子どもが保育園や幼稚園でケガをしたとき、損害賠償を請求する方法
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京都新聞の報道によると、保育園出の送迎バスでの園児の置き去りを防ぐため、京都府笠置町では令和5年1月に車内の見回り箇所に付けたQRコードを読み取るシステム「おりた」を府内で初めて導入しました。また、福知山市でも、市内の育園・こども園のバスに安全装置を設置する取り組みを始めています。
保育園や幼稚園などでは、置き去り事故のほかにも、園児がケガをする事故が発生することがあります。
もし、ご自身の子どもが保育園でケガをしたり後遺症を負ったりした場合には、ケガが発生した事情によっては保育士や保育園の責任を追及して損害賠償を請求することも検討されるでしょう。
本記事では、子どもがケガをしたときに損害賠償を請求する相手や、損害賠償を請求するための具体的な方法について、べリーベスト法律事務所京都オフィスの弁護士が解説します。
1、保育園が負う責任
損害賠償請求をするためには、そもそも誰にどのような責任があるのかについて把握しておく必要があります。
ここではまず、預けていた子どもが怪我をしたときの責任について解説します。
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(1)民事刑事上の責任
●民事上の責任
子どもの保護者と保育園は、子どもの保育について契約を結んでいます。そして、保育園側は、この契約に基づいて、子どもが安全な環境で保育サービスを受けられるように注意しなければならないという「安全配慮義務」(民法第415条)を負っています。
もし保育士などが監視監督を十分にしていなかったために子どもが怪我をした場合、保育園側は、この安全配慮義務違反に基づく損害賠償責任を負うことになります。
また、保育園側は、使用者責任(民法第715条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性もあります。
使用者責任というのは、従業員が故意(わざと)や過失(不注意)によって誰かに損害を与えた場合には、原則として使用者もその損害を賠償する責任を負わなければならないというものです。
保育士がきちんと安全配慮義務を尽くしていなかったことによって子供が怪我をした場合には、保育園側も使用者責任(民法715条1項)に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
なお、保育園での事故は園内だけではなく、散歩などの園外保育の際にも発生することがあります。園外保育をするかどうかは保育園側が決めることですが、園外保育をする以上は園側が安全を確保することが前提となるので、損害賠償を請求できるケースのほうが多いでしょう。
●刑事上の責任
民事上の責任にとどまらず、保育園の施設で事故が発生し、子どもが怪我をした場合、「業務上過失致傷罪」(刑法第211条1項)が成立する可能性があります。
この場合、子どもを直接監視していた保育士などが、子どもの安全に気を配って監視や監督する注意義務を怠っていなかったかという基準で判断されます。また、直接子どもを監視していない保育園の責任者などについても、安全な管理体制を整えていたかという点に監督義務違反が認められれば、刑事責任が追及されることもあるでしょう。 -
(2)請求できる損害賠償の内容
園側は子どもの怪我の状況や後遺症に応じて、下記3つの損害賠償の責任を負います。
なお、被害者が保育園児の場合、年齢的に自分では損害賠償を請求できないため、法定代理人である親が代わりに損害賠償を請求することになります。
●治療費など
子どもが保育園の事故で怪我をした場合、保育園側は子どもの治療費、入通院した場合の交通費や、入院した場合の親などの付添費用を賠償する責任を負います。
●逸失利益
逸失利益とは、事故で怪我をしなければ将来得られたはずの利益のことです。子どもが事故で失明したとか、身体に障害が残った場合に問題になります。
大人であれば、会社を休んで減った収入や、元の仕事を続けられなくなった金額を算出しやすいものです。しかし、子どもの場合は将来どのような仕事についてどの程度の収入を得るかが不確定な点が多いので、性別と年齢に基づく一般的な基準に基づいて金額を計算することになります。
●慰謝料
慰謝料とは、精神的な苦痛を金銭で賠償することをいいます。子どもが怪我をした場合、請求できる慰謝料には2つの種類があります。
1つ目は、子どもが入通院をした場合に、入院や通院を余儀なくされたこと自体によって受けた精神的・肉体的苦痛を賠償するための慰謝料(入通院慰謝料)です。実際に入通院した日数や、治療に要した期間、症状の程度などによって金額が決定します。
2つ目は、怪我によって子どもに後遺症が残った場合に請求できる慰謝料です(後遺症慰謝料)。後遺障害等級と呼ばれる1級から14級までの症状に該当することが必要になります。万が一子どもが亡くなった場合には、代わりに死亡慰謝料を請求することができます。
2、損害賠償を請求できる相手
先述した通り、子どもが保育園で怪我をした場合、責任の所在は保育園や保育士にあると考えられます。それでは実際に損害賠償請求するときは、誰に対して請求すればよいのでしょうか。ここでは損害賠償請求をする相手について解説します。
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(1)保育士
保育園内での事故はもちろん、散歩などの園外保育中に園児が川に落ちて怪我をするなどした場合、子どもを監視・監督していた保育士の安全配慮義務違反が問題になります。保育士が目を離していたなどの事情がある場合は安全配慮義務を怠った過失があるとして、損害賠償の責任を負う対象になります。
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(2)保育園・保育所
上記のように、子どもを直接監視する保育士などに過失があった場合は、その保育士を雇っている保育園の運営会社は使用者としての責任を負い(民法715条)、損害賠償を支払う義務を負います。
また、保育園の園長などは、その場にいなかったとしても、子どもの安全確保のために保育士や先生たちを指導監督したり、運営体制を整えたりする安全配慮義務(民法415条)を負いますので、これを怠った場合には安全配慮義務違反として、損害賠償の責任を負うことになります。 -
(3)保険
保育園や幼稚園が保険に加入している場合、子どもの怪我などが保育中の災害・事故と認定されれば、医療費、障害見舞金などのお金の給付を受けることができる場合があります。
3、損害賠償を請求するために
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(1)損害賠償請求のための準備
子どもの怪我について損害賠償を請求するには、まずは園側の対応と怪我に原因と結果の関係(因果関係)があることが必要です。
怪我をした当時の状況を、子どもや園側に聞いて、書面化しておくとよいでしょう。次に、治療して通院を続けつつ、後遺症が残る場合は後遺障害の手続きを行います。
しかし、因果関係の証明や後遺障害の手続きは専門性が必要になることがほとんどです。一般民事事件における損害賠償請求を行うための知見が豊かな弁護士にご相談することをおすすめします。可能であれば直接交渉を行う前のタイミングで相談しておけば、のちのちの展開まで考慮した交渉や準備をしておくことができるでしょう。 -
(2)示談交渉や裁判
損害賠償請求の準備ができたら、園側に対して損害賠償を請求します。請求できる相手は、子どもを直接監視・監督していた保育士と、管理体制が不十分だった場合には保育園に対しても請求することができます。
損害賠償の交渉は、まずは当事者間で示談交渉を行います。協議による示談が成立しないときは、第三者である調停委員を介して話し合いを行える調停に移行することもあります。もし、それでもまとまらなければ、裁判で対応していくことになるでしょう。
示談交渉や、裁判になった場合の訴訟対応は、交渉そのものだけでなく、資料を準備したり、決められた日時に裁判所に出向かなければならないなど、負担がかなり大きくなります。弁護士に依頼すると、これらの手続きや交渉をすべて任せることができるので、負担は大幅に軽減されるでしょう。ご心配な場合はまずは弁護士に相談してみましょう。 -
(3)保育園での怪我や事故の注意点
そもそも子どもは非常に怪我をしやすいものです。そのうえ、被害者が幼い場合、怪我をした状況を自ら正確に説明することは難しいでしょう。たとえ保育園や園外保育の最中、または通園中などに負傷したとしても、何が原因で怪我をしたのか、責任がどこにあるのかを明確にすることが難しいというケースは多くあります。
このため、園が責任を認めず、裁判にまで発展して争うケースは少なくありません。その場合、結論が出るまでだけでも数年単位の時間がかかる可能性があることを覚悟しておく必要があるかもしれません。また、書類の不備や手続きに不備があると、考えていたような損害賠償を受けることができない可能性もあります。まずは法律に関する知見が深く、一般民事裁判の経験が豊富な弁護士へ、早急に相談することが最善といえるでしょう。
4、まとめ
保育園で子どもが怪我をした場合、誰にどのような責任があり、損害賠償を請求できるのかについて解説しました。
保護者である親として、子どもの治療費の支払いや将来への影響など、不安にさいなまれる方も多いと思います。そのような中、冷静に保育士や園長、保育園運営会社などを相手に証拠をそろえて交渉をするのは非常に大変なことです。しかし、弁護士に相談し、交渉などを任せることができれば、子どものケアに集中することができます。
保育園での子どもの怪我でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスへご連絡ください。京都オフィスの弁護士が全力でサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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