「退学してください」学校から自主退学勧告を受けた場合の対処法は?
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2017年7月25日付で、京都大学で4名の学生が放学(退学)処分となったニュースは、一部で注目を集めました。
中学・高校・大学などで、生徒(学生)側が学校から自主退学の勧告を受けるケースがあります。
もし学校から自主退学勧告を受けてしまったら、安易に応じて退学届を出してしまう前に、勧告に法律上の根拠があるのかどうかをきちんと検討することが必要です。
この記事では、自主退学勧告や退学処分の概要や対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「学生の懲戒処分について(2017年7月28日)」(京都大学))
1、自主退学勧告を受けるケースとは?
そもそも、生徒(学生)が学校から自主退学勧告を受けてしまうのは、どのような場合が考えられるのでしょうか。
以下では、自主退学勧告を受けるケースの具体例を見ていきましょう。
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(1)出席日数不足
何らかの理由により不登校となってしまい、進級・卒業のための出席日数が不足してしまった場合には、学習指導要領などにおいて求められる教育を行うことが不可能であるとして、自主退学勧告を受ける可能性があります。
生徒(学生)側に責任があるケースでは、自主退学勧告に合理的な理由があるとされるケースが多いでしょう。
しかし、いじめなど学校側にも責任があると認められるケースでは、自主退学勧告が違法となる場合もあります。 -
(2)学業不振
あまりにも成績評価が低く、単位・進級・卒業を認められる水準に達していないと判断される場合にも、自主退学勧告が行われる可能性があります。
特に私立の進学校などでは、進級・卒業のための成績要件が設けられているケースが多く、未達の場合には転校をすすめるなどの対応が取られる場合があるようです。 -
(3)飲酒・喫煙などの非行
未成年者による飲酒・喫煙など、法律に違反するような非行が認められた場合には、学校の生徒(学生)としてふさわしくない行動があったことを理由に、自主退学勧告が行われることがあります。
飲酒・喫煙などの非行については、数日間の停学(謹慎)処分にとどめるケースもあり、どのような処分が下されるかについては、非行の悪質性の程度によります。 -
(4)校則違反
学校生活・頭髪・運転免許の取得・芸能活動などに関するルールが校則で定められている場合に、これらの校則に違反すると、自主退学勧告を受けるケースがあります。
しかし、最近では昔ながらの校則の合理性が問題視されるケースも多くなっています。
仮に問題のある校則への違反に基づいて自主退学勧告が行われた場合には、自主退学勧告自体が違法とされる可能性も生じるでしょう。 -
(5)暴力・傷害・窃盗などの犯罪行為
生徒(学生)が学校の内外で暴力・傷害・窃盗などの犯罪行為を働いた場合には、自主退学勧告が行われる可能性が高いと考えられます。
特に犯罪行為については、自主退学勧告の段階を省略して、いきなり退学処分を受けてしまうケースもあります。
2、自主退学勧告を受けたら学校を辞めないといけないのか?
学校側から自主退学勧告を受けた場合、多くの生徒(学生)は「学校をやめなければならない」と考えてしまうでしょう。
しかし、法律的な観点からいえば、生徒(学生)は自主退学勧告を断ることも可能です。
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(1)任意の退学を求めるに過ぎない|強制力はない
自主退学勧告は、あくまでも生徒(学生)に対して任意の退学を求めているに過ぎません。
したがって、退学するかどうかの選択権は生徒(学生)側にあり、退学を拒否することもできます。
もし学校側から退学届を提出するよう強く求められても、退学する意思がないのであれば、退学届を提出しないように注意しましょう。 -
(2)自主退学勧告を拒否した場合、退学処分を受ける可能性がある
ただし、生徒(学生)が自主退学勧告を拒否した場合には、学校側から改めて退学処分の言い渡しを受けることがあります。
あるいは、「自主退学勧告を拒否したら退学処分にする」という形で、生徒(学生)に対して事実上退学を強制するような自主退学勧告が行われるケースも散見されます。
こうしたケースでは、「いずれにしても退学になるのだから同じではないか」と考えてしまうかもしれません。
しかし、次の項目で解説するように、自主退学勧告よりも退学処分の方が、生徒(学生)側からの法的な反論の余地が大きくなります。
そのため、自主退学勧告を拒否した場合に退学処分となる可能性が濃厚だとしても、反論の余地がありそうであれば、毅然(きぜん)として自主退学勧告を拒否しましょう。
3、自主退学勧告と退学処分との違いは?
自主退学勧告と退学処分は、生徒(学生)の退学に関する処分であることは共通していますが、両者の法的な性質は全く異なります。
以下では、自主退学勧告と退学処分の違いについて解説します。
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(1)自主的な退学か、強制退学か
自主退学勧告は、あくまでも生徒(学生)に対して自主的な退学を促すものに過ぎませんので、生徒(学生)側には退学を拒否する自由があります。
これに対して退学処分は、学校側が一方的に生徒(学生)を退学とする処分です。
したがって、退学処分を受けた生徒(学生)は、たとえ退学を拒否したとしても、強制的に学校を退学になってしまうのです。
このように、自主退学勧告と退学処分には、生徒(学生)に対する強制力の有無という根本的な違いが存在します。 -
(2)退学処分にはより強力な理由が必要
自主退学勧告と退学処分を比べると、生徒(学生)に対する強制力がある退学処分の方が、生徒(学生)にとってより厳しい処分であるといえます。
そもそも、学校は生徒(学生)に対して、自由に自主退学勧告や退学処分を行うことができるわけではありません。
生徒(学生)には「教育を受ける権利(学習権)」(日本国憲法第26条第1項)があります。
したがって、学校側が正当な理由なく、生徒(学生)から教育を受ける機会を奪う退学処分を行うことはできないのです。
学校が生徒(学生)に対して自主退学勧告や退学処分を行う場合、それがやむを得ないと認められる合理的な理由が必要となります。
その理由については、処分の内容が重くなればなるほど、より厳格な合理性が要求されるというのが、憲法・法律の基本的な考え方です。
つまり、自主退学勧告に比べて退学処分の方が厳しい処分であるため、より厳格な退学理由が要求されるといえます。
なお、生徒(学生)に対する自主退学勧告が、実質的に強制力を持った形で行われた場合には、退学処分並みの厳格な退学理由が要求される可能性があります。
たとえば、「自主退学勧告を拒否した場合には退学処分にする」という形で退路を断たれた場合や、複数の教職員に取り囲まれて自主退学を迫られた場合などには、退学を実質的に強制されたと判断される可能性が高いでしょう。
4、自主退学勧告、退学処分に関して弁護士ができること
生徒(学生)が不当な自主退学勧告・退学処分を受けた場合には、弁護士に相談して法律的な観点から対処することをおすすめいたします。
弁護士は、違法・不当な自主退学勧告・退学処分に対して、以下のように依頼者をサポートすることが可能です。
万が一学校側から自主退学勧告・退学処分を受けてしまった場合には、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。
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(1)退学の取り消しを求める
自主退学勧告の段階の場合は、まずは学校側に対して、自主退学勧告を撤回するように求めることが考えられます。
自主退学勧告に応じて退学届を提出した場合でも、自主退学勧告自体に合理性がなく違法であると判断されれば、それに応じた退学届の提出についても無効とされることがありますので、退学の取り消しを求めることが考えられます。
また、退学処分により退学した場合には、退学処分の違法性が認められれば、生徒(学生)としての地位を回復することが可能ですので、この場合も、退学の取り消しを求めることが考えられます。
弁護士は依頼者のために、民事訴訟や取り消し訴訟の手続きを通じて、学校側に対して退学の取り消しを求めます。 -
(2)学校側に対して損害賠償を請求する
さらに、違法な退学処分などによって経済的・精神的な損害を被ったことを理由として、学校側に対して損害賠償請求をすることも考えられます。
損害賠償請求については、仮に生徒(学生)の側に学校に戻る気がないとしても、有効な救済手段となります。
弁護士は、民事訴訟や国家賠償請求訴訟の手続きを通じて、依頼者が学校側から正当な補償を受けられるように尽力します。
5、まとめ
学校から自主退学勧告が行われた場合、生徒(学生)の側は、退学届の提出を拒否することもできます。
仮に自主退学勧告に応じて退学届を提出したり、退学処分を受けたりして退学となった場合でも、その理由や経緯によっては、退学自体の適法性・有効性を争う余地があります。
したがいまして、もし退学に納得がいかない場合は、ベリーベスト法律事務所の弁護士に一度ご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、学校側に対して退学処分の取り消しや損害賠償を請求するために、依頼者を法的な観点から全面的にバックアップいたします。
違法・不当な自主退学勧告や退学処分にお悩みの方は、お気軽にベリーベスト法律事務所にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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