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あなたの企業が「ブラック企業」と書き込まれたら! 名誉毀損で訴えることはできるか

2019年09月30日
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あなたの企業が「ブラック企業」と書き込まれたら! 名誉毀損で訴えることはできるか

セクハラ、パワハラ、長時間労働、休暇が取れないなどの労働環境が悪い企業のことを「ブラック企業」と呼びますが、このブラック企業という言葉はすっかり社会に定着しています。「あの企業は、ブラック企業だよ」というような会話がよく聞かれます。

インターネットの世界でも、「ブラック企業ランキング」というサイトがあったり、掲示板サイトではブラック企業として会社名がさらされたりしています。ひとごとなら傍観していられますが、もし自分の会社が掲示板などでブラック企業と書き込まれたどうなってしまうのでしょうか。求人を出しても応募が来なくなったり、取引先や金融機関からの信用が低下したりするかも知れません。

このような場合に、投稿者を名誉毀損で訴えることはできるのでしょうか。ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。

1、名誉毀損とは?

名誉毀損とは、人に対する社会的評価を違法に低下させることをいいます。名誉毀損があった場合の法的な措置には、民事上の名誉毀損と刑事上の名誉毀損があります。それぞれについて説明します。

  1. (1)民事上の名誉毀損

    民事上の名誉毀損は、民法の不法行為に該当します。不法行為に該当すると、被害者は加害者に対して損害賠償の請求をすることができます。民事上の名誉毀損では、意見や論評であっても、他人の社会的評価を低下させるものであれば名誉毀損が成立します

    また、名誉毀損の場合、金銭的賠償だけでは名誉の回復が難しいことから、名誉を回復するのに適切な処分を求めることができます。たとえば、謝罪広告や訂正広告をするなどです。その他、人格権に基づく妨害排除請求として名誉毀損となる表現の差止めや削除を求めることができます。

    名誉毀損による損害賠償を請求するには、書面などで通知しますが、相手が応じない場合には裁判所に訴えを提起することになります。ただ、名誉毀損による慰謝料は少額にとどまる場合もあるので、弁護士費用がいくら掛かるのか、確認した上で、訴訟を起こすかどうか考える必要があります

  2. (2)刑事上の名誉毀損

    刑事上は、名誉毀損罪という犯罪が規定されています。名誉毀損罪に該当する場合、3年以下の懲役もしくは禁固または50万円以下の罰金となります。

    名誉毀損罪が成立するためには、①公然と事実を摘示し、②人の名誉を毀損すること、が必要です。公然とは、不特定または多数人が認識しうる状態をいいます。特定少数人のみにしか認識できない状態の場合には名誉毀損罪は成立しません。ただし、特定少数人であってもそれが不特定多数に伝わる可能性が高いものである場合には公然性が認められます。

    なお、刑事上の名誉毀損では、民事上の名誉毀損と異なり、意見や論評は対象とならず、事実を適示することが必要です。事実の内容が真実かどうかは問いません。たとえば、不倫をしていないのに「不倫をしている」と言いふらされたような場合はもちろん、実際に不倫をしている場合も対象になるということです。「人の名誉を毀損すること」の、「人」には、法人も含まれます。

    これらの要件を満たすと基本的に違法となりますが、表現行為は憲法上の重要な権利なので、一定の条件を満たす場合、違法ではなくなります。その条件が、①事実の公共性、②目的の公益性、③真実性の証明です。

    事実の公共性とは、公共の利害に関する事実であることです。政治家や大企業の役員などの不祥事は、たとえそれが社会的評価を下げるものであっても公表されるべきものだからです。目的の公益性とは、専ら公益を図る目的で行っているということです。個人的な恨みで行うことは許されないということです。真実性の証明とは、摘示された事実が真実であることです。うその事実を表現することを保護する必要性はないからです。なお、真実でなくても、その事実が真実であると信ずるに足りるについて相当の理由があれば違法性はないと解釈されています。

    以上の構成要件を満たし、違法性がないという場合には、警察署に告訴状を提出することになります。警察が正式に受理し、事件性があると判断すると捜査が開始されます。身柄を拘束して捜査が必要なとき等は、逮捕されます。その後、検察庁に送検され、検事が起訴するかどうかを判断します。起訴されれば、裁判になります。裁判では、有罪・無罪か判断され、有罪のときは量刑も決まります。

  3. (3)インターネットでの名誉毀損

    インターネットが普及したことによって、今は誰でも情報を世界中に発信することができます。インターネットは不特定多数の人が見ることができるため、公然性があり、そこで名誉を毀損すれば、名誉毀損が成立します

    2001年にプロバイダ責任制限法(特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律)が制定されたため、プロバイダが負う責任が明確化され、発信者情報の開示を請求できる要件も明確化されました。

  4. (4)名誉毀損の時効

    名誉毀損についても時効があります。民事上の名誉毀損については、損害と加害者の存在を知ったときから3年間、または不法行為のときから20年間行使しないとき時効が成立します。刑事上の名誉毀損罪は、親告罪(被害者が警察などに告訴することが必要)なので、告訴期間が定められています。告訴期間は、犯人を知った日から6ヶ月です。

2、ブラック企業という批判は名誉毀損にあたるのか?

事業者がネット掲示板などで「ブラック企業」と名指しされた場合には名誉毀損となるのでしょうか。具体的なケースで考えてみましょう。

  1. (1)名誉毀損とならないケース

    ネット掲示板に「○○会社はブラック企業だ」という書き込みだけの場合、名誉毀損にはなりません。ブラック企業というのはひとつの評価であって、事実の適示ではないため、刑事上の名誉毀損にはあたりません。また、民事上の名誉毀損についても、法人の人格権の侵害とまで言えるかは微妙だからです。

    では、「○○会社は、サービス残業をさせているブラック企業だ」と書き込まれた場合はどうでしょうか。この場合、「サービス残業をさせている」という事実を摘示しているので、名誉毀損に該当する可能性はあります。しかし、①事実の公共性、②目的の公益性、③真実性の証明がある場合には違法性がなくなります。企業において、違法であるサービス残業をさせている事実を公表することは、事実の公共性と目的の公益性が認められます。そして、サービス残業の事実が、労働基準監督署の公表に基づくものであるならば、真実性の証明があると言えます。したがって、この場合も名誉毀損にはあたらないといえます。

  2. (2)名誉毀損になる可能性の高いケース

    上記と同じケースで、「○○会社は、サービス残業をさせているブラック企業だ」と書き込まれた場合でも、「サービス残業をさせている」という事実が虚偽であるならば、刑事上も民事上も名誉毀損が成立する可能性はあります。虚偽の事実であることから、真実性の証明が認められないからです。

3、ネットで名誉毀損を受けた場合の対処方法

ネットで名誉毀損を受けた場合の対処としては、基本的にネットでの書き込みを削除させることに尽きます。その方法としては、次のような方法があります。

  1. (1)削除申請フォームの利用

    名誉毀損となる記事が掲載されたWebサイトに「削除申請フォーム」がある場合、それを利用して削除申請をします。すぐ削除してくれるサイトもあれば、全く削除に応じないサイトもあります。

  2. (2)Web管理者などに削除要請

    名誉毀損となる記事が掲載されたWebサイトの管理者、サーバー管理者、回線提供会社などに削除を依頼します。プロバイダ責任制限法に基づき「送信防止措置依頼書」を送付し、権利を侵害する内容の発信を停止することをプロバイダやサイトの運営者に要請することができます。削除の要請は、個人でも可能ですが、弁護士に依頼し、弁護士名で削除要請すると削除される可能性が高まります。

  3. (3)書き込んだ本人に削除要請

    名誉毀損となる記事を書いた本人が特定されている場合、その本人に対して内容証明郵便などを送付して削除を要請します。こちらの場合も弁護士名で内容証明郵便を送付すれば、削除される可能性が高まります。

  4. (4)法的手段による削除要請

    (1)から(3)の方法で削除してもらえない場合には、法的手段により削除してもらうしかありません。サイト管理者に対して、記事の削除を求める仮処分を申し立てることができます。その他、発信者の情報を開示させる仮処分の申し立ても可能です。仮処分命令が出れば、サイト管理者に強制的に記事を削除させることができます。これらの手続きは専門性が高いので弁護士にご相談いただいた方がよいかもしれません。

4、名誉毀損の書き込みをした犯人を特定する方法

名誉毀損の書き込みをした犯人に損害賠償請求するにしても、刑事告訴するにしても、犯人を特定しなければなりません。犯人を特定する方法としては、プロバイダ責任制限法に基づく「発信者情報開示請求」というものがあります。この請求により、発信者の住所、氏名、電話番号などについて、プロバイダに対して情報の開示を求めるものです。

ただ、裁判手続きでない場合には、開示には応じないことが多いので、しっかりと準備して、裁判手続きで開示を求めるのが有効です。発信者の特定には、IPアドレスとタイムスタンプが必要になりますが、一定期間が経過すると自動的に消去されてしまうので、迅速な請求が必要になります。場合によっては、「発信者情報消去禁止仮処分命令申立」を行い、記録の消去を禁止する命令を裁判所から出してもらう必要があります。

5、まとめ

インターネットはとても便利なものですが、匿名をいいことに企業を名指しで批判する人が大勢います。ひとたび自社がターゲットとなり、ブラック企業との書き込みをされると、一気に拡散し、社会的信用を失ってしまいます。

何事も早期に解決することが大事になりますので、そのような書き込みを見つけた場合には、すみやかに対応することが求められます。

ただ、書き込みをした人の表現の自由を妨害するとの理由等で、プロバイダやサイト管理者も簡単には応じてもらえないのが現状です。そのようなときには、弁護士が対応することで、迅速に対応してもらえることがあります。

当事務所には、インターネットの書き込みに対する削除依頼や発信者情報開示請求に関する経験が豊富な弁護士がおりますので、十分な対応が可能です。気になることがありましたら、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスまでご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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