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台風で従業員を出社させるのは安全配慮義務違反? 罰則や留意すべき点とは?

2020年05月28日
  • 労働問題
  • 安全配慮義務違反
台風で従業員を出社させるのは安全配慮義務違反? 罰則や留意すべき点とは?

日本は災害大国であり、台風による河川の氾濫などで毎年のように甚大な被害が出ています。京都でも平成25年の台風18号で嵐山などが浸水の被害に遭ったことは記憶に新しいと思います。

企業の災害対応としては、最近はデパートや鉄道会社も計画運休をするなど、無理に業務を行わない流れになってきています。これは、会社には従業員に対する「安全配慮義務」があるからです。

安全配慮義務とは一体どのようなものなのでしょうか、また、それに違反した場合には罰則があるのかなどについて解説していきたいと思います。

1、安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、従業員が生命、身体などの安全を確保しつつ健康に働けるように企業が配慮することです。労働契約法の第5条に定められています。そのため、安全配慮義務を怠り従業員がケガなどをした場合、安全配慮義務違反として損害賠償請求される可能性があります。

なお、使用者は、従業員の身体に対する安全配慮はもちろん、従業員のメンタル面にも配慮しなければなりません。過重労働によってうつ病などになれば、会社の責任が問われる可能性があります。最近は「セクハラ」や「パワハラ」が問題になることも多いですが、従業員の精神面の健康を維持するという意味で、職場の人間関係や上司の対応についても会社には配慮する義務があります。

人間には相性があるので、会社が適切に配慮すれば、人間関係の問題をすべて排除できるというものではありません。しかし、少なくとも「セクハラ」や「パワハラ」は、研修などをすることで多少は減らすことができるはずです。さらには、厳しい処分をすると会社が宣言すれば、組織的に予防できる問題です。そのため、しっかりと対応をすることが求められます。

最近は「働き方改革」が叫ばれており、長時間労働をさせないことや休暇を積極的に取らせるようにする規制も厳しくなってきています。まずは、法令を順守し、従業員に適度なリフレッシュ環境を与えられるよう配慮することが求められます。

なお、安全配慮義務違反が問われるか否かは、「予見可能性」と「結果回避性」で判断されます。予見可能性とは、その結果について使用者が予見できたかどうかです。誰も予想できないようなことが起こった場合には、責任は問われません。結果回避性とは、その結果を使用者は回避することができたかどうかです。予見できたとしても、結果を回避することができないような場合には、責任は問われません。

2、安全配慮義務違反にあたるケースとは

  1. (1)業務による死亡

    業務中に従業員が死亡した場合、会社に安全配慮義務違反がなかったかが必ず問題になります。亡くなる原因としては、作業系の業務であれば、作業中の事故、自動車などの運転をする業務であれば交通事故、過重労働などによる病気や自殺などがあります。これらの結果に対して、会社はきちっとした安全配慮義務を履行していたのかが争点になります。

  2. (2)業務による病気やケガ

    工場の作業中の事故によるケガや、長時間労働で従業員がうつ病になってしまった場合などに適切な安全管理をしていないと認定されれば、安全配慮義務違反となる可能性があります。また、最近は長時間労働による脳や心臓疾患の発症で違反が問われることも増えています。その他、セクハラ、パワハラ、マタハラなどのハラスメントに対する世間の見方は厳しくなってきているので、ハラスメント対策をしていない場合にも同様に安全配慮義務違反を問われる可能性があります。

  3. (3)安全配慮義務違反の罰則

    安全配慮義務違反をした場合であっても労働法令に罰則規定はありません。そのため、使用者が罰則の適用を受けることはありません。しかし、死亡したような場合には、莫大な損害賠償請求がなされる可能性もあり、決して甘いというものではありません。

3、損害賠償請求が認められた裁判例

  1. (1)陸上自衛隊事件(最高裁昭和50年2月25日第三小法廷判決)

    【事案の概要】
    陸上自衛隊員Aは、自衛隊内の車両整備工場で車両整備中、後退してきたトラックにひかれて死亡しました。これに対し、Aの両親Xらは、国Yに対し、Yは使用者として、自衛隊員の服務につき、その生命に危険が生じないように注意し、人的物的環境を整備し、隊員の安全管理に万全を期すべき義務を負うにもかかわらず、これを怠ったとして、債務不履行に基づく損害賠償を求めて訴えをおこしたものです。

    【判決の要旨】
    国は、公務員に対し、国が公務遂行のために設置すべき場所、施設もしくは器具等の設置管理または公務員が国もしくは上司の指示のもとに遂行する公務の管理にあたって、公務員の生命および健康等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という)を負っているものと解すべきである。

    安全配慮義務の具体的内容は、公務員の職種、地位および安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであり、自衛隊員の場合にあっては、さらに当該勤務が通常の作業時、訓練時、防衛出動時、治安出動時または災害派遣時のいずれにおけるものであるか等によっても異なりうるべきものであるが、国が、いかなる場合においても公務員に対し安全配慮義務を負うものではないと解することはできない。

    なぜなら、安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入っていた当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方または双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められるべきものであって、国と公務員との間においても別異に解すべき論拠はなく、公務員が前記の義務を安んじて誠実に履行するためには、国が、公務員に対し安全配慮義務を負い、これを尽くすことが必要不可欠であり、また、国家公務員法93条ないし95条およびこれに基づく国家公務員災害補償法ならびに防衛庁職員給与法27条等の災害補償制度も国が公務員に対し安全配慮義務を負うことを当然の前提とし、この義務が尽くされたとしてもなお発生すべき公務災害に対処するために設けられたものと解されるからである。

  2. (2)川義事件(最高裁昭和59年4月10日第三小法廷判決)

    【事案の概要】
    宿直勤務中の従業員が盗賊に殺害された事例で、会社に安全配慮義務の違背に基づく損害賠償責任があるとされたものです。

    【判決の要旨】
    雇用契約は、労働者の労務提供と使用者の報酬支払をその基本内容とする双務有償契約であるが、通常の場合、労働者は、使用者の指定した場所に配置され、使用者の供給する設備、器具等を用いて労務の提供を行うものであるから、使用者は、右の報酬支払義務にとどまらず、労働者が労務提供のため設置する場所、設備もしくは器具等を使用しまたは使用者の指示のもとに労務を提供する過程において、労働者の生命および身体等を危険から保護するよう配慮すべき義務(以下「安全配慮義務」という)を負っているものと解するのが相当である。

    安全配慮義務の具体的内容は、労働者の職種、労務内容、労務提供場所等安全配慮義務が問題となる当該具体的状況等によって異なるべきものであることはいうまでもないが、これを本件の場合に即してみれば、上告会社は、A一人に対し昭和53年8月13日午前9時から24時間の宿直勤務を命じ、宿直勤務の場所を本件社屋内、就寝場所を同社屋一階商品陳列場と指示したのであるから、宿直勤務の場所である本件社屋内に、宿直勤務中に盗賊等が容易に侵入できないような物的設備を施し、かつ、万一盗賊が侵入した場合は盗賊から加えられるかもしれない危害を免れることができるような物的施設を設けるとともに、これら物的施設等を十分に整備することが困難であるときは、宿直員を増員するとか宿直員に対する安全教育を十分に行うなどし、もつて右物的施設等と相まって労働者たるAの生命、身体等に危険が及ばないように配慮する義務があったものと解すべきである。

4、安全配慮義務違反にならないよう「とるべき対策」とは

  1. (1)労働法令順守

    労働法令は、過去の事案をもとに事業者が最低限守るべきルールを定めたものです。法令を順守することは当然のことなのですが、実際には法令を守れていない事業所がたくさんあります。法令違反を続けていて、従業員がケガをしたり病気になったりしたら、義務を履行していたと反論することは非常に難しくなります。そのため、法令は必ず順守するようにしましょう。

  2. (2)労働時間の管理

    業種や業務内容にかかわらず、長時間労働は心身を疲れさせ、業務効率が悪いばかりか、事故や病気の原因にもなります。そのため、時間管理は徹底すべきです。労働基準法では、「1日8時間労働、1週間に40時間を労働時間の基準」としています。36協定を締結すれば時間外労働も認められますが、残業の限度時間が1か月45時間と決まっていますので、この時間を超えないようにしなければなりません。

  3. (3)健康診断

    労働安全衛生法(第66条)により、事業者は1年に1回、従業員に健康診断を受けさせる義務があります。特定の危険な業務に携わる従業員に対しては、配置転換時および6か月に1回の健康診断が義務付けられています。健康診断を実施することで、病気を早期に発見することができる可能性がありますので、必ず実施してください。

  4. (4)メンタルヘルス対策

    現代においては、メンタルヘルス対策の重要性が高まっています。長時間労働や人間関係に疲れて自殺する者も後を絶ちません。具体的には、カウンセラーなど相談窓口の設置、ストレスチェックの実施、職場環境改善のためのアンケートの実施などがあります。なお、2015年から、労働者が50名以上の全事業所で、ストレスチェックの実施が義務化されました。

  5. (5)安全衛生管理体制の整備

    安全衛生管理体制を整える方法としては、安全に対する管理監督者を選任し、安全のための指導を徹底することです。また、事故が起きた場合に備え、報告体制を構築しておくことが求められます。万が一事故が起きた場合には、必ず原因を究明し再発防止につなげていくことが求められます。

  6. (6)点検の徹底と安全装置の設置

    機械など物理的に危険な物については、点検整備を徹底し、場合によっては安全装置を付けることも有効です。たとえば、床をすべりやすいところに注意書きを貼ったり、物が落ちてこないよう囲いや仕切りなどを設置したりすることも有効です。

5、まとめ

今回は、会社の安全配慮義務について見てきましたが、安全配慮義務違反が認められると多額の損害賠償請求がなされる可能性があります。それは、会社にとって大きなリスクになりますので、充分な対策が必要です。

企業として安全配慮義務に関して対策を検討する際には、弁護士に相談することをおすすめします。外部の視点で見ることで、法律を順守できているかの確認もできるからです。

ベリーベスト法律事務所京都オフィスでは、安全配慮義務違反とならないためのご相談を受付けておりますので、労働関係の問題でお困りの際はお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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