離婚しても親権を諦めたくない! 親権争いの際に知っておきたいこと
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京都の平成29年離婚件数は4105件、2時間8分に1件の離婚が成立していることになります。子どもがいる家庭の場合は離婚届に親権の記載がないと受理されないので、離婚において親権争いは多く見られる問題です。妻と夫の話し合いの上で結論が出ない場合には離婚調停や弁護士も交えた離婚訴訟を経て親権を決める必要があります。
母親が親権を獲得しやすいイメージを持っている方もいるかもしれませんが、調停や裁判になった場合でも母親というだけで必ずしも有利になるわけではありません。子どもの安定した生活のためにどちらが親権を得るのがふさわしいか、あらゆる観点から総合的に判断されます。
親権を争う調停や裁判はどのような流れで進み、何が親権決定のポイントになるのか、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、親権ってどんな権利? 意外と知らない権利や義務も!
離婚をしていない夫婦であれば法律上、夫と妻の両者に未成年である子どもの親権が与えられています。親権は身上監護権と財産管理権というふたつの要素があり、これは子どもを育てていく上で必要な権限です。また権利でありながらその義務も負うことになります。
●身上監護権
子どもと一緒に生活をして、世話や教育を行う権利・義務です。
監護者として、子どもの居住を指定したり、しつけをしたり、法律行為を行う場合の代理・同意を行ったり、職業を営む際はその職業を許可する権利も有します。子どもの成長を見守り、親としてサポートをする責任があります。
●財産管理権
子どもの持つ財産の管理をする権利です。子ども名義での預貯金管理などだけではなく、商品購入などで契約をする際の代理・同意なども財産管理権に含まれます。
親権のなかに含まれている監護権は一般的には親権を持つ側に与えられますが、状況に応じて(監護権のない)親権者と監護権者が別々に設定されるケースもあります。その場合には実質的に引き取るのは監護権を持っている側になり、(監護権のない)親権のみを持っている側の親は法的な権利の行使や財産管理を担うことになります。
両者の争いがどうしても解決しない場合には、親権と監護権者を分離することで決着をつけることもあり得ます。しかし、子どもの福祉の観点から本来は親権者と監護権者を同じにした方が良く分離は望ましくないと考えられるため、慎重に判断されます。
一度決まった親権は簡単に変更できるものではありません。親権者の変更は子どもの精神的な影響が大きいと考えられているからです。ただし、裁判で現親権者による養育環境が子どもにとってよくない環境であると判断された場合、変更を認められる事例があります。
法律にも「子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子の親族の請求によって、親権者を他の一方に変更することができる」(民法819条6項)と定められています。
2、どんな流れで親権者が決まる?
離婚をした場合、夫と妻どちらかが親権を持つことになり、共同で親権を持つことはできません。親権がなくても法律上の親子関係までなくなることはありませんが、多くの場合は親権を持った親が子どもを引き取ることになるため、子どもと一緒に暮らしたいという気持ちから妻と夫が争いに発展することは珍しくありません。
当事者同士で話し合ってもまとまらない場合は、裁判所に申し出て親権者指定の離婚調停の手続きを行います。第三者である調停委員とともに合意に向けた話し合いを行います。調停委員はその調停に適した民間の方が担当します。
調停でも意見がまとまらなければ、離婚訴訟へ移りえます。裁判を起こすためには原則として、離婚調停の段階を経る必要があります。
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3、調停ってどう進む? どうやって判断されるの?
