を弁済した」「支払いを猶予してくれるように頼んだ」といった事実があれば時効はその時点で中断されます。 -
(3)時効の完成を待つよりも具体的な対策の検討を
時効の中断事由をみていきましたが、債務の承認など中断事由に該当する行為をしていることも多いものです。
また借金の相手方が銀行や消費者金融や債権回収会社などであれば、借金を回収するためのノウハウがあるので消滅時効や時効の中断について熟知している可能性も高く、時効の完成は難しいといえます。
個人間の借金であっても、借金について消滅時効が完成することは少ないのが現状です。
そのため借金が時効によって消滅する可能性にかけるよりも、借金を整理するためにどうすべきかを弁護士などの専門家に相談することが現実的といえるでしょう。
5、借金にお困りなら債務整理を
借金にお困りの場合は、主に以下4つの債務整理の方法を検討することになります。
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(1)任意整理
任意整理とは、裁判所を利用することなく直接金融業者などと交渉して債務を整理する方法です。具体的には、将来利息や滞納した場合に発生する遅延損害金などを免除してもらったり毎月の支払額も減額してもらったりして、残債務額を36回または60回などと分割して支払うことで和解する手続きを行います。
ただし、基本的に債務者自身が直接金融業者などと交渉しても免除などの条件を受け入れてもらえる可能性は低いので、弁護士を通して任意整理を行う方がよいといえます。 -
(2)特定調停
特定調停とは、裁判所で調停委員を交えて金融業者と交渉し、債務の減額や毎月の支払額の減額、利息の免除などの条件で和解する手続きをいいます。
和解が成立したときに作成される和解調書には、判決と同様の効力があります。 -
(3)個人再生
個人再生とは、裁判所を介して借金全額のうち一部を免除してもらって残りの借金を原則として3年間かけて分割で返済する手続きのことをいいます。
個人再生は裁判所における厳格な手続きの中で行われるので、弁護士に依頼して進める必要があるといえるでしょう。 -
(4)自己破産
自己破産とは、裁判所を介してすべての借金の支払い義務を免除してもらう手続きのことをいいます。
自己破産で免除が受けられた場合には、すべての債務を支払う義務がなくなる反面保有している資産も清算しなければなりません。
6、債務整理を弁護士に依頼するメリット
債務整理について弁護士に相談するメリットには、次のようなものがあります。
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(1)直接の取り立てが止まる
弁護士は、金融業者との交渉を代理して行うことができます。そして弁護士に依頼した場合には、金融業者からの直接の取り立てはストップします。
取り立てがストップすることによって、ご家族や職場など、周囲への影響を心配することもなくなります。 -
(2)適切な債務整理の方法をアドバイスできる
弁護士は、それぞれのケースに応じてどの債務整理の方法が適切なのか見極め、アドバイスすることができます。
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(3)金額に関わらず代理できる
借金の金額に関わらずどのような案件でも裁判所の手続きを代理することができるのは、弁護士のみです。
司法書士も債務整理を取り扱うことができますが、司法書士は簡易裁判所における代理権を有するのみで140万円を超える債務を取り扱うことはできません。
弁護士は、制限なく手続きを代理することができます。
7、まとめ
本コラムでは、借金の時効と借金問題で悩んだときの対処法について解説してきました。
借金には消滅時効がありますが、現実的には時効が成立することは難しいといえるでしょう。現在抱えている借金問題を解決するためには、弁護士に相談し、債務整理を進めていくことをおすすめします。
借金問題にお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスまでお気軽にご相談ください。弁護士がご相談者さまのご事情をうかがったうえで、最適な対応策を考え、解決に向けてサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています