違反すれば経営危機にも? 中小企業が意識すべきコンプライアンスとは
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「会社経営ではコンプライアンスが大事」とよく言われます。企業内に法務部やリスク管理部門を置くことのできる大企業の場合は、コンプライアンス遵守に関する仕組み作りや、徹底した指導教育を行い、コンプライアンス違反を未然に防いでいる傾向があります。
一方中小企業の場合は、コンプライアンスに関する意識が低い、または、そもそもコンプライアンスとは何かを経営者が理解できていない場合も多く、法的トラブルの発生、社会的評価の下落、業績悪化、優秀な人材の流出等、マイナスの影響が生じるケースもよくみられます。
本コラムでは中小企業におけるコンプライアンスの役割や、違反した場合のリスクなどについて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、企業が守るべき「コンプライアンス」とは?
検査データ改ざん、個人情報流出、SNSの不適切投稿など、企業の不祥事は毎年のように話題になっています。それに伴い、コンプライアンスの重要性も意識されるようになりました。
まずは、「コンプライアンス」という概念の基本から解説します。
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(1)コンプライアンスは法令遵守だけではない
「コンプライアンス」は一般的に「法令遵守」として知られています。
1990年代以降、企業不祥事の増加やグローバル化に伴い、法律や規則を守るという意味でコンプライアンスという言葉が日本でも用いられるようになりました。
しかし、近年は企業に対する社会の見方が厳しくなり、かつ、インターネット・SNSの普及により社内の情報が外部に漏えいしやすい環境となったことも相まって、法令だけでなく「社内規定」や「社会倫理」の遵守も指すようになりました。
パワハラやセクハラ、長時間労働、情報漏えい、暴力団排除など対象範囲は広がり続けており、現代社会においては、コンプライアンスは「CSR(企業の社会的責任)」とともに健全な経営のための必須事項と認識されています。 -
(2)コンプライアンス徹底の効果
企業のリスクマネジメントや企業価値の向上において、コンプライアンスを徹底することには以下のような効果があります。
- 社会的信用を損なう不祥事の発生抑止
- 不祥事が発生した際の迅速な対処
- 社会や取引先からの信頼度の向上
- 社員の生命・身体の保護
- 社員満足度アップ、優秀な人材の確保
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(3)中小企業はコンプライアンス未整備のケースが多い
大企業の多くはコンプライアンス対応をしていますが、中小企業ではなかなか対策が進んでいない現状があります。
そもそもコンプライアンスについて知らなかったり、「めんどくさい」と敬遠したりしている事業者もおられるでしょう。
中小企業は大企業と比べて社員が少なく事業規模も小さいため、不祥事が起こるリスクは低いと考えがちです。また、経営者、社員、取引先など関係者の距離が近いため、経営者は、「何かあった時は、お互い話し合いをすれば何とかなる」と楽観的に考えがちです。しかし、違反が起きた際の影響は、事業の規模が小さければ小さいほど重大であり、また、ひとたび利害が対立すれば当事者同士の話し合いで解決することは困難です。
2、中小企業がコンプライアンス違反をした場合のリスク
中小企業のコンプライアンス違反は、内容によっては会社の存続を危うくします。事実、過去に食品偽装などをして大きく報道された中小企業には、倒産したところも多々あるのです。
以下では、コンプライアンス違反の具体的なリスクを解説します。
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(1)コンプライアンス違反の具体例
一口にコンプライアンスといっても、その範囲は多岐に亘ります。
中小企業が気をつけるべきコンプライアンス違反としては、下記のようなものがあります。- 業務上過失致傷・致死(労災事故、交通事故など)
- 消費者事故(商品の欠陥など)
- 独占禁止法違反
- 反社会勢力との関係(暴力団、振り込め詐欺グループなど)
- 情報管理(企業秘密の持ち出し、個人情報漏えいなど)
- 労働関係(長時間労働、ハラスメント、残業代の未払いなど)
- 不正会計(粉飾決算、助成金の不正受給など)
- 著作権侵害
- 偽装(データ改ざん、リコール隠し、食品産地偽装など)
- 従業員の不正、違法行為(業務上横領、痴漢、飲酒運転など)
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(2)コンプライアンス違反による影響
コンプライアンス違反をした場合、企業には次のような影響がでるおそれがあります。
【直接的影響】
- 刑事処分(経営者や従業員の逮捕、書類送検、懲役・罰金)
- 行政処分(営業停止、課徴金納付命令)
- 民事裁判(被害者や遺族からの損害賠償請求、株主代表訴訟)
【間接的影響】
- 報道やネットの書き込みによる情報の拡散
- 会社の信用失墜
- 取引先との契約解除や株価下落
- 優秀な人材の流出、採用応募数の減少
現代では口コミだけでなくインターネットで情報は拡散し、その後も残り続けます。
長時間労働による過労死やセクハラ・パワハラなどが発覚すれば、中小企業であっても話が広がり、大きな批判にさらされることがあります。
また会社が法令を守っていても、従業員が違法行為をすることで、会社も責任を問われる可能性があるのです。 -
(3)中小企業はコンプライアンス違反が経営危機につながる可能性も
大企業と異なり、中小企業は経営基盤が弱いことが少なくありません。
そのため、コンプライアンス違反により消費者や取引先からの信用を失い、契約がなくなったり優秀な人材が他社に流出したりすれば、一気に経営が悪化するおそれがあります。
行政処分を受けたり会社経営者が逮捕されたりすれば、さらに影響は大きくなるでしょう。
中小企業にとっては、一つの不祥事が会社の経営危機につながることもあります。
そのため、大企業だけでなく、中小企業でもコンプライアンスの徹底が必要となるのです。
3、コンプライアンスを徹底するためには
コンプライアンスが大事だということは知っていても、中小企業ではさまざまな事情から対策が後回しになっている現状があります。
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(1)中小企業のコンプライアンス違反の原因
コンプライアンスという言葉は知られるようになりましたが、中小企業では、まだまだ対策が進んでいません。
それには、以下のような理由があります。- コンプライアンスを十分に理解していない
- 経営者、従業員のコンプライアンス意識が低い
- 規定や体制整備のためのリソース不足(知識、人材、時間)
不祥事が起きた際には、迅速に対応することが重要です。
コンプライアンスの理解も体制整備もできていなければ、不祥事が起きた場合に対応が遅れ、重大な支障がでる可能性が高くなってしまうのです -
(2)コンプライアンス経営のための3つのステップ
コンプライアンスを意識した会社経営をするためには、主に次のようなステップで社内環境の整備を進めることが必要になります。
- コンプライアンスについて理解する
- コンプライアンス規定、社内体制の整備
- コンプライアンス教育(経営者、社員)
特に中小企業においては社員と経営者の距離が近く、経営者が社員と一緒になって汗を流していることもあるでしょう。
そのため、まずは経営者自身がコンプライアンスを理解し、法令や倫理を守る姿勢を見せることが大事です。
経営者が自ら実践することで、従業員も、コンプライアンスを遵守する意識が高まるでしょう。
なお、コンプライアンス規定は新たに一から作らなくても、社内規定の変更や追加で対応できることもあります。
4、企業法務を担う顧問弁護士の役割とは
「コンプライアンスに力を入れていこう」と思っても、「何から始めたらいいのかわからない」「相談先を知らない」という経営者も多くおられると思われます。
コンプライアンスについて相談したり具体的な施策を実施したりしていきたい場合には、顧問弁護士をお頼りください。
顧問弁護士であれば、コンプライアンスに関して、以下のようなサポートをすることができます。
- 社内規定のチェック
- コンプライアンス規定や体制整備のアドバイス
- 社員が事件を起こした、会社が法令違反をした場合の警察・裁判対応
- 報道対応
顧問弁護士を活用することで、コンプライアンス違反の防止対策ができるほか、不祥事が起きた際には警察対応なども任せられるのです。
事件が起きてから弁護士を探すのではなく、普段から相談できる弁護士がいることで、スピーディーに対応できるため、影響を最小限に抑えられます。
また、コンプライアンス違反に限らず、取引関連の法務チェックなど、日常的なリーガルサポートも顧問弁護士に頼ることができるのです。
5、まとめ
コンプライアンスの徹底することで、会社や社員を守ることができます。
ベリーベスト法律事務所では、利用頻度などに合わせた顧問弁護士のプランを提供しており、全国で多数の中小企業からご利用いただいています。
京都で企業を経営されており、顧問弁護士サービスのご利用を検討されている方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスにご連絡ください。
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