成田離婚は迷信ではない? 新婚旅行が原因で離婚したくなる4つの理由
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新婚旅行から帰ってきたタイミングで離婚することを、「成田離婚」や「スピード離婚」などと言います。
結婚したばかりなのになぜ離婚したくなるのでしょうか。また、成田離婚・スピード離婚をするためにはどのように手続きを進めればいいのでしょうか。
本コラムでは、新婚旅行で夫婦が離婚に至ってしまう理由と、離婚する際に知っておきたい離婚の手順や方法について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が分かりやすく解説します。
1、成田離婚とは?
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(1)成田離婚とスピード離婚
「成田離婚」とは、新婚旅行から帰ってきた夫婦が、即時に離婚することを指す言葉です。
このような言葉は、夫婦で新婚旅行に行く場合には、成田空港発着の国際便を利用することが多かったことに由来しています。すなわち、新婚旅行を海外で過ごしたところ、結婚相手の嫌なところが目について、成田空港に帰ってきた途端に離婚するという意味です。
成田離婚という言葉が使用され始めたのは、1990年代後半頃で、当時の流行語となりました。1997年には「成田離婚」というタイトルのテレビドラマも放映されています。
しかし、最近は、結婚した夫婦がすぐに離婚する場合には、「成田離婚」という言葉より「スピード離婚」という言葉の方が多く用いられている印象です。
そのような理由として、新婚旅行のあり方が多様になってきたことや、羽田空港の国際線の発着が増加し、成田空港で離婚するというシチュエーションが想起しにくいということなどがあげられるでしょう。 -
(2)スピード離婚の割合
スピード離婚する夫婦の割合はどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省が公表している2022年(令和4年)の「人口動態統計(確定数)の概況」によれば、同年に離婚したカップルの総数は、17万9099組です。
そのうち、1年未満に離婚している夫婦は8,971組です。割合にすると、約5%の夫婦が結婚して1年足らずに離婚していることがわかります。
これに対して、1〜2年で離婚した夫婦が11,278組、2〜3年で離婚した夫婦が11,965組となっており、全部合わせると3年未満で離婚した夫婦が約17.9%に及びます。
このような結果から、結婚して比較的短い期間で、結婚相手に愛想を尽かして離婚してしまうカップルは相当多いことは明らかと言えるでしょう。
2、スピード離婚したくなる4つの理由
スピード離婚する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。スピード離婚に至る原因には以下のようなものがあります。
② DVやモラハラ
③ 性の不一致
④ 金銭感覚の不一致
など
① 性格の不一致
新婚旅行では、カップルが1日中一緒に過ごすことになるため、相手の性格がよく分かります。今まで知らなかった結婚相手の生活習慣や、本当の性格などが見えてくることがあります。このように、お互いの考え方や価値観の違いが鮮明になってくると、この先、夫婦関係を続けていけるのか不安に感じる方もいます。
このような性格の不一致により、すれ違いや衝突が繰り返されると、新婚であったとしてもスピード離婚したくなる場合があります。
② DVやモラハラ
結婚相手が、暴力(DV=ドメスティックバイオレンス)やモラハラ(精神的な虐待)をする性格の場合にも、スピード離婚に至る可能性があります。
結婚まではそのような素振りはみじんも感じなかったものの、結婚した途端に本性があらわになり、パートナーを攻撃してくる相手もいます。
結婚直後に相手のDVやモラハラ気質が判明すると、スピード離婚に至る可能性があります。
③ 性の不一致
性の不一致も、スピード離婚の原因になる可能性があります。
結婚初期の性交渉によって、自分が望むような性行為ができない場合や、性に関する価値観が一致しないなど、性の相性が良くないことに気づくと離婚を考える方もいます。
性の不一致は、性的な満足が得られないという個人の問題にとどまらず、将来的に夫婦の間に子どもをもうけるか否かという問題にもつながるため、夫婦関係に大きな影響を与える可能性があります。
④ 金銭感覚の不一致
新婚旅行で数日一緒に過ごすと買い物や食事をするときなど、相手のお金の使い方や考え方が分かってきます。
このとき、相手があまりに浪費家だった場合や、逆に極端にケチであった場合など、金銭感覚が一致しないと、将来に対する不安を抱くようになる方も少なくありません。また、相手があまりにお金に無頓着な場合だと、多額の借金があることが判明するようなケースもあります。
このように夫婦の間に金銭感覚に不一致があると、スピード離婚になってしまうおそれがあります。
3、離婚する場合の手順・方法について
離婚をする場合、どのような手順・方法で離婚すればよいのでしょうか。
ここでは、離婚をする場合の流れについて解説していきます。
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(1)話し合いによる協議離婚
まずは、夫婦で離婚について話し合う協議離婚を目指しましょう。
日本では、夫婦の双方が離婚することに合意して、市区町村役場に離婚届を提出すれば、離婚が成立します。協議離婚の場合には、特定の離婚理由は不要ですので、「相手が気に入らない」「夫婦関係を続けていくのが漠然と不安」などといった理由であっても離婚することができます。
また、協議離婚の際には、他の離婚条件についても話し合いで取り決めておくようにしましょう。スピード離婚の場合には、子どもや夫婦共有財産もないカップルが多いでしょうが、トラブルを未然に防止するためにも、スピード離婚の場合であっても「お互い財産分与は請求しない」等取り決めをしっかりしておくことをおすすめします。 -
(2)合意ができなければ離婚調停
協議離婚ができない場合には、家庭裁判所に調停離婚の申し立てをする必要があります。
調停離婚を申し立てると、裁判所の調停委員会が夫婦の間に入り、夫と妻それぞれから主張や事情を聴取して手続きを進めていくことになります。
ただ、新婚旅行直後や結婚式直前・直後などの場合に調停離婚を申し立てると、一時的に感情的になっていると受け取られ、「離婚を思いとどまってはどうか?」と説得されてしまう可能性もあります。
そのため、あらかじめ弁護士に相談して、離婚をしたい理由を説得的に伝えて強い意志で離婚を希望していることを伝えることが重要です。 -
(3)調停が不成立になったら離婚裁判
離婚調停によっても相手が離婚を拒否する場合には、離婚訴訟を提起するしかありません。
相手が離婚を拒絶しているケースで、離婚訴訟によって離婚するためには「法定離婚事由」が必要です。法定離婚事由とは、民法が定める離婚原因のことですが、これがないと、判決によっても離婚することができません。
たとえば相手が不倫している場合、相手が悪意を持って自分を見捨てた場合、ひどいDVがあるケースなど、何らかの重大な事情が必要です。
単なる性格の不一致や、相手が頼りないこと、英語が話せないこと、自分勝手な行動をとったことなどでは、裁判による離婚は認められません。
4、スピード離婚する場合に慰謝料請求できるのか?
スピード離婚する場合、相手に対して慰謝料請求できるのでしょうか。
ここでは、スピード離婚の場合に相手に慰謝料を請求するために必要な条件を解説していきます。
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(1)相手に有責性があることが必要
離婚で慰謝料を請求するためには、請求する相手に「有責性」が必要です。有責性とは、離婚原因を作った責任が相手にあるということです。
たとえば、不倫やDV等の不払いなどの行為があると有責性が認められます。
したがって、新婚旅行で相手が不倫している事実が明らかになった場合や、暴力や虐待を受けた場合などには、慰謝料を請求することができる可能性があります。 -
(2)性格の不一致や性の不一致で慰謝料を受け取るのは厳しい
性格の不一致や性の不一致などを原因として離婚する場合には、夫婦の双方に有責性がないと考えられるので、それのみでは慰謝料は発生しません。
逆に、正当な離婚原因がないのに相手に離婚を承諾してもらうためには、解決金や慰謝料などの名目で金銭を請求されてしまう可能性もあります。
5、スピード離婚したくなった時の相談先
スピード離婚をしたい場合、まずは以下のように専門家に相談することがおすすめです。
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(1)離婚するかどうか迷っている場合|離婚カウンセラー
スピード離婚をするかどうか迷っているという方は、「離婚カウンセラー」「夫婦カウンセラー」という職業の人に相談してみることをおすすめします。
離婚カウンセラーや夫婦カウンセラーは、離婚問題や夫婦関係の構築に関する専門家で、カウンセリングにより、本当に選択すべき方向を定めるお手伝いをしてくれます。自分一人で相談してもかまいませんし、配偶者と一緒に相談するスタイルをとっているカウンセラーもいます。 -
(2)離婚を決意した、相手の合意が得られない場合|弁護士
スピード離婚をする強い意志のある方は、弁護士に対応を相談するようにしましょう。
特に相手が離婚に応じそうにない場合は弁護士に相談することをおすすめします。
スピード離婚をしたい場合であっても相手が拒否する場合には、手続きが複雑になる可能性があります。調停でも解決できない場合には訴訟を提起する必要があり、法定離婚事由に該当していることをこちらが主張・立証する必要があるからです。
なるべく不利にならないようにスムーズに離婚を進めるためには、弁護士によるサポートが重要です。
6、まとめ
本コラムでは、成田離婚の概要や新婚旅行直後を含むスピード離婚の進め方と注意点を解説しました。
有利に離婚を進めるためには、まずは弁護士などの専門家の意見を参考にすると良いでしょう。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、離婚問題について積極的に取り組んでおりますので、お悩みの際にはぜひとも一度、ご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています