離婚調停中に夫や妻の不貞行為(不倫)が発覚した場合、慰謝料は請求できる?
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京都府が公表している令和5年度の人口動態統計によると、京都府の離婚件数は3563組でした。婚姻件数の減少と共に、離婚件数も減少傾向が続いています。
肉体関係を伴う「不倫行為」は、法律上は「不貞行為」と呼ばれます。
原則として、配偶者が不貞行為をした場合には、慰謝料を請求することができます。
しかし、離婚調停中に配偶者が不貞行為をした場合には、その時点で「すでに婚姻関係が破たんしている」と見なされて慰謝料を請求できない場合があるのです。
本コラムでは、離婚調停中に配偶者に対して不貞行為に関する慰謝料を請求できる可能性について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚調停中に不貞行為が発覚したら、慰謝料請求できる?
不貞行為とは、夫婦関係にある男女のどちらかが配偶者以外の異性と自由意志で肉体関係を持つことです。不貞行為は、貞操義務違反とされており、民法第770条により法定離婚事由として認められています。
では、離婚調停中に配偶者不倫の不貞行為が発覚したら、慰謝料請求はできるのでしょうか。
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(1)すでに離婚に合意している場合
離婚合意後は、婚姻関係が破たんしていると判断されます。そのため、離婚合意後に不貞行為に至ったとしても、慰謝料を請求することはできません。また、離婚合意後であれば、不貞行為をしたとしても有責配偶者になることもありません。
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(2)一方が婚姻関係の継続を望んでいる場合
夫婦関係の破たんとは、夫婦のどちらにも結婚生活を継続する意思がなく、実際にその関係を修復することが難しいと考えられる状態のことを指します。しかし、どちらか一方が婚姻関係の破たんを主張していても、もう一方が婚姻関係の修復を望んでいる場合は、まだ夫婦としてやり直せる可能性があると判断されます。そのため、一方が婚姻関係の継続を望む離婚調停中の場合は、婚姻関係の破たんが認められず、不貞行為による慰謝料を請求できることもあります。
婚姻関係の破たんを証明する責任については、不貞行為をした配偶者にあります。そのため、不貞行為した配偶者が婚姻関係の破たんを証明できない場合も、慰謝料の請求が認められます。 -
(3)別居期間が長期化している場合
夫婦の別居期間が長期化している場合、一般的には婚姻関係が破たんしていると考えられます。しかし仕事の都合によりやむを得ず別居していたり、頻繁に夫婦の時間を設けていたりするケースもあるでしょう。次のように正当な理由がある場合は、別居があったとしても婚姻関係の破たんが認められません。
- 受験のために、妻と子どもが夫と一時的に別居
- 仕事の都合による配偶者の単身赴任
- 病気による配偶者の長期入院、転地療養
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(4)離婚調停前から不貞行為の事実がある場合
慰謝料請求できるか否かのポイントは、いつから不貞行為の事実があるかという点です。離婚調停前、婚姻関係が破たんする前から不貞行為の事実がある場合は、慰謝料請求の原因になり得ます。場合によっては、不貞行為により婚姻関係を破たんさせたとして有責配偶者となることもあります。そのため、慰謝料請求できる可能性も高いでしょう。
2、慰謝料請求に有効となる不貞行為の証拠
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(1)有効となる証拠
慰謝料請求を行う場合、有効となる証拠を集める必要があります。具体的には、性行為を確認もしくは推認できる証拠です。「愛してる」と書かれたメールや、屋外でのデート写真のみでは十分な証拠とはなり得ません。具体的な証拠の例をあげてみましょう。
●メールの履歴
メールの内容から、性行為を確認ないし推認できる場合は証拠になり得ます。LINEやTwitterなどのSNSでも同様です。前述したように、メールで配偶者が異性と連絡を取っているだけでは、不貞行為を証明することはできません。しかし、裁判の場合、配偶者が不貞行為を認めれば有効な証拠となるため、メールは印刷または写真で保存しておきましょう。
●写真やビデオ
配偶者と異性がベッドの上で服を着ていない状況で写っている写真やビデオなどは、証拠として有効だといえます。ただし、配偶者が異性とホテルに出入りしている場面や異性と旅行中の様子のみでは、決定的な証拠になり得ません。
●音声データ
不貞行為が発覚した際に、夫婦間で話し合うことがあるでしょう。その会話をICレコーダーなどで録音しておけば、証拠になる可能性もあります。配偶者が自身の不貞行為を認める内容を話すかもしれません。裁判では、録音された音声の再生は行いませんが、音声データと音声を文章化した文書を提出すれば証拠として有効です。
●その他の証拠
他にも、不貞行為を証明する手紙や日記や、友人や関係者などの第三者の証言、不貞行為の相手と宿泊したホテルの領収書やクレジットカードの明細書なども証拠になり得ます。
これらの証拠もひとつだけでは不貞行為を裏付ける決定的な証拠とするには難しいかもしれません。しかし、複数集めておけば、後の調停や裁判において重要な証拠になる可能性もあります。 -
(2)証拠の集め方
配偶者の不貞行為の証拠を自分で集めるには、次のような方法があります。
●配偶者の携帯電話のデータを撮影する
配偶者の携帯電話に残っているメールやSNSの履歴画面を撮影しておきましょう。携帯電話に不貞行為の証拠となりうる写真が保存されていれば、あわせて撮影しておきましょう。
●配偶者に反省文・謝罪文を書かせる
不貞行為をした配偶者に、反省文や謝罪文を書かせることも証拠として有効です。
反省文や謝罪文を書いてもらう際は、下記の事項を記載してもらいましょう。- 不貞行為の事実
- 不貞行為の期間と回数
- 不貞行為の相手
- 不貞行為の相手が配偶者を既婚者と認識していたこと
- 署名
- 押印
●調査会社や探偵に依頼する
自分だけでメールや写真などの証拠を複数集めることは、現実的には大変な作業になります。なぜならば、不貞行為は配偶者に気づかれないように行っていることが多いからです。証拠を集める手段として、費用はかかりますが調査会社や探偵に依頼し、証拠の写真や音声データを集めてもよいでしょう。
お問い合わせください。
3、慰謝料請求を弁護士に依頼するメリット
慰謝料の請求をするには、婚姻関係が破たんしていない期間に不貞行為の事実があったことを客観的に証明する必要があります。そのため、離婚調停に詳しい弁護士を介入させることをおすすめします。
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(1)弁護士が代理人となって相手と交渉
離婚を考えている相手と直接話し合うことは、精神的負担が大きいでしょう。慰謝料請求を弁護士に依頼すれば、2人で直接話し合いをする必要はありません。弁護士があなたの代理人となって、相手方との交渉をすすめていきます。また、弁護士が法的な知識や適正な慰謝料や、必要であれば親権獲得などについてもアドバイスを行ってくれます。
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(2)証拠の立証から書類作成まで対応
離婚時の慰謝料の請求については、客観的な証拠を集めて立証し、書類を作成する必要があります。不慣れで大変な証拠の立証から書類作成をあなたの代わりに弁護士が行います。自分だけでは確実な証拠がないと思っていても、不貞行為が疑わしい証拠を組み合わせて、事実を認めさせる方法が可能な場合もあります。
4、まとめ
離婚調停中の不貞行為は、婚姻関係が破たんしていたと認められた場合、慰謝料請求ができません。しかし、婚姻関係が破たんする前から不貞行為の事実が認められれば、慰謝料を請求できる可能性が高いでしょう。
慰謝料請求には、不貞行為を裏付ける証拠が必要となります。証拠の立証から書類作成、相手との交渉など、慰謝料請求は負担の多い作業や交渉が多くあります。
離婚時の慰謝料請求についてお困りの際は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士にご相談ください。弁護士があなたに代わって慰謝料請求の書類作成、相手との交渉をすすめていきます。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています