嫌がらせの手紙への法的対処法とは? 相談先も含めて弁護士が解説
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京都府警には、ストーカー被害を相談できる「京都ストーカー相談支援センターKSCC」が設置されています。このような相談窓口が設置されているケースは全国的に珍しく、京都府民にとっては心強い取り組みといえるでしょう。
ストーカー被害に限らず、嫌がらせとして手紙などが自宅に送付されるケースも少なくありません。そのような被害を受けたときには、どのような対処法をとることができるのでしょうか。
本コラムでは、嫌がらせの手紙への法的対処法について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、嫌がらせの手紙のよくあるケースとは?
手紙が自宅などに送られてくる嫌がらせの被害としてよくあるケースには、次のようなものがあります。
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(1)ストーカーによる嫌がらせ
つきまといなどを繰り返すストーカー行為のひとつとして、別れた元夫(妻)や交際相手などからの嫌がらせの手紙が届くことがあります。また、面識のない相手が一方的に好意をもち、拒否すると嫌がらせの手紙を送ってくるようなこともあります。
手紙とともに、汚物などを入れた小包が送られてくる被害も報告されています。 -
(2)ご近所トラブルの嫌がらせ
騒音などがきっかけになって、トラブルになった近隣住民から嫌がらせを受けるケースもあります。嫌がらせの相手が近隣住民であれば、マンション内の掲示板などに手紙を張り出したり、玄関ポストに直接手紙を入れたりすることが想定されます。
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(3)職場や習いごとの知り合いからの嫌がらせ
会社で個人情報を入手した職場の同僚から、嫌がらせの手紙が自宅に送付されてくるケースもあります。また、習いごとなどの知り合いから、嫌がらせのターゲットにされてしまう被害もあります。
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(4)お店の営業妨害目的の嫌がらせ
同業者が営業を妨害するために、嫌がらせの手紙を送り付けるケースもあります。
会社に直接手紙を送り付けるケースだけでなく、取引先に手紙を送付する方法で嫌がらせを行うケースも見受けられます。
2、嫌がらせの手紙で生じうる法的責任とは
嫌がらせの手紙が送られてくる被害にあったときには、内容や状況などによっては犯人に次のような法的責任を追及できる可能性があります。
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(1)住居侵入罪・建造物侵入罪
マンション内に無断で侵入して玄関ポストなどに手紙が入れられたようなケースでは、住居侵入罪・建造物侵入罪が成立する可能性があります(刑法130条)。
住居侵入罪や建造物侵入罪は、正当な理由なく居住者や管理者の意思に反して他人の家や建物等に無断で侵入したときに成立する犯罪です。
3年以下の懲役または10万円以下の罰金に処される可能性があります。 -
(2)名誉毀損(きそん)罪・侮辱罪
嫌がらせの手紙を家の壁などに張られたときなどには、名誉毀損罪(刑法230条)や侮辱罪(刑法231条)が成立する可能性があります。
侮辱罪は公然と人を侮辱したときに成立する犯罪で、成立すれば拘留または科料に処される可能性があります。
一方、名誉毀損罪は、公然と他人の名誉や社会的評価をおとしめるような事実(真偽は問いません)を示す行為をしたときに成立する犯罪です。刑罰は、侮辱罪よりも重い3年以下の懲役か禁錮または50万円以下の罰金とされています。 -
(3)信用毀損(きそん)罪・業務妨害罪
嫌がらせの相手が職場にまで誹謗中傷する虚偽の内容の手紙を送付してきたり、同業者が取引先にうその内容の手紙を送付してきたりするケースでは、信用毀損罪・業務妨害罪(第233条 - 第234条 - 第234条の2)が成立する可能性があります。
信用毀損罪には、わざとうそのうわさを流したり人をだましたりして他人の信用を傷つける行為が該当します。
業務妨害罪は、他人の業務を妨害する行為に対して適用されるものです。
これらの罪の刑罰は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金とされています。 -
(4)脅迫罪
手紙の内容に「殺す」などという言葉が書かれている場合には、脅迫罪(刑法222条)が成立する可能性があります。
脅迫罪は、生命や身体、自由、名誉または財産に対して、また本人だけでなく家族へ危害を加えることをほのめかして脅す行為があったときに成立します。なお、脅迫罪の刑罰は2年以下の懲役または30万円以下の罰金とされています。 -
(5)ストーカー規制法違反
「常に監視している」などといった手紙が送られてきたときには、ストーカー規制法違反に該当する可能性があります。
ストーカー規制法は、つきまとい等を繰り返すストーカー行為の被害にあった方を守るための法律です。ストーカー規制法に違反すれば、ストーカー行為者は、1年以下の懲役または100万円の罰金に処される可能性があります。
また、禁止命令が出されたときには、違反すれば6か月以下の懲役または50万以下の罰金で、違反してストーカー行為をしたときには2年以下の懲役または200万円以下の罰金とされています。 -
(6)民事責任としての損害賠償請求
被害者は、加害者に対して刑事責任だけでなく民事責任を問うことも可能です。
被害者は不法行為によって生じた損害を賠償するよう、加害者に求めることが民事上認められています。そのため、民事訴訟などの方法で、加害者への損害賠償請求を行うことが考えられます。
ただし裁判では、不法行為の事実や生じた損害などについての証拠の存在が必要になります。
3、嫌がらせの手紙への対処法とは
嫌がらせの手紙を受け取ったときの対処法としては、次のようなものが考えられます。
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(1)証拠を残しておく
嫌がらせを立証するためには、証拠が必要です。
裁判になったときはもちろん、警察や弁護士などに相談するときにも証拠の存在は重要になります。
そのため、嫌がらせの手紙を身近に置いておくことは心理的に抵抗があるかもしれませんが、証拠になりそうなものはすべて残すよう心がけておくことが重要です。 -
(2)相手との連絡をできるだけ絶つ
内容にもよりますが、一般的にストーカー行為の対象者になった場合は、相手とできるだけ接触しないことが対処法になります。
手紙のほかに電話などがかかってくるのであれば、電話番号を変える、着信拒否をするなどの方法で連絡をとれなくすることもひとつの方法です。
また小包などの郵便は、受け取り拒否をすることも選択肢となります。 -
(3)第三者に相談する
嫌がらせの手紙を受け取ったときに、友人や家族、警察や弁護士などの第三者に相談することは重要な被害対策になります。
ひとりで抱え込んでしまえば、客観的な判断や対策が十分にできなくなるおそれがあります。大きな精神的苦痛を受けることになれば、相手の思惑通りになってしまいます。
したがって、できるだけ早期に第三者へ相談することが大切になります。
4、嫌がらせ被害はどこに相談できる?
嫌がらせの手紙に悩んだときには、次のような相談先を検討するとよいでしょう。
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(1)警察
身の危険を感じるような嫌がらせの手紙であれば、直ちに警察に相談しましょう。
具体的には、最寄りの警察署や警察総合相談室や、ストーカーによる嫌がらせであれば冒頭でも触れた「京都ストーカー相談支援センター(KSCC)」に相談する方法もあります。緊急性が高い内容であれば、迷わずに警察への相談がおすすめです。 -
(2)弁護士
嫌がらせの被害については、弁護士に相談することも有益です。
弁護士は、ご依頼者の代理人として嫌がらせを行う相手にやめるよう交渉することができます。慰謝料などの損害賠償請求をするときには、弁護士名義で内容証明郵便を送付することも可能です。
また、弁護士は嫌がらせ行為を刑事告訴できる証拠がそろっているかどうかの判断や、証拠の収集についてのアドバイスをすることも可能です。 -
(3)探偵
差出人不明の嫌がらせの手紙からは、犯人がだれであるのかを確実に特定できません。
犯人を確実に特定するためには、探偵に調査を依頼することもひとつの選択肢です。
5、まとめ
本コラムでは、嫌がらせの手紙への対処法について解説しました。
嫌がらせをうけたときには、一人で悩むことなく第三者に相談することが大切です。
また、証拠を残しておくことは、相談や相手に責任追及をする際に重要なポイントになることを覚えておくとよいでしょう。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士は、嫌がらせに悩むご相談者のお力になれるように全力でサポートします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています