京都府での境界トラブルはどうやって解決すればよい?京都オフィスの弁護士が解説!
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京都府は、日本列島のほぼ中央に位置し4613.21平方キロメートルの面積を有しています。
令和元年6月1日時点で、京都府には推計で258万6554人もの人々が暮らしを営んでいます。
京都では先祖代々守ってきた土地を大切に受け継ぎながら生活している方も多いものでしょう。しかし、大切な土地だからこそ、隣人と境界をめぐって争いになればより深刻なトラブルになる可能性も高いといえます。
本コラムでは、境界トラブルについて、解決法も含めてベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、境界とは?
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(1)境界とは
境界には、「筆界」と「所有権界」と2つの境界があります。
「筆界」とは、公法上の境界とも呼ばれ,法務局に登記されている地番と地番の境目のことをいいます。土地は1筆、2筆…と数えますが、たとえば○丁目1番の1筆の土地と○丁目2番の1筆の土地の境目を「筆界」といいます。「筆界」は公法上の境界であり国が決めるべきことで、土地の所有者など市民の間で決めることができるものではありません。
「所有権界」とは、私法上の境界とも呼ばれ,土地の所有権と隣地の所有権との権利の境目のことをいいます。
たとえばAさんの土地の所有権の範囲と隣人のBさんの土地の所有権の範囲の境目を「所有権界」といいます。「所有権界」は私法上の境界で、土地の所有権者間の合意で決めることができます。 -
(2)「筆界」と「所有権界」は一致する?
通常、「筆界」と「所有権界」は一致しています。
しかし、例えば、隣人の土地の一部を時効により取得していた場合などには、「筆界」と「所有権界」は異なることがあります。 -
(3)境界トラブルはどんなときに起こりうるのか
境界トラブルは、「筆界」と「所有権界」が一致しないときにお互いの所有権の範囲をめぐって生じることがあります。
また、境界を表すための「境界標」がなくなっていたり境界を誤って理解していたなど、「筆界」が曖昧であることから生じることもあります。
2、具体的にはどのような境界トラブルがある?
具体的な境界トラブルとしては、次のようなケースがあります。
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(1)境界標がなくなりトラブルに…
たとえば、別荘用地として購入した山林と隣地の境目に設置した境界標が、隣地の所有者が造成工事をした際になくなってしまい、境界が分からなくなってしまうなどというケースがあります。
こういった場合には、境界を確定させる手続きをとるとともに造成工事が越境して行われているのであれば早急に差し止める必要があります。
また、意図的に境界標を破損・移動して境界を認識できないようにしている場合には、刑法上の「境界損壊の罪」に問うことができる可能性もあります。「境界損壊の罪」に該当すると、5年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されます。 -
(2)隣地との間に塀を設置しようと思いトラブルに…
法律では隣接地との境界線上に塀を設置する場合、その費用は特に合意がない限り、隣人と平等に負担することを規定しています。
基本的には隣人と話し合って塀を設置することになりますが、隣人が設置に反対するような場合、トラブルになるケースもあります。
法律上は、隣人と合意できなくても高さ2メートルの板塀や竹垣、その他これらと似た材料の塀であれば設置が可能であるとされます。そして、費用も隣人と共同で負担するものとされます。
しかし、現実的には、塀の設置に反対している隣人に費用を請求することでさらなるトラブルに発展してしまうことも想定されます。
そういった場合には、専門家を入れて解決を図ることが重要な選択肢になります。 -
(3)認識の違いでトラブルに…
「隣人と日頃から境界をめぐって言い合いになっている」「土地を売却しようと思ったら隣人から『自分の土地が含まれている』と言われ売却できない」「公図の境界と現地の形が違っており越境している部分を返してほしいと言われた」など、境界の認識が食い違うケースがあります。
日常生活を快適に送るためにも、ご近所とのトラブルは深刻化する前に解決を図ることが重要です。このような場合には、早期に境界を確定させる手続きをとるとよいでしょう。
3、越境している状況を放置しないように注意!
土地を売却する際など、土地の一部を隣人が越境して使用していることが判明する場合があります。こうしたケースでは土地の時効取得を主張され、越境部分について所有権を失うこともあるので早めの対処が必要になります。
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(1)時効とは
時効とは、一定の事実状態が継続されていればその状態を尊重し権利として認めようとする制度です。
所有権については、占有者が土地の占有を始めたときに自分の土地でないことを知らなかったときは、占有開始から10年経過すれば、越境した部分の所有権を取得していると主張することができます。
また、占有開始時に自分の土地ではないことを知っていたときでも、占有開始時から20年経過していれば所有権を取得していることを主張できます。
時効によって、隣人が越境部分を取得している場合には、その部分の所有権を失うことになります。 -
(2)時効により越境部分を取得された場合の境界はどうなる?
時効によって越境部分の所有権を取得された場合でも、国で決める「筆界」が変わるわけではありません。この場合「所有権界」のみが変わることになります。
そのため、最終的には時効により取得した部分について分筆し、隣人に所有権移転登記をするという方法で所有権界に登記を合わせる手続きをすることになります。
4、筆界を確定させたいときは「筆界特定制度」を利用
筆界を確定させることで解決できる境界トラブルに関しては、国が設ける「筆界特定制度」を利用して解決を図ることができます。
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(1)「筆界特定制度」とは
「筆界特定制度」とは、公的機関が調査してもともと定められていた筆界を明らかにしていく制度です。
具体的には、まず土地の所有者が管轄の法務局に「筆界特定申請書」を提出して申請します。
その後、筆界特定登記官が民間の専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて土地の筆界の位置を特定していきます。
「筆界特定制度」によって明らかにされた筆界は、筆界の位置を示す強力な証拠となります。
しかし拘束力はないので、特定された筆界に不満がある場合や拘束力のある判決が必要な場合には、筆界確定訴訟で解決を図っていきます。 -
(2)「筆界特定制度」のメリットとは
「筆界特定制度」を利用する大きなメリットは、裁判よりも負担が軽いという点です。
裁判になった場合には筆界の立証を当事者が行わなければならないほか、時間や費用がかかり経済的・心理的な負担を伴います。
境界トラブルに関しては、最終的には裁判で解決を図る方法しかなければ当事者の重い負担となります。
しかし「筆界特定制度」の創設により、裁判よりも費用や時間などの負担なく境界トラブルを解決できるようになっています。
5、京都府における境界トラブルの解決法
京都府における境界トラブルの解決法には、「筆界特定制度」の利用のほかに次のような方法があります。
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(1)境界問題解決センターに相談する
各都道府県の土地家屋調査士会は、裁判外で境界トラブルを解決するための機関を設置しています。
京都府では、土地家屋調査士と弁護士が調停人となる「京都境界問題解決支援センター」という民間型の裁判外境界紛争解決機関があります。
センターに相談すれば、調停人が紛争当事者の間に立ち問題の調査や整理をします。そして当事者双方が納得できる解決を探っていくことになります。
センターでは、筆界だけでなく所有権界を明らかにすることを求める境界トラブルにも対応しています。 -
(2)裁判で解決する
境界トラブルが話し合いでは解決できない場合などには、最終的には裁判で解決を図ることができます。
境界トラブルでは所有権確認訴訟や筆界確定訴訟などを提起することになりますが、当事者が証拠をそろえて主張や立証を行っていかなければなりません。
そのため裁判では、弁護士に依頼することが通常です。 -
(3)弁護士などの専門家に直接相談する
境界トラブルの解決法には、弁護士や土地家屋調査士などに直接相談して解決を図る方法もあります。
弁護士に相談した場合、弁護士は代理人として隣人と交渉などやり取りを行うことができます。そしてケースに応じた法的な解決方法のアドバイスをすることもできます。
また裁判になった場合でも、弁護士は専門家として有利な結果を得られるように弁護活動を行います。
6、まとめ
本コラムでは、境界トラブルについて解決法も含めて解説していきました。ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士は、境界トラブルをスムーズに解決できるように尽力いたします。
境界トラブルでお困りの際には、ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています