契約書が無くても借金の返済義務はある? 借金問題で苦しい場合の解決方法とは?
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借金がかさんでしまうと「給料から返す」といったまっとうな返済方法では追いつかなくなります。そのうち金利が高く条件が厳しい借金が増えてしまえば、自力での返済はほぼ不可能になるでしょう。
また、借金がかさんでくると、なかには友人や知人に頼み込んで借金する機会も増えてきます。友人や知人との間では、金融機関や貸金業者などとは違って契約書を交わさないこともあります。昔から「契約書のない借金は証拠がないから返済義務はない」という話を聞くことがありますが、果たして本当なのでしょうか?
本コラムでは、借金がかさんで苦しんでいる方に向けて、契約書が無い借金でも返済義務があるのか、どういった解決方法があるのかなど、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、契約書が無くても有効! 返済義務はなくならない
個人間でのお金の貸借トラブルでは、契約書が存在しないケースもめずらしくありません。友人や知人との間では、相手への信用のみで貸借がおこなわれることがあるからです。
では、契約書などの証拠となる書面が無い借金は、返済義務はないのでしょうか?
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(1)契約書が無くても「契約」は成立する
たとえ契約書が無い借金であっても、お金の貸主・借主の双方が合意して、貸主が借主に金銭を交付していれば契約としては有効です。
消費者金融などからお金を借りると「金銭消費貸借契約書」を交わすことになります。個人間でのお金の貸借も契約の種類としてはやはり金銭消費貸借契約となるため、有効な契約として認められるのです。 -
(2)返済義務はなくならない
契約として認められている以上、契約書が無くても、消滅時効が認められるなどの場合を除けば、借金返済の義務はなくなりません。
返済義務だけではなく、もし返済期日が決められていれば期日を守る義務もあります。
さらに、個人間であっても事前の取り決めがあれば年利20.0%以内、また、法定利息を課すことも許されています。なお、利息制限法の定めによって年利20.0%を超える利息は無効とされるほか、年利109.5%を超える利息については出資法違反として刑事罰の対象となります。
2、契約書以外で認められる証拠とは?
契約書が存在しない金銭貸借は、借主としては「借りたおぼえがない」と主張することで返済を免れるのではないかと期待してしまいますが、契約書がなくてもほかのものが証拠として認められることがあります。
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(1)メールやチャットのやり取り
「お金を貸してほしい」などの借金の申し込みや「◯月◯日までに返済する」など、借金の存在を認める内容がメールやLINEなどのチャットツールで確認できれば、これも証拠となりえます。
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(2)契約書以外の書面
メールやチャットツールだけでなく、借金についてのやり取りが書き記された手紙なども、借用書と同様に証拠となりえます。
また、これらが一切存在していない場合でも、口座への振り込み履歴や明細書などがあれば直接的ではないにしろ証拠として認められるケースもあるでしょう。 -
(3)会話の録音
借金に関する会話や電話の通話内容を録音されていれば、これも証拠と認められることがあります。
3、契約書が無い借金の返済義務
契約書が無い借金に法的な返済義務があるとしても、契約書がない限りはやはり証拠として弱い印象があるでしょう。「契約書がなければ返済を主張できない」という話を聞いたことがある方もいるはずです。
契約書が無い借金であれば、返済義務がないのでしょうか?
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(1)注意点
契約書が無い場合であっても、お金の貸借が民法上の「契約」として認められている以上、消滅時効が認められるなどの場合を除けば、返済義務があります。約束の期日に返済しなければ債務不履行となり、法的な責任を負うことになります。
これは「返さなくてもいいだろう」と悪意をもって返済しない場合に限らず、単にお金が工面できずに返済が追いつかないケースでも同じです。
また、はじめから「契約書が無いから返済しなくても大丈夫だろう」と返済の意思なくお金を借りた場合は「借りた」のではなく「だまし取った」と判断されることがあります。この場合、民法上の責任だけでなく刑法の詐欺罪に該当してしまうおそれがあり、逮捕され刑罰をうけることがあります。 -
(2)相手が裁判所の手続きを利用することもある
契約書が無いからといって返済せずにいても、相手が返済を求める意思を持っているかぎり、返済からは逃れられません。
友人・知人の間なら、はじめのうちは「返済してほしい」と口頭でいわれるだけで済むでしょう。しかし、あまりにも期限を過ぎていたり、返済を求められても無視していたりすれば、しびれを切らした相手から裁判所の手続きによって返済を求められるおそれがあります。
裁判所の手続きは、次の方法が考えられます。
●支払督促
書類審査のみで裁判所書記官が支払いを命じる制度です。
●少額訴訟
60万円以下の金銭の支払いを求める簡易的な訴訟手続きです。
●通常訴訟
民事訴訟法に従って通常の裁判手続きで審理される方法です。
裁判所の手続きを利用されれば、貸主が請求に必要な事実を主張して、必要な証拠を提出した場合、貸主の請求を認容する判決が出される可能性があります。「契約書がないから」といった貸主の不備を突いたところで、返済義務がなくなるとは限りません。
借金を踏み倒す方法などに気を取られるのではなく、返済に向けた前向きな方法を検討するべきでしょう。
4、借金問題の解決には債務整理が有効
友人・知人からの借金を返済しなければ、相手から裁判所の手続きで訴えられるおそれがあります。かといって、消費者金融などへの返済がかさんでいれば、督促が厳しくない友人や知人への返済はあとまわしになってしまうでしょう。
借金問題は、相手が業者・個人を問わず根本的に解決しないと元の健全な状態には戻れません。そして、借金問題を根本的に解決できる方法が「債務整理」です。
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(1)債務整理の種類
債務整理には次の3つの手続きがあります。
●任意整理
貸金業者と借主との話し合いによって、これまでに支払いすぎた利息分と将来支払う利息をカットし、毎月の支払額を軽減できる手続きです。返済額が多すぎて支払いができないという方に向いています。
●個人再生
裁判所に再生計画案を提出し、利息をカットしてもらって返済する手続きです。原則3年かけて分割で返済すれば完済したことになるというメリットがあります。住宅ローンの返済がある場合、持ち家を残したまま手続きできる場合があるというのも大きなメリットです。
●自己破産
処分できる財産を換金して返済したり、不動産や高額な資産などを処分したりする必要はありますが、返済できないほどに膨れ上がった借金の解決策としては非常に強力です。 -
(2)債務整理を弁護士に依頼するメリット
任意整理・個人再生・自己破産といった債務整理は、非常に煩雑です。これらの手続きは債務者本人でも可能ですが、消費者金融や裁判所には弁護士を通じて手続きが取られることを前提としている面もあります。
弁護士に相談し依頼することで、借金の状況に応じてどの手続きがもっとも適しているのかのアドバイスを受けることができます。
また、代理人として煩雑な手続きを一任できるので、債務整理にかかる手間を最小限で抑えられます。
月々の返済額を抑えることができれば、友人や知人から口約束で借りたお金の返済もできるようになるほか、過払い金返還請求によって取り戻したお金を返済にあてるという方法もあります。
まずは借金の状況をすべて正確に把握する必要があるので、資料をそろえて弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
たとえ契約書のない借金であっても、民法上ではれっきとした「契約」にあたるため返済義務がなくなることはありません。もし返済しないでいると、相手が裁判所の手続きを利用して返済を求めてくるおそれもあるので、まずは誠実に返済計画を説明して対応すべきです。債務整理を利用して借金問題を根本的に解決できれば、友人・知人などへの返済もめどがたつでしょう。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、借金問題に関するあらゆる相談が可能です。借金問題の対応経験が豊富な弁護士が、あなたの状況を整理して最適な方法を提案しサポートします。
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