夫婦関係調整調停とは? 話し合える内容や流れ・費用・必要書類を解説

2020年12月03日
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夫婦関係調整調停とは? 話し合える内容や流れ・費用・必要書類を解説

人口動態統計によると、令和元年中の京都府における離婚件数は4022組でした。
人口1000人に対する離婚率は1.59ポイントで、2.28ポイントを記録した平成14年をピークに減少傾向が続いています。
とはいえ、年間に4000組を超える夫婦が離婚に至っているという現状をみれば、離婚は人ごとではありません。
実際にこれだけの夫婦が離婚しているのだから「離婚すべきだろうか」と悩んでいる夫婦の数はさらに多数にのぼるはずです。

離婚をしたい、離婚すべきか迷っているという夫婦が冷静に話し合いを進めるための制度として「夫婦関係調整調停」があります。
このコラムでは、夫婦関係調整調停とはどのような手続きなのか、調停の流れや事前の準備などについて、京都オフィスの弁護士が解説します。


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1、夫婦関係調整調停とは|制度の概要

夫婦関係調整調停という名称について、多くの方が「聞いたことがない」と思われるかもしれません。まずは「夫婦関係調整調停」とはどのような制度なのかを確認します。

  1. (1)夫婦関係調整調停とは

    夫婦生活にはさまざまなトラブルや悩みが訪れます。その際には夫婦関係を修復したいと考えたり、離婚を検討することもあるでしょう。
    しかし、トラブルや悩みに見舞われている夫婦同士が話し合いをして、解決にいたるケースは多くはないかもしれません。
    そこで、第三者を交えて夫婦関係についての話し合いを進めようというのが「夫婦関係調整調停」です

    家庭裁判所が扱う夫婦関係調整事件には「円満」と「離婚」があります。
    夫婦の円満を目指す場合は「円満調停」の申し立てを、離婚を目指す場合は「離婚調停」を申し立てることになります
    多くの方が耳にしたことがある「離婚調停」とは、夫婦関係調整調停のうちの「離婚」について話し合う場合に申し立てるものです。
    つまり、夫婦関係調整調停とは、一般的によく知られている離婚調停を含めた話し合いの正式名称だと考えればよいでしょう。

  2. (2)調停で話し合える内容

    夫婦関係調整調停では「円満」または「離婚」に向けてさまざまな話し合いを交わすことが可能です。

    円満調停では、悪化してしまった夫婦関係の修復を目指して次のような事項を話し合うことになるでしょう。

    • なぜ夫婦関係が悪化してしまったのか
    • 相手にどのような改善を求めるのか
    • 今後、夫婦関係を継続するために必要な条件


    円満調停で夫婦関係の修復に向けた解決が見いだせなかった場合は、離婚調停に移行することも可能です。
    離婚調停では、一般的に次のような項目について話し合います。

    • 離婚する・しないの意思
    • 子どもの親権者はどちらなのか
    • 離れてしまう子どもとの面会交流の方法や頻度
    • 夫婦の共有財産をどのように分与するのか(財産分与)
    • 慰謝料・養育費の金額と支払期間、支払方法
    • 年金分割の割合
  3. (3)調停の結果には強制力がある

    「調停」は裁判官、または家事調停員および民間の有識者から選ばれた家事調停委員2名によって手続きが進められますが、その本質は「話し合い」です。
    訴訟のように裁判官が事実認定し判決を下して当事者に命令するわけではありません。

    調停が合意に至った場合は、合意内容が記載された「調停調書」が作成されます。
    調停において合意した結果には強制力があり、合意事項を履行しなかった場合は家庭裁判所に履行の勧告や地方裁判所に強制執行を申し立てたりすることが可能です。

2、調停の流れ・費用・必要書類

夫婦関係調整調停はどのような流れで手続きが進み、どのくらいの費用がかかるのでしょう?
申し立ての手間を考えれば、どのような書類や資料が必要になるのかも気になるところです。
夫婦関係調整調停の流れ・費用・必要書類をみていきましょう。

  1. (1)夫婦関係調整調停の流れ

    夫婦関係調整調停は、以下の流れで進みます。

    • 申し立て
    • 期日の連絡
    • 調停開始
    • 2回目以降の調停
    • 調停成立・不成立


    まず、一方が住所地の家庭裁判所に「夫婦関係調整調停申立書」を提出します。
    申し立てが受理されると、およそ2週間前後の期日で調停日が通知されるので、期日どおりに裁判所へ出頭しましょう。事前に裁判所へ出頭できない日を伝えておくと、ご自身が出頭しやすい日が調停日となりやすいです。
    指定される期日は裁判所が開庁している平日・日中で、仕事の都合などでの変更は原則として認められないので、予定を調整しておく必要があります。
    調停の期日がきたら、家庭裁判所に出頭して調停の開始です。
    通常は調停委員がそれぞれの当事者から交互に話を聞いていくかたちが取られ、出頭する時間も異なり、待機する待合室も分けられます。当事者が鉢合わせとならないような工夫がなされています
    夫婦関係調整調停の多くは、1回目の期日だけでは終了しません。
    2回目以降の期日は1回目の終了時に伝えられるので、スケジュールが確認できるようにしておきましょう。
    数回の調停を経て双方が合意すれば調停成立です。
    もし、数回の調停を経ても合意に至らない場合は不成立となり、意向によって離婚に向けた訴訟へと移ることもできます。

