配偶者の親が毒親だった! 離婚の原因として認められる?
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平成29年度の司法統計データによると、離婚原因の上位に「配偶者の親との折り合いが悪い」という理由が挙がっていることがわかります。
京都府の離婚率は全国平均よりも低いと発表されていますが、なかには配偶者の親が毒親だからという理由で離婚を考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は京都オフィスの弁護士が、配偶者の親との縁を切ることができるのか、配偶者の親が毒親という理由で離婚できるかを解説していきます。
1、毒親の影響
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(1)毒親とは
そもそも「毒親」とは何なのでしょうか。一般的には、子どもに悪影響を与えたり、子ども達が厄介と感じたりするような親のことをいいます。1989年にスーザン・フォワードが著書の中で「毒親」という言葉を使ったことをきっかけに、徐々に「毒親」という概念が世間に浸透していきました。
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(2)毒親が子どもに与える悪影響
毒親の子どもへの影響は多岐に渡ります。子どもがのびのびと成長できなかったり、人間関係が希薄になってしまったりするケースもあります。なかには、大人になっても毒親の理想像を追いかけてしまい、自己肯定感が低く、他人の顔色をうかがうような性格になってしまうこともあります。
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(3)配偶者の親は毒親なのか
配偶者の親が毒親の場合、配偶者との離婚を考えることもあると思います。しかし、離婚をする前にしっかりと考えておくべきことがあります。それは、そもそも配偶者の親が毒親に該当するのかどうかです。一般的に、毒親の代表的な特徴とされるのは以下のような点です。
- 過干渉
- 過保護
- 過度な期待
- 暴力
- 暴言
- 間違いや失敗が許されない
- 精神が不安定
- 他人との比較
- 否定的
- 条件付の愛情
上記にすべて当てはまらなくても、複数個に思い当たる場合は毒親である傾向が高いといえます。
なかには、配偶者の親ではなく、配偶者自身があなたにとって「毒」となっているケースがあります。前述のように毒親の代表的な特徴が配偶者にもみられたら要注意です。配偶者があなたにとって「毒」である場合、あなたに悪影響を与える可能性があります。配偶者の親が毒親なのか、配偶者自身が毒なのか、しっかりと見極めましょう。
2、毒親との縁を切る方法はある?
では、配偶者が毒親と縁を切ることはできるのでしょうか。法的な観点から解説しましょう。
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(1)戸籍上の親子関係は切れない
結論的には、戸籍上の親子関係を切ることはできません。6歳未満の場合は、特別養子縁組の手続きにより実親との親子関係を消滅させることができます。しかし6歳以上の場合は、仮に分籍や養子縁組をしたとしても戸籍上の親子関係を切ることはできないのです。
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(2)毒親からの干渉を避けるには
前述の通り、毒親であっても戸籍上では親子の縁を切ることは難しいといえます。だからといってすぐに離婚とならないように、まずは毒親と距離を置く方法を考えてみましょう。
●内容証明郵便などで決別の意思を残しておく
毒親に対し、内容証明などで決別の意思表明をすることは可能です。内容証明郵便を利用すれば、送付した文章は証拠として残ります。後に毒親から何か被害を受けた場合には、証拠として有効となるかもしれません。
●分籍手続きを行う
親元を離れて暮らしている場合は、分籍手続を行うことができます。分籍手続を行えば、毒親の戸籍を別にして住民票に閲覧制限をかけられます。
ただし、分籍手続を行ったとしても毒親が子どもの住所を調べることを阻止できるわけではありません。しかし内容証明郵便と同様に、毒親との決別を表す手段にはなるでしょう。
子どもが毒親との関係性を断ち切ろうと色々な手立てを行ったとしても、毒親は変わらず過干渉であったり、悪影響を及したりする可能性があります。
内容証明郵便の送付や住民票の閲覧制限を行っても、戸籍上の親子関係は切れていませんし、親は子どもの家の住所を調べられます。親によっては決別宣言ともとれる行為に逆上し、危害を加えようとしてくる可能性もあります。毒親からの過度な干渉や依存により、あなたや家族に危害が加わる場合はすぐに警察に連絡してください。
お問い合わせください。
3、配偶者の親が毒親だったら離婚の理由になる?
