どこからが結婚詐欺? 渡してしまったお金を取り返す方法
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近年では、婚活サイトやマッチングアプリなどで男女が出会うケースも増えています。インターネットを介した出会いには気軽に出会えるというメリットもありますが、結婚する意思がないにもかかわらず結婚をほのめかして金品などを要求する結婚詐欺などの犯罪の被害にあうリスクも存在します。
被害にあわないようにするためには、怪しい相手を判断できるように、結婚詐欺の特徴をあらかじめ理解しておくことが大切です。また、もし詐欺にあったことが後から発覚した場合には、すみやかに対応をとることが肝心です。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・結婚詐欺の特徴
・だまされて渡してしまったお金を取り戻す方法
・結婚詐欺を弁護士に相談するメリット
「交際相手が詐欺師かもしれない」などの疑いを抱いている方に向けて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、どこからが詐欺? 結婚詐欺の特徴とは
まず、結婚詐欺の概要と、その特徴について解説します。
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(1)結婚詐欺とは
結婚詐欺とは、結婚をする意思がないにもかかわらず、結婚をほのめかして相手に近づき、本当に結婚をすることができると信じた相手から、金品をだまし取る行為のことをいいます。
結婚詐欺が行われるのは、見ず知らずの相手であることが一般的でしょう。もともと知り合いであったり友人からの紹介であったりする相手なら、相手がどんな人なのか分かっており、素性も知れていることが多いからです。そのため、相手が、だます意図をもって近づいてきた詐欺師である可能性は低いといえるでしょう。
しかし、近年では、婚活サイトやマッチングアプリなど、面識のない男女が出会う場が増えてきました。
インターネットを介して出会った見ず知らずの相手の場合には、相手が、どんな意図をもっている人なのかは一見して分からないという点に注意しましょう。 -
(2)結婚詐欺の特徴
結婚詐欺の手口には、以下のような特徴があります。
① 高スペックを装う
婚活サイトやマッチングアプリなどでは、相手の学歴や職業、収入などの「スペック」が表示されることが一般的です。
結婚詐欺師は、一流大学を卒業し、とくに年収数千万円の会社社長、医師、弁護士、看護師、パイロット、客室乗務員、美容師、モデルなどの高いステータスを設定することによって、異性を惹きつけようとします。
結婚を焦っている人ほど、好条件の異性に飛びついてしまい、結婚詐欺の被害にあいやすくなります。
相手が好条件であるときには、本当にそのような職業に就いているのか等について、それとなく確認してみましょう。
② 結婚の話をするのが早い
結婚詐欺師は「できるかぎり時間をかけることなく、被害者からお金を引き出したい」と考えるもののようです。
そのため、時間をかけて交際を重ねるのではなく、出会ってから早い段階で結婚の話を出してくる傾向にあります。
とくに結婚を焦っている方こそ詐欺の対象にされやすく、すぐ結婚の話が出てくることに舞い上がってしまいがちなため、相手がすぐに結婚の話を持ち出してきたら、相手が詐欺師である可能性についても疑っておいたほうがよいかもしれません。
③ 収入や資産を聞いてくる
結婚詐欺師は、相手からどのくらいのお金を引き出すことができるのかについて関心を抱いています。
そのため、会話の端々に、相手の資産状況を聞き出すような質問を行うようです。
そして、相手が一定の資産を有していたり、収入があることがわかったりした場合には、お金を引き出すために結婚を前提とした交際を申し込む……という手口が一般的のようです。
したがって、相手が自分の収入や資産について何度も聞いてくる場合には、注意して、だまされているかもしれないと警戒しましょう。
④ 交際後、金銭的な理由から結婚が困難だと告げてくる
結婚詐欺師は、結婚を前提とした交際を申し込んだ後、以下のようなことを打ち明けてくることがあります。- 「親が病気になってしまい多額の医療費がかかる」
- 「新規事業を進めるにあたり、まとまったお金が必要だ」
- 「ふたりの将来のためにお金を貯めたい」
心優しい人ほど、結婚を前提に交際している相手にこのような問題があった場合には、「なんとかして協力してあげたい」「助けてあげなければいけない」という気持ちになってしまうものでしょう。
また、「断ってしまうと相手から嫌われてしまうかもしれない」というおそれから、ついつい応じてしまう方もおられます。
しかし、交際を申し込まれた直後に金銭的な理由から結婚が困難だと告げられてしまったら、うのみにはせず、相手がうそをついていないかどうか冷静になって検討することも大切だといえます。
⑤ 客観的な証拠を残さない
結婚詐欺とは後述するような刑法上の詐欺罪に該当する行為であるため、多くの結婚詐欺師は、後々に捕まることのないように客観的な証拠を残さないように行動します。
もし一緒に写真を撮ろうとしても拒否されたり、友人や親にあわせてくれなかったりする場合には、証拠を残さないための行動である可能性があります。
また、お金を要求するときに銀行振り込みではなく手渡しで要求することも、証拠を残さないために結婚詐欺師がとる対応のひとつです。
手渡しで多額の現金を支払うことを求められた場合には、とくに注意しましょう。 -
(3)結婚詐欺の事例
結婚詐欺の実際の事例としては、以下のようなものがあります。
① 裁判官を騙った結婚詐欺
婚活パーティーで知り合った女性に対して、裁判所の職員であるにもかかわらず裁判官であると偽って近づき、結婚を前提とした交際を持ちかけて、現金20万円をだまし取ったという事例がありました(名古屋地方裁判所令和2年8月12日判決)。
被告人は、実在する裁判官の名刺を相手に渡すなどして、被害者に自分のことを裁判官だと信じさせていました。
なお、被告人には、懲役2年執行猶予3年の判決が言い渡されています。
② 航空会社の従業員を騙った結婚詐欺
婚活パーティーで知り合った女性に対して、「マンションの購入をしなければ交際継続が難しくなる」などと言葉巧みにだまして、被害女性8人から合計3500万円をだまし取ったという事例がありました(仙台地方裁判所平成30年1月24日判決)。
この事例では、被害者の一部に対して返金がされていますが、被害額の大部分については、返金がなされていないことから、執行猶予のつかない実刑判決となっています(懲役7年)。
2、結婚詐欺は詐欺罪にあたる
結婚詐欺は、刑法上の詐欺罪にあたる可能性があります。
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(1)詐欺罪とは
詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させる犯罪のことをいいます(刑法第246条第1項)。
結婚詐欺も、結婚をすることができると相手に信じ込ませて、金品などをだまし取る手口ですので、刑法上の詐欺罪が成立します
詐欺罪の法定刑は「10年以下の懲役」です。 -
(2)詐欺罪の成立要件
詐欺罪が成立するためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 欺もう行為
- 錯誤
- 財産の引き渡し
- 因果関係
このうち、結婚詐欺では、欺もう行為があったかどうかが問題になりがちです。
欺罔行為とは「人を欺く行為」のことです。
結婚詐欺では、詐欺師は「結婚式をするための費用が必要」などと言って被害者からお金をだましとろうとしますが、詐欺罪が成立するためには、最初からだますつもりがあったことを証明することが必要になります。
このように、どういうつもりだったかという当事者の内心を立証する必要が発生する場合あるため、結婚詐欺は立証が難しい犯罪ともいえます。
お問い合わせください。
3、結婚詐欺を疑ったら弁護士に相談を
もし「交際相手に結婚詐欺をされているかも?」と疑った場合には、すぐに弁護士に相談してください。
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(1)結婚詐欺であるかの判断が可能
交際相手や結婚相手の言動から、交際相手が結婚詐欺師かもしれないと疑った場合には、自分自身で対応を行おうとせず、まずは周囲の近しい人に相談し、それでも悩んでしまった場合は弁護士に相談しましょう。
交際相手に対して恋愛感情を抱いている本人では、相手のことを好きだという気持ちが邪魔してしまい、結婚詐欺であるかどうかを冷静に判断することが難しくなります。客観的かつ親身な意見を聞いてみることはとても大切といえるでしょう。
また、本当に結婚詐欺であった場合には、不用意に相手にそのことを伝えると、音信不通になってしまうリスクもあるのです。
弁護士であれば、客観的な立場から、相談者に寄り添いながら、状況を整理して、結婚詐欺であるかどうかを適切に判断することが可能です。
結婚詐欺の被害にあっていた場合には、結婚詐欺師に知られないうちに対応のための手続きを進める方法についても、弁護士がアドバイスやサポートを行います。 -
(2)結婚詐欺であればだまされた金銭の返還が可能
交際相手が結婚詐欺師であった場合には、だまされて渡した金品の返還を求めることが可能かもしれません。
結婚詐欺は、刑法上の犯罪であるため警察に対応を委ねることもできますが、警察の捜査はあくまで犯罪の立件を目的として行われるため、だましとられたお金の返還までを警察に任せることはできません。
また、詐欺の疑いがあっても、証拠の乏しさから事件として立件することが難しいこともあります。
結婚詐欺師に対して金品の返還を求めるためには、示談交渉や民事訴訟、その他の法的手続きなどが必要になります。
すでにお金をだまし取られてしまったが、その返還を求めたい場合には、民事の対応を進めるため、すみやかに弁護士に相談しましょう。 -
(3)結婚詐欺でなくても慰謝料請求が可能
結婚詐欺師に最初からだます意思があったかどうかを立証するのは非常に難しいため、詐欺を理由にしても、相手から金品の返還を求めることができないケースもあります。
そのような場合であっても、正当な理由なく婚約を破棄した場合には、婚約破棄を理由として慰謝料を請求できます。
ただし、婚約がなされていたといえるかどうか、婚約破棄の理由が不当であるかどうかは、具体的な事案に応じて判断する必要があります。
慰謝料の請求を検討する場合にも、専門家である弁護士に相談しましょう。
4、お金を取り戻すまでの流れ
結婚詐欺によってだまし取られたお金を取り戻す場合には、以下のような流れで行います。
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(1)相手の身元調査
結婚詐欺師は、偽名や虚偽の住所を使用していることが多いため、まずは、結婚詐欺師の身元調査を行う必要があります。
弁護士であれば、弁護士会照会という方法によって、相手の電話番号などから相手の住所氏名を特定することができるかもしれません。 -
(2)相手との交渉
相手の身元を特定した後は、だまし取られたお金の返金を求めるために結婚詐欺師との交渉を行うことになるでしょう。
交渉の方法としては、内容証明郵便を送って相手からの連絡を待つという方法が一般的ですが、相手に電話をかけて直接交渉をするという方法もあります。
相手が交渉に応じ、交渉によって相手が返金を認めた場合には、合意書を作成して、合意内容を明確にすることになります。 -
(3)裁判
相手が結婚詐欺を認めない場合や交渉・返金に応じない場合には、裁判所への訴訟の提起を検討することになります。結婚詐欺の立証が難しい場合には、婚約破棄等を理由とする慰謝料請求をすることも検討することになるでしょう。
被害者の言い分を認める判決が言い渡された場合には、判決に基づいて、相手の資産を差し押さえるなどの強制執行の手続きを行うことになることもあります。
相手の資産が不明であるという場合でも、弁護士であれば財産調査などを行い、特定することができるかもしれません。
5、まとめ
結婚詐欺は被害者に恋愛感情を抱かせてその情につけ入る形で行う卑劣な犯罪であるため、被害者本人にとっては、結婚詐欺被害にあっているかどうかについて冷静に判断することは難しい場合が多々あります。
もし、「交際相手が詐欺師かもしれない」「交際相手の言動が不自然だ」という疑いを少しでも抱いた場合には、まずはベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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