SNSの誹謗中傷は犯罪として告訴できる? 削除する方法を弁護士が解説
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FacebookなどのSNSは楽しい反面、直接誹謗中傷されるなどのリスクがあります。ひとたびSNSに誹謗中傷が書き込まれると、誹謗中傷が連鎖して歯止めがきかなくなる炎上に発展することも少なくありません。
たとえば京都では2015年に発生した、痛ましい傷害致死事件の被害者がインターネット上で、「不良グループ同士のけんか」、「たまたま被害者が死んだだけ」と誹謗中傷されるという出来事がありました。ネット上で誹謗中傷をする方は匿名と誤解しているケースが少なくありませんが、発信元は特定できるうえ、悪質な書き込みは罪を問うことも可能です。
SNSなどで誹謗中傷の被害にあったときは、削除対応するだけでなく、我慢せずに法的措置を検討するなど、毅然(きぜん)とした対応することが重要でしょう。今回は、SNSで誹謗中傷された場合にとるべき行動、削除する方法などを、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、恐ろしいネット炎上や誹謗中傷トラブル例
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(1)SNSの投稿が炎上して住所職場本名が特定される
SNSに投稿したコメントがきっかけで、いわゆる炎上状態となり、あっという間に本名、職場、母校が特定されてしまったという話は頻繁に報道されています。
このような状況に陥ると、ネット上で反論しようとしても、火に油をそそぐ状態となるケースが少なくありません。沈静化せずに炎上が続けば取り返しがつかないことになる可能性があります。 -
(2)SNSに投稿したジョークが大炎上して失職
世界最大のSNS炎上といわれている炎上事件があります。出張で飛行機に乗る前に人種差別主義者のまねをした投稿をジョークでしたところ、半日後に炎上。投稿者が飛行機内でサイトをチェックすることができない間に、世界のトレンド入りするほど拡散されてしまいました。
職場や、乗っている飛行機まで拡散され、飛行機を降りたところで顔写真を撮影されてしまいます。その後、投稿者は職を失い、社会的に破滅してしまいました。炎上した事実はインターネット上から一生消えることがないため、再就職も難しいといわれています。 -
(3)誹謗中傷の果てに殺人事件へ発展
平成30年6月、ネットセキュリティ会社社長が、無職の男性によって殺されるという事件が発生しました。2人の接点はインターネットのみで、加害者は被害者の本名すら知らなかったと報道されています。
しかも、犯人の男性は被害者の男性に対して執念深く誹謗中傷を続けていたうえ、何度もIDが削除されたことを逆恨みした末の犯行とみられています。インターネットでの誹謗中傷がエスカレートするとこのような恐ろしい結末を迎えることもあるのです。
2、SNSの誹謗中傷は罪に問えるのか? 想定できる刑事罰を解説
先ほどご紹介したようなSNSでの誹謗中傷事件は、いくつかの罪に問える可能性があります。
- 名誉毀損罪
- 侮辱罪
- 脅迫罪
- 信用毀損及び業務妨害罪
- 偽計業務妨害罪
- 威力業務妨害罪
この中でも、個人のSNSへの誹謗中傷の書き込みで、罪に問われる可能性が高いのが「名誉毀損(きそん)罪」「侮辱(ぶじょく)罪」「脅迫罪」、「信用毀損(きそん)及び業務妨害罪」です。これらの罪が適用されるケースと、与えられる刑事罰を解説します。
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(1)名誉毀損(きそん)罪
名誉毀損罪とは、社会的地位や名誉を低下させるような書き込みがなされた場合に適用されます。書き込みの内容は、事実であろうとなかろうと名誉毀損罪が成立する可能性があります。刑法230条では、名誉毀損罪が成立すると、「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。
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(2)侮辱(ぶじょく)罪
侮辱罪とは、具体的な事実を告げることなく相手を侮辱した場合、成立する犯罪です。つまり、抽象的な誹謗中傷は侮辱罪に該当する可能性があるということです。刑法231条では、侮辱罪が成立すると「拘留又は科料に処する」と定められています。
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(3)脅迫罪