両者の話し合いで合意できないときには、調停を用いることが有力な選択肢になります。どのような流れで進み、親権決定の判断基準はどんなところにあるのか、知っておきましょう。
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(1)調停の主な流れ
一般的に、次のような流れで進みます。
- ①必要書類を用意し、家庭裁判所へ調停の申立てをする。
- ②裁判所が調停の期日を決定。
- ③一回目の調停が行われる。
- ④一回目で合意にならなければ、二回目以降の調停が行われる。
- ⑤話し合いがまとまれば、調停が終了。
調停ではどちらが子どもの親権者・監護者としてふさわしいかの判断の一助として、家庭裁判所の調査官が調査をします。家庭や学校を訪問して生活環境を調査したり、子ども自身の気持ちを理解するために子どもから話を聞いたりすることもあります。
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(2)親権者決定の判断のポイント
家庭裁判所の調査官が重視するのは次のような点です。
●子どもに愛情を持っているか
とても重要なポイントですが、子どもとどれだけ一緒に過ごしていたかで判断されがちです。
●これまでの養育状況
子どもとどのように過ごしてきたのかも重視され、関わりが多かった方がこれからも一緒に生活するのにふさわしいと判断される傾向にあります。
●健康状態や経済状況
子どもを育てていく上で支障が出るレベルで健康に問題がある場合は親権を獲得することは難しくなりえます。経済力に関しても判断のポイントにはなりますが、自分自身の収入が少なくとも、相手からの養育費で補いうるため、収入が相手方より大きく少ない場合であってもあきらめる必要はありません。
●今後の環境面
補助的な考慮になりますが、仕事で不在になる場合などに代わりに面倒を見てくれる人がいるかどうかなども考慮されます。また、引っ越しで子どもの学校が変わったり大きく環境が変化するかどうかなども考慮されます。
●子どもの年齢や状況
子どもがまだ小さい場合は母親が親権を持つことが一般的に多いと言われていますが、母親であることが絶対的な基準であるというわけではなく、仮に父親の方が子どもの養育に直接関わってきた時間がむしろ長い等のケースでは逆に父親が有利なケースもあります。なお、子どもが15歳以上であれば子ども自身の意思が尊重されます。
4、裁判まで進むとどうなるの?
離婚調停で不成立となった場合は、裁判になります。
離婚調停とは異なり、裁判官が法廷でそれぞれの主張を聞き、提出された証拠などをもとにどちらが親権者にふさわしいかを判決を下します。
離婚原因は親権の判断基準の中で大きな基準にはなりません。親権者を決定する上で考慮されるのは「子の福祉にかなうもの」とされ、以下のこと等が重要視されているようです。
●監護の継続性
子どもへの影響が少なく済むように、それまでと同じ環境である方が良いとされています。
●兄弟姉妹の不分離
兄弟の別離による生活環境の変化は一般的に良い影響とされないため、同じ親が兄弟の親権を持つ傾向が多いです。しかし子ども自身がそれぞれ別の親につくことを希望している場合や、子どもの年齢が高い場合には別々の親権となるケースもあります。
●主たる監護者
子どもの出生から現在に至るまでの間で、子どもの監護養育を主に担ってきた側が親権者に指定されるケースが多いです。
●子どもの意思
意思を伝えることができる年齢である10歳程度の年齢からは子どもの意見も考慮されます。また15歳以上の子どもの場合は、意思を確認することが義務付けられおり、基本的には本人の意思が尊重されます。
以上の判断基準をもとに、自分の方が親権者としてふさわしいと判断してもらうための客観的な証拠を準備する必要があります。親権者であるべき理由を持っていても、法的な知識を持って裁判で証拠を提出しなければ裁判官に理解してもらうことができません。専門家である弁護士に相談して進めた方が安心でしょう。
5、親権が決まった後は何をすべき?
離婚調停や離婚訴訟で離婚と親権が決まった後は、確定した日から10日以内に手続きを行う必要があります。手続きは必要な書類を揃えて住民票や本籍のある市区町村の役所に提出しますが、10日を過ぎると過料を支払ことになる場合もあります。
必要な書類は下記のとおりです。
- 話し合いで決まった場合: 離婚届のみ
- 調停で決まった場合: 離婚届、戸籍謄本、調停調書の謄本
- 訴訟で決まった場合: 離婚届、戸籍謄本、判決の謄本、判決確定証明書
6、まとめ
親権をめぐる争いは、子どもの福祉という観点からどちらが適しているかを判断されるものです。離婚の原因をつくってしまった側だから親権をとれない、というわけではありません。親権は夫婦それぞれにとっても今後の人生を考える上で非常に大きな問題です。
離婚調停や離婚訴訟になると一人で準備をしたり書類を揃えることは大変だと思います。離婚や親権についてお悩みであればベリーベスト法律事務所 京都オフィスまでご相談ください。弁護士が親身になってお話をうかがい、サポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています