離婚後に子どもに会えない! 別居した親が子どもに会える方法を解説
- 親権
- 離婚後
- 子供
- 会えない
令和5年4月18日、家族法制の見直しを検討している法制審議会(法相の諮問機関)の部会は、「離婚後の共同親権」の導入を前提に今後の議論を進めていくことで合意しました。法制審議会では令和4年7月から共同親権の導入についてたたき台を示していましたが、同年8月の京都新聞の社説では、当事者である子どもたちの声を第一にして慎重に議論すべきだと述べられています。
令和5年5月現在、日本では共同親権は導入されておらず、子どものいる夫婦が離婚した際には父母のうち片方のみが親権を持つことになります。いちど離婚して配偶者や子どもと別居してしまったら、その後、親権を持たないほうの親(非監護親)は長期間にわたって子どもに会えない状態になってしまうことも珍しくありません。
本コラムでは「離婚して親権を取得できなかったが子どもに会いたい」と希望される方に向けて、子どもと会うための法律的な対応方法を、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説いたします。
1、子どもには非監護親に会う権利がある
離婚後に子どもを養育・監護していないほうの親でも子どもと面会や交流をできる「面会交流権」は、平成23年の民法改正によって明文化されるようになりました。
それ以来、「親権を持っていない非監護親であっても、子どもの利益を考慮して、面会交流を積極的に行うべきである」とする考え方が主流になっています。
面会交流権は、親側の権利であると同時に子ども側の権利でもあり、両者の利益が対立した場合には子どもの利益が優先する点に留意しましよう。
-
(1)面会交流権とは?
面会交流とは、子を現実に監護しない親がその子と直接面会し、又は文通などにより、定期的に接触したり、交流を持ったりすることをいい、これを実施する権利を面会交流権といいます。
平成23年の民法一部改正(平成24年施行)で、民法766・1項に「父又は母と子との面会及びその他の交流(中略)について必要な事項は、その協議で定める」と定められ、面会交流権が明文化されました。 -
(2)子どもの利益が最優先
民法では、面会交流の実施は「子どもの利益を最優先に考慮しなければならない」と定められており、面会交流の日時や場所、頻度は、子どもの年齢やスケジュールなども考慮して無理のない範囲で行うことが求められます。
「子どもが熱を出した」「受験を控えている」など、やむを得ない事情がある場合は、定期的な面会交流を予定していたとしても強制すべきではないでしょう。 -
(3)面会交流は子どもの健全な育成のために重要
非監護親と監護親(親権者)との関係が良好ではなくとも、面会交流は、子どもにとっては離れて暮らす親からの愛情を実感し、深い安心感や自己肯定感を持つための機会となります。
面会交流は、単に非監護親の子どもに対する気持ちを充足させる効果だけでなく、子どもの健全な育成のために重要といえるでしょう。 -
(4)監護親は正当な理由なく面会交流を拒否できない
先述のとおり、面会交流は、子ども利益のために行われるべきものです。
裁判所は、監護親は基本的には非監護親を子どもに会わせるべきで正当な理由なく面会交流を拒否することはできないとの姿勢を取っています。 -
(5)「子どもに会えないから養育費を支払わない」は認められない
なんらかの理由で子どもに会えないといって「養育費を支払わなくてよい」とはなりません。
離婚して親権を持てなかったとしても、親子である事実には変わりないためです。
離れて暮らす非監護親には、子どもが経済的に自立するまで生活に困らないよう養育費を支払う義務があります。
支払いが滞れば、強制執行され給与が差し押さえられる可能性もあるため、養育費はきちんと支払いましょう。
2、非監護親が子どもと会えない理由
離婚前にあらかじめ面会交流について取り決めを行っていても、その取り決めの内容どおりに面会交流が行われないケースも少なくありません。
以下では、非監護親が子どもに会えない理由について解説します。
-
(1)監護親との関係が良くない
なんらかの原因で夫婦の間でコミュニケーションが取れなくなってしまうと、面会交流をする具体的な日時を決められません。
また、子どもが小さい場合は、監護親の付き添いなしには非監護親に会いに行けないため、夫婦間の関係が険悪になったら面会交流の実施自体が難しくなってしまいます。
このように、監護親と非監護親の関係が良くないことから、別居した親が子どもに会えないケースがあるのです。 -
(2)監護親が子どもを会わせたがらない
監護親と非監護親との関係が良くない場合には、監護親が子どもを非監護親に会わせたがらない、ということもあります。
また、子ども側も同居する親権者の気持ちを推し量って、本当は非監護親に会いたいと思っているのに「会いたくない」と言ってしまう、というケースもあるのです。
このような場合には、子どもの真意を慎重に確かめることが必要です。 -
(3)子どもとスケジュールの都合がつかない
子どもが大きくなってくると、学校のクラブ活動や塾、習い事などで平日・休日問わず忙しくなります。
そうなると、子どもと非監護親とがスケジュールを合わせようと思っても、お互いになかなか都合がつかず、会えなくなってしまうことがあるのです。
子ども側に「忙しくて会うことは難しいけれど、非監護親と交流したい」という気持ちが残っているのなら、実際に合うのは年に数回にとどめながら、電話やメールや手紙などで交流を図るという方法もあります。 -
(4)祖父母が介入してくる
監護親と子どもが実家に帰った場合、子どもの祖父母が監護親に「相手に子どもを会わせないように」などとプレッシャーをかけてくるというケースがあります。
子どもも祖父母や看護親のことを気遣って、非監護親を敬遠するようになり、会うのが困難になってしまう場合もあります。
お問い合わせください。
3、子どもと会う方法
離婚後にも定期的に子どもと会い続けられるかどうかは、離婚するときに面会交流についても取り決めを行ったか否かによって、事情が大幅に異なってきます。
以下では、面会交流について取り決めをしていない場合と取り決めをしている場合それぞれの対応方法について解説します。
-
(1)取り決めをしていない場合は面会交流調停を行う
離婚時に面会交流について取り決めをしていない場合には、まずは家庭裁判所に面会交流調停を申し立てましょう。
家庭裁判所では調停委員を介して夫婦が話し合うほか、家庭裁判所調査官が学校や家庭を訪問して、子どもの意向を確認します。
面会交流の条件などについて合意ができれば、確定判決と同じ効果を持つ調停調書が作成されることになります。
調停を通じても話合いがまとまらなかった場合には審判に移行し、家庭裁判所が面会交流の方法を定めます。 -
(2)履行勧告を行う
離婚時に面会交流について調停や審判で取り決めを行っていたにもかかわらず、当事者の一方が正当な理由なく面会交流を拒否するような場合は、裁判所に履行勧告を申し出しましょう。
履行勧告には、特別な費用はかかりません。
また、裁判所が相手方に説得を行ってくれるため、自分から相手方に直接働きかける場合よりも、相手が対応してくれる可能性は高いといえます。
ただし、履行勧告には強制力がないため、相手方に無視される可能性もあるのです。 -
(3)再度調停を行う
調停は何度でも申し立てることができるため、相手方が約束を守らないようなら再度面会交流調停を申し立てて、約束事を決めなおす方法もあります。
面会交流のスケジュールや内容に無理があるようなら、非監護親と子ども双方にとって無理のないものに変更しましょう。
ただし、相手方が調停の期日に出席しなかったり、そもそも面会交流に応じなかったりする場合は、何度も調停を申し立ててもあまり意味がない可能性があります。 -
(4)間接強制を行う
相手方が履行勧告にも従わず、調停も不成立になるようであれば、間接強制(強制執行)を行うことができます。
間接強制とは、裁判所に「面会交流に応じない場合は、1回拒否するごとに○万円支払え」と相手方に命令してもらい、相手方に(面会交流の)義務の履行を促す手続きです。
ただし、相手方が子どもに会わせてくれないからといって必ず間接強制ができるわけではありません。
間接強制を行うためには、あらかじめ調停や審判で面会交流の日時や場所、受け渡し方法を細かく取り決めることで、「相手方が約束を守っていない」という事実が明白になるようにしておくことが必要になります。 -
(5)慰謝料(損害賠償)を請求する
調停や審判で面会交流について取り決めをしたにもかかわらず、子どもに会わせてもらえない場合には、相手方に精神的苦痛を理由として慰謝料(精神的苦痛に対する損害賠償金)を請求することができる場合があります。
慰謝料の金額は、「相手方が面会交流に一切応じなかった」「面会交流を長く行っていない」「正当な理由なく面会交流を拒否された」といった事情がある場合には高額になる傾向があります。
4、子どもとの面会交流が制限されるケース
いくら面会交流を子どものために実施すべきといっても、面会交流が常に認められるわけではありません。
面会交流はあくまで子どもの利益のために行われるべきなので、「面会交流をすると子どもの利益を害する」と判断される場合には、制限されてしまうのです。
-
(1)子どもを虐待するおそれがある場合
同居時に子どもを虐待したことがある場合、もしくは子どもを虐待するおそれのある場合には、面会交流が制限される可能性があります。
なお、実際には虐待の事実がないのに、監護親が非監護親を子どもに会わせないために「過去に子どもに対する虐待があった」と主張する可能性もあります。
そのため、監護親に医師の診断書や写真などの証拠の提出が求められたり、子どもに対して調査官による調査が行われたりすることもあります。 -
(2)子どもを連れ去る可能性がある場合
非監護親が、面会交流中に子どもをそのまま連れ去ってしまい、監護親のもとに返さないという可能性がある場合も、面会交流は制限されます。
子どもの養育環境が急激に変わってしまい、ショックで精神的に不安定になるなど、連れ去り行為は子どもにとって害を及ぼす可能性が高いためです。
ただし、面会交流の場に第三者が立ち会ったり、面会交流の場を「非監護親の自宅以外」などと制限したりすることにより連れ去りを防止できる場合は、制限する必要はないと判断される可能性もあります。 -
(3)子どもが「会いたくない」と言っている場合
子どもが非監護親に恐怖心を抱いているなどの理由から会うのを拒んでいる場合にも、子どもの利益が考慮されて、面会交流が難しくなってしまいます。
しかし、本当は会いたいのに監護親の気持ちに配慮してわざと「会いたくない」と言っていることも考えられるため、調査官が子どもの心情を慎重に調査して、子どもの真意を探る場合もあります。 -
(4)非監護親が監護親にDV・モラハラを行っていた場合
非監護親が監護親に対して繰り返し暴力をふるったり暴言を吐いたりしていた場合には、監護親が「相手方に会いたくない」として面会交流の実現が困難になります。
しかし、監護親にはDVをしていても子どもに対しては問題なく接していた場合には、子どもは非監護親に会いたいと思っていることもあるでしょう。
そのようなケースには、子どもの利益を基準に面会交流を行うかどうかが決定されたり、子どもの送迎を第三者が行うなどして面会交流が実現したりすることもあります。 -
(5)子どもが監護親の再婚相手と養子縁組した場合
子どもの監護親が再婚して、その再婚相手と子どもが養子縁組をした場合には、「養親との親子関係を構築している間は非監護親と会わせるべきではない」という考えられることもあります。
しかし、離婚したとはいえ、非監護親と子どもが親子であることには変わりありません。
したがって、特段に面会交流を制限する必要はないといえるでしょう。
ただし、このような場合にも、調査官の調査を通して子どもの真意が慎重に測られることがあります。
5、まとめ
非監護親にとっては、離婚後も子どもの成長を見守り続けるために、面会交流はぜひとも実現したいものであるはずです。
ベリーベスト法律事務所では「子どもに会いたい」という希望をかなえるため、離婚して親権を持てなかった方からの相談を承っております。
京都市内にご在住で面会交流や親権、その他の離婚に関するお悩みを抱えられている方は、まずは京都オフィスまでお気軽にご来所ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています