ブラックリストから自分の情報を消すことはできるか? 弁護士が解説
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京都府のデータによると、2020年10月中の京都府内における企業倒産件数(負債総額1000万円以上)は23件で、前年同月比で5か月連続の増加となりました。
借金や利用料金を滞納すると、信用情報機関の保有するブラックリストに載ってしまうことがあります。
ブラックリストに掲載されてしまうと、日常生活においてさまざまな影響が生じますので、自分の情報をリストから消すことはできないかと考えるのも無理はないでしょう。
しかし、実際にはブラックリスト上の情報を削除することは困難と言わざるを得ません。
「ブラックリストから情報を削除してあげる」と言ってすり寄ってくる業者は、まずは悪徳業者ではないかと疑いましょう。
この記事では、信用情報機関の保有するブラックリストから自分の情報を消すことはできるのかどうかを中心に、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「京都府経済の動向(令和2年11月報告)」(京都府))
目次
1、ブラックリストとは何か?
まずは、そもそも「ブラックリスト」と呼ばれるものが何なのかについて解説します。
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(1)信用情報機関が保有する事故情報のこと
一般に「ブラックリスト」と呼ばれているのは、信用情報機関と呼ばれる会社・団体が保有している、債務不履行などについての「事故情報」です。
金融機関やカード会社などは、顧客に対する与信を行う前の審査において、顧客が債務を支払う能力を持っているかをチェックしています。
その際、過去の債務支払いが問題なく行われているかどうかを確認する必要がありますが、このとき参照されるのが、信用情報機関が保有する信用情報です。
信用情報の中には、過去に債務不履行や倒産などがあった場合には、その旨が記載されます。
これがいわゆる事故情報(通称ブラックリスト)です。
金融機関などがブラックリストを参照した結果、顧客の債務不履行の過去が明らかとなった場合、
「この人にお金を貸したとしても、返してくれるとは限らないかもしれない」
と判断し、顧客に対する与信を行わない方向で検討が行われることが多くなります。 -
(2)主な信用情報機関三つ
信用情報機関には、主に以下の三つの団体があります。
①株式会社日本信用情報機構(JICC)
消費者金融など、非銀行の貸金業者系の信用情報機関です。
②株式会社シー・アイ・シー(CIC)
クレジットカード会社系の信用情報機関です。
③全国銀行個人信用情報センター(KSC)
銀行系の信用情報機関です。
金融機関やカード会社は、上記のうち一つまたは複数の信用情報機関が保有する信用情報を参考にして、顧客に対する与信の可否を判断しています。なお、各信用情報機関の間では、信用情報の共有も行われています。
2、ブラックリストに載る悪影響とは?
信用情報機関のブラックリストに掲載された場合、基本的にすべての金融機関・カード会社などとの関係で、与信を受けることが極めて難しくなります。
具体的には、日常生活において以下のようなデメリットが生じることになるでしょう。
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(1)新たに借金ができなくなる
金融機関やカード会社にとって過去に債務不履行があった人に対しては、どうしても「お金を貸しても返してくれないかもしれない」という懸念が先に立ってしまいます。
そのため、ブラックリスト掲載期間中は、金融機関から新たに借金をすることは事実上不可能になります。
たとえば住宅ローンや車のローンを組もうとしても、審査が認められない可能性が高くなります。 -
(2)クレジットカードが作れなくなる
クレジットカードは、その時点で購入した物の代金を1~2か月後に口座引き落としで支払うという仕組みになっています。
つまり、この1~2か月のタイムラグの間は、カード会社から利用者に対する与信が行われているわけです。
しかし、ブラックリストに載っている人の場合、1~2か月後に口座にお金があるかどうか疑わしいという思考が働いてしまいます。
そのため、ブラックリスト掲載期間中は、新たにクレジットカードを作成することは事実上不可能になります。 -
(3)携帯電話端末代金の分割払いができなくなる
携帯電話端末代金の分割払いの際にも、携帯電話会社による与信審査が行われます。
本来であればその場で代金を一括で支払ってもらうべきところ、分割期間中は代金支払いを待たなければならず、その意味で与信が発生するからです。
しかし、ブラックリストに掲載されている人の場合は、割賦の代金をきちんと支払ってくれるかどうか疑わしいと判断されてしまい、分割払いの審査に通りません。
3、ブラックリスト上の情報を消すことはできる?
上記のように、信用情報機関のブラックリストに掲載されるとさまざまなデメリットが生じます。
「何とかブラックリストから自分の情報を消す方法はないか」と考える方もいらっしゃるでしょうが、実際にはブラックリストからの削除を求めることは困難です。
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(1)正しい情報であれば削除はできない
信用情報機関のブラックリストに掲載されている情報は、個人情報ではあるものの、金融機関やカード会社などが与信判断を円滑に行うことに役立つ公益性の高い情報です。
そのため、その情報が真実である限りは、本人の都合で削除を求めることはできません。 -
(2)削除代行を装った悪徳業者に注意
ブラックリストに載ってしまった人に「報酬を支払えば、ブラックリストから情報を消すように掛け合う」などと言って、すり寄ってくる悪徳業者が実際に存在します。
ブラックリストの情報が真実であれば削除はできないのに、このようなことを言って近づいてくる業者は、詐欺の意図を持っている危険性があります。
ブラックリストに載ってしまったことによる懸念はわかりますが、こうした悪徳業者の誘いに乗ることなく、地道に信用を回復することが大切です。 -
(3)一定期間が経過すれば自動的に削除される
自分から積極的にブラックリストの情報を消そうとしなくても、一定期間が経過すれば、リスト上の情報は自動的に削除されます。
通常の債務不履行や任意整理などであれば、掲載期間は5年間です。
ただし、自己破産や個人再生など、官報に掲載される事案については、信用情報機関によっては掲載期間を10年に設定している例もあります。
上記の掲載期間中、再びブラックリストに載るような債務不履行を引き起こさず、地道に信用回復の努力を積み重ねていけば、将来与信を受けられるようになるでしょう。
4、ブラックリスト入りした場合に信用を回復する手段
ブラックリストへの掲載が終わった段階で、金融機関やカード会社などから再び与信を受けられるようになるためには、信用回復の努力が必要不可欠です。
具体的には、以下のことを積み重ねれば、徐々に債務の支払い能力に関する信用を回復できる可能性が高くなります。
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(1)債務の支払い実績を作る
一日も早く信用を回復するには、何よりも「再びブラックリストに載らない」ことが大切です。
新しく債務不履行の事実がブラックリストに掲載されてしまうと、そのデータが消えるまでにまた5年程度かかってしまい、いつまでたっても与信を受けることができません。
そのため、支払期限が到来した債務は確実に弁済し、支払い実績を積み重ねることが重要といえるでしょう。 -
(2)収入を増やす・支出を減らす
債務不履行の原因は、収支のバランスが悪い点にあることがほとんどです。
収支バランスを改善するには、収入を増やすか、支出を減らすかの二つの方法があります。
収入を増やすには、副業・アルバイトの掛け持ち・収入の高い企業への転職などの方法が考えられます。
支出を減らすには、家賃の安い物件への引っ越し・外食やコンビニ利用回数の削減・サブスクリプションの解約などの方法が考えられるでしょう。
収支の両方を適切に見直すことができれば、債務不履行のおそれをかなり減らせます。 -
(3)債務整理をして財務状態を健全化する
あちこちから借金をして多重債務に陥っている状態では、債務不履行が恒常的に発生してしまいます。
このような状況では、ブラックリストからの脱出は到底望めません。
多重債務の状態を脱却するためには、弁護士に相談して債務整理を行うことをおすすめいたします。
弁護士は、自己破産・民事再生・任意整理などの各債務整理手法から適切なものを選択し、依頼者の債務を圧縮するためのサポートをしてくれます。
債務整理によって債務の金額を大きく減らすことができれば、財務状態が健全化し、再び債務不履行を引き起こす可能性はかなり低くなります。
5、まとめ
債務不履行を引き起こしてしまい、信用情報機関のブラックリストに掲載された場合、掲載期間が終了するまでは、基本的にその事故情報を消すように求めることはできません。
もしブラックリストに掲載されてしまった場合、掲載期間が終了するまでの間、再び債務不履行を引き起こさないように注意して、信用回復の努力を積み重ねることが重要です。
そのためには、弁護士に相談して債務整理を行い、財務状態を健全化することが有効となります。
借金が返せずにお悩みの方、債務整理をご検討中の方は、お早めにベリーベスト法律事務所 京都オフィスへご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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