  2. (2)調停にかかる費用

    夫婦関係調整調停の申し立てに必要な費用は次のとおりです。

    • 申し立て費用……1200円
    • 郵送用の切手代……1000円前後


    申し立て費用は収入印紙で納入します。
    切手代は切手を購入して申し立ての際に現物を手渡すことになるので、指定された額面・枚数を用意しましょう。
    裁判所によって指定される切手代が異なるので、裁判所のホームページで確認するか、裁判所に問い合わせたほうが賢明です。
    なお、京都家庭裁判所・各支部に申し立てる際の切手代は次のとおり指定されています。

    • 140円切手×相手方数(多くは1人)
    • 84円切手×8枚
    • 10円切手×10枚
    • 5円切手×10枚
    • 2円切手×10枚
    • 1円切手×10枚
    • =合計992円分
  3. (3)裁判所に提出する書類

    夫婦関係調整調停の申し立てに際しては、申立書に加えていくつかの資料を提出する必要があります。

    申立書は、裁判所用・相手方用・申立人用の控えの合計3通が必要ですが、3枚複写式のものがあるので裁判所の窓口で入手するとよいでしょう。

    円満調停では夫婦の戸籍謄本が必要です。
    離婚調停では、夫婦の戸籍謄本のほか、次のような書類・資料が必要です。

    • 事情説明書
    • 未成年の子どもについての事情説明書
    • 連絡先などの届出書
    • 進行に関する照会回答書
    • 年金分割のための情報通知書
    • 当事者の年収を証明するもの(源泉徴収票や課税証明書等)


    このほか、調停で話し合いたい内容によっては追加提出を求められることがあるので、必要の都度、書類や資料を提出することになります。

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3、夫婦関係調整調停の申し立ての前に考えておくべきこと

夫婦関係調整調停を利用すれば、当事者による話し合いだけでは結論が出ない夫婦間のトラブルやいさかいが解決できる可能性があります。
ただし、調停によってすべてのトラブルが解決できるわけではありません。
不測の事態に備えるために、夫婦関係調整調停の申し立てに先だって考えておくべきことをみていきましょう。

  1. (1)話し合いがまとまらない場合を想定しておく

    夫婦関係調整調停は、家庭裁判所が関与するとはいえ「話し合い」を主体とする手続きです。
    双方が一切主張を譲らなければ、いくら家庭裁判所が関与したところで解決は期待できないでしょう。
    申し立ての前に、調停が不成立となった場合、次にどのような手段を講じるのかをあらかじめ決めておく必要があります。

    離婚調停が不成立になったのであれば、離婚訴訟に移行するのか、あるいは離婚をあきらめるのかを選択することになるでしょう。
    円満調停が不成立になった場合は、離婚調停への移行が可能ですが、そのままの生活を続けていきながら関係修復を目指すのも選択肢のひとつです。
    いずれの場合でも、時間をおいて再び調停を申し立てるという方法もあるでしょう。
    話し合いがまとまらない場合を想定しておけば、いざ調停不成立になったときでもスムーズな対応が可能になります。

  2. (2)合意事項を相手が守らない場合も想定しておく

    夫婦関係調整調停の場で決まった事項には法的な強制力があります。
    離婚調停で合意済みの慰謝料や養育費などを相手が支払わなければ、財産(例えば、預貯金)や給与の差し押さえを検討することになるでしょう。
    このように想定すれば、離婚調停の場合は合意事項を相手が守らなかったとしても対処法は限られてくるはずです。
    一方、円満調停では、相手が合意事項を守らなかったとしても強制的な手続きによる解決法はありません
    たとえば、夫の飲酒が原因で夫婦関係が悪化し、調停で夫が「飲酒をやめる」と合意したにもかかわらず再び飲酒を繰り返すようになったとしても、夫が不利益を被ることはありません。
    裁判所から履行勧告を発してもらうという対処法もありますが、問題解消が期待できない場合は離婚も視野に入れることにもなるでしょう。

4、夫婦関係調整調停の申し立ては弁護士に相談を

円満・離婚の区別にかかわらず、夫婦関係調整調停の申し立ては弁護士への相談をおすすめします。

夫婦関係を改善したい、問題解消の見込みがないので離婚したいなどの悩みについて、法律に照らしながら最善の解決策を検討し、アドバイスやサポートを提供できます。
代理人として調停を進めることも可能なので、指定された期日に仕事を休むことができない方でも調停を進めることが可能です。
夫婦関係調整調停の申し立てが必要なのか、ほかの解決法がないのかの検討も可能なので、まずは弁護士に現状を伝えてアドバイスを求めるのが賢明でしょう。

5、まとめ

夫婦関係が悪化してしまい、思い切って離婚をすべきなのか、問題点を解消して夫婦関係を改善すべきなのかに迷っているなら、円満解決を目指して夫婦関係調整調停を申し立てるというのもひとつの選択肢となります。
離婚を決心したものの、夫婦間だけでは慰謝料や養育費などの話し合いが進まない場合でも、離婚を目指した夫婦関係調整調停で解決できるケースが多数でしょう。

夫婦関係調整調停の申し立てを検討しているなら、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスにご相談ください。
円満・離婚のいずれを目指している場合でも、夫婦間トラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が最善策を提案し、解決まで全力でサポートします。
夫婦関係調整調停に関する手続きや書類作成・資料収集などのサポートも可能なので、まずはお気軽にベリーベスト法律事務所 京都オフィスまでご一報ください。

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