脅迫罪とは、相手の生命や身体、自由や名誉、財産などに害を与えることを書き込むだけで成立します。「お前の家に放火してやる」、「お前の妻を階段から突き落としてやる」などと書き込めば、実行に移さなくても脅迫罪が成立するのです。
SNSで脅迫を受けたら、直ちに警察か弁護士に相談することをおすすめします。脅迫罪が成立すると「2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処する」と刑法で定められています。 -
(4)信用毀損(きそん)及び業務妨害罪
信用毀損(きそん)及び業務妨害罪は、主に企業や商店などが、評判を落とされるような書き込みや発言などで売り上げが減少したり、顧客対応でサービスの提供に支障が出たりした場合に成立する可能性がある罪です。
つまり、うその書き込みによって業務の妨害をしたと認められれば、書き込みした者を信用毀損罪や業務妨害罪に問える可能性があります。信用毀損(きそん)及び業務妨害罪が成立すると「3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と定められています。
3、SNSで誹謗中傷されたらやるべき4ステップ
SNSに誹謗中傷を書き込まれた場合は、上記の刑事罰に問える可能性があります。そのため、素早く証拠を残すと同時に、告訴の準備を進め、誹謗中傷の書き込みを削除する手続きを行わなければなりません。
SNSの代表格のひとつであるFacebookを例に、被害者が書き込みの削除依頼をする手順を知っておきましょう。
- ステップ1:掲示板やサイト、SNSの規約を確認
- ステップ2:誹謗中傷書き込みの証拠を保存
- ステップ3:サイト管理者や管理している企業に削除要請
- ステップ4:応じてもらえなければ法的手段
Facebookの場合は、利用規約で明確にプラバシー侵害や誹謗中傷の投稿を禁止しています。また、該当の書き込みから直接削除要請を行うことができるので、誰でも簡単に削除要請が可能です。Facebookで削除要請をする場合は、まず誹謗中傷の投稿をスクリーンショットなどで保存しておきましょう。誹謗中傷の証拠は、後々告訴したり、損害賠償請求をしたりするときに必要となります。
なお、個人が運営しているブログの場合は、直接本人に削除を依頼することもできます。しかし、あなたに対して悪意を持っている、もしくは悪意なく正当な発信と考え誹謗中傷を行っているケースでは、スムーズに削除に応じてくれるケースは少ないかもしれません。
また、Facebookのように投稿者でも書き込みを削除できないタイプのSNSや掲示板は、サイト管理者に削除を依頼しなければなりません。ただし現状では、プロバイダやサイト管理者は「表現の自由」を守らねばならない立場であることから、法に触れた投稿でない限りは、スムーズに削除に応じるケースはあまり多くはありません。個人で依頼しても放置されることが少なくないといわれています。
4、SNSで誹謗中傷されたら弁護士に依頼すべき理由
前述のとおり、削除依頼自体も、個人で行動しても思うように対策が進まない可能性もあるでしょう。個人からの削除依頼や発信者情報開示請求には応じない企業が相手でも、弁護士が入ることでスムーズに応じることが多い傾向にあります。削除依頼に応じない場合は、裁判所に仮処分の申し立てや訴訟などの法的措置を取る必要があるので、SNSの削除要請などの案件に強い弁護士に依頼することをおすすめします。
また、SNSでの誹謗中傷は、さまざまな罪に問える可能性があります。あなたを誹謗中傷した相手に、刑事罰だけでなく民事上の責任を負わせられることもあるでしょう。しかし、誹謗中傷を行う相手と直接やり取りすることには危険を伴います。
削除要請だけでなく、一連の対応や手続きを弁護士に依頼したほうがよいでしょう。状況に合わせた対処方法や、賠償請求を行うための準備について、アドバイスすることも可能です。
5、まとめ
SNSの誹謗中傷は放置しておくと、取り返しがつかない事件に発展する可能性もあります。早めの対策が重要といえるでしょう。
個人で記事や書き込みの削除依頼をすることは不可能ではありませんが、サイト管理者が応じない場合は、法的手続きに移行しなければなりません。個人では完璧な対策を採るのが難しいといわれています。また、SNSでの誹謗中傷は想像以上の心労を抱えることになるので、ひとりで悩まず弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所では、SNSの削除要請の対応実績が豊富な弁護士が適切な対応をアドバイスいたします。まずは京都オフィスまで気軽にお問い合わせください。
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