配偶者と毒親の縁を断ち切れず、やむなく離婚を決意する方もいらっしゃるでしょう。その場合、毒親は離婚の原因として法的に認められるのか、また慰謝料は請求できるのでしょうか。
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(1)配偶者の親が毒親でも、離婚の理由にはならない
配偶者の親が毒親であることだけを理由に、離婚や慰謝料請求はできません。なぜならば、夫婦の離婚が認められているのは、お互いの同意が得られている場合と法的離婚事由に該当する場合のみだからです。
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(2)毒親の行為が法的離婚事由に関わるケース
夫婦のうち一方が離婚を望んでいても、もう一方が夫婦関係の修復を望んでいる場合は離婚が認められません。夫婦のお互いの合意が得られない場合、離婚するには法律で規定されている離婚原因に該当する必要があります。法定離婚事由とは、以下のような内容です。
●不貞行為
配偶者以外の異性と自由意思で肉体関係を持つことです。ただし、肉体関係を持たない男女の関係は不貞行為には該当しません。
●悪意の遺棄
悪意の遺棄とは、配偶者が「同居の義務」「協力義務」「扶助の義務」を果たさないことです。例えば、生活費を渡さなかったり、理由もなく別居したりする場合が該当します。
●3年以上の生死不明
配偶者が3年以上の間、生死不明である場合も法定離婚事由に該当します。しかし、生死不明である客観的な証拠が必要です。
●回復しがたい強度の精神病
配偶者が回復する見込みのない強度の精神病に罹患した場合も法定離婚事由となります。注意点としては、離婚するまでに配偶者を献身的に看護してきた事実が必要となります。
●その他婚姻を継続し難い重大な事由
不貞行為や悪意の遺棄などの理由以外であっても、婚姻生活を継続できないような重大な事由であると認められれば離婚が成立します。例えば、家庭内暴力や過度なモラハラなどです。
もし、配偶者の毒親の行為がこれらの法定離婚事由に影響を与えたと客観的に認められれば、離婚が成立する可能性は高いでしょう。
そのためには、毒親から受けた被害ややり取りの証拠を残しておくことが重要です。対策が分からない方は、一度弁護士に相談することをおすすめします。
4、弁護士に依頼するメリット
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(1)毒親への対処法やアドバイスを受けられる
離婚を避けるためにも、まずは毒親と関わらないことが大切です。
しかし、毒親の依存や過干渉は簡単には変わらないでしょう。拒否しようとすると、さらに悪影響を及ぼす可能性もあります。弁護士に依頼すれば、毒親との関係を断ち切る方法や、夫婦の関係を改善するための適切なアドバイスを受けることができます。
また、配偶者の毒親から受ける被害が法定離婚事由にあたるのかどうか、法的な観点から判断してもらうことも可能です。 -
(2)交渉の代理人を依頼できる
毒親との話し合いが難航し、調停などにすすんだ際には、弁護士に代理人を依頼することもできます。配偶者が毒親と交渉するのは難しく、大きな負担となるでしょう。第三者である弁護士を交渉の代理人とすることで、毒親の理解も得られやすく、大幅に負担を軽減させることにもなります。
もし離婚となってしまっても、引き続き対応を依頼できるのでスムーズでしょう。 -
(3)労力を軽減できる
毒親との関係を断つための書類手続きや、法定離婚事由の証明には、法律の知識が必要になります。弁護士に依頼すれば、こうした書類作成や手続きなどをすべて任せることができるので、労力を削減できるでしょう。日常生活や仕事への支障も最小限で済みます。
5、まとめ
配偶者の親が毒親であっても、そのことを理由に離婚をしたり、慰謝料を請求したりすることは難しいといえます。できれば毒親との関係を改善し、離婚を回避する手段を考えましょう。
配偶者の毒親の対処に困り、離婚を考えているという方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士にご相談下さい。個々の状況に合わせて適切にサポートしてまいります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています