解雇を言い渡された! 京都の弁護士が教える自己都合を要求されたときの対処法
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京都労働局の発表によると、平成29年度にあった個別労働関係紛争相談関係のうち、「自己都合退職」に関する相談は1709件に上ることがわかっています。
会社を辞める理由はさまざまですが、自己都合による退職か解雇等の会社都合による退職かは非常に重要な問題です。どちらになるかによって、転職活動での印象が変わります。また、退職後に支給される失業手当が発生する時期や金額にも影響が生じるので、離職票への記載内容などを事前に確認する必要があります。
中には、会社から解雇を言い渡されたのに、解雇ではなく自己都合による退職と処理をされてしまったとケースもあります。本コラムでは、会社都合による退職と自己都合による退職の違いについて、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、解雇と自己都合退職(自主退職)の違い
会社を辞める際の退職方法は、「解雇」か「自己都合退職」かの大きく2つに分類されます。
「解雇」とは会社が従業員を辞めさせることで、「自己都合退職」は自分の意思で退職するものです。実際に会社を辞めることになった経緯や原因によってどちらになるかが決まります。ここでは解雇と自己都合の内容についてそれぞれ解説します。
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(1)解雇とは
解雇とは雇っていた従業員を会社側(使用者)が一方的に辞めさせることです。一般的に「クビ」といわれる辞めさせ方のことです。
解雇に至る理由はさまざまですが、会社の業績不振による人員削減を目的としたものや、倒産により従業員を雇用するのが不可能になった場合などが該当します。会社が人員削減を目的として臨時的に準備した希望退職募集を利用して従業員が自ら退職を選択した場合でも、会社都合による退職になり、失業保険の受給に際して、解雇されたのと同じ扱いを受けることになります。また、従業員側に問題があり、会社が解雇を通達し辞めさせることもあります。 -
(2)自己都合退職とは
「自己都合退職」とは、自分の意思で会社を辞めることです。
退職する理由もまた、さまざまであるといえるでしょう。たとえば、より良い条件の会社へ転職する場合や、会社に不満があって退職する場合もあるでしょう。さらには、身内の介護のために継続して勤務できなくなったというケースもあるかもしれません。これらすべてが「自己都合退職」です。
自己都合による退職をする場合は、退職願を提出し、会社を辞める意向を伝えて退職手続きを行います。多くの企業では、入社したときに締結する「雇用契約書」で、退職の申し出の時期を退職日より1〜3ヶ月前にする旨の取り決めをしています。念のため、雇用契約書を確認してみるとよいでしょう。
2、会社が従業員を解雇できるケースは?
労働契約法第16条では、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上認められないような解雇については、無効にするという規定を設けています。したがって、企業が従業員を解雇する場合は合理的理由が求められます。主な解雇の種類は、以下の3つに分類されます。
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(1)普通解雇
普通解雇とは、「懲戒解雇」や「整理解雇」以外の一般的な解雇を指します。会社が普通解雇を行う場合、雇用契約や就業規則に定められている解雇理由に該当するかどうかが重要視されます。
解雇理由として非常に多いのが、従業員の能力不足です。従業員の能力が、会社が求める水準に著しく劣っている、何度注意しても同じ失敗を繰り返し、本人の成長がみられない場合などが該当しうるでしょう。
ただし、いくら労働者の能力が欠落しているからといっても突然の解雇は認められません。部署替えや研修を実施しても改善されないなどの相応の事情が必要です。そのほか、従業員の常習的な遅刻や欠勤、不正行為などを理由に普通解雇となる可能性もあります。 -
(2)懲戒解雇
懲戒解雇とは、労働者が会社の秩序を大きく乱したときなどに、労働者への罰として行う解雇です。懲戒解雇になる可能性がある行為は、労働者の長期間の無断欠勤や、業務上の犯罪行為や横領、企業のイメージや名誉を著しく傷つけた場合などに行われます。
ただし、会社が懲戒解雇を行うためには、まずは労働者に懲戒の内容を伝えて知らせておく必要があります。 -
(3)整理解雇
整理解雇とは、会社が人員を削減しなくてはならなくなった場合に行う解雇のことです。リストラと呼ばれることもあります。
人員削減の背景には、会社の業績不振や経営状況の悪化などがあります。整理解雇が認められるかどうかは、会社が解雇を行うにあたって相当な手続きをしたかどうかや、解雇を防ぐために会社側も最大限の努力を行ったかどうかが判断基準になります。
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3、「解雇」と「自己都合」それぞれのメリット・デメリット
会社都合による解雇と、自己都合による退職では、退職後の手当てなどが異なります。また転職時の印象にも影響を及ぼす可能性があるでしょう。それぞれのメリットとデメリットについて解説します。
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(1)「自己都合」の方が転職時に有利
会社を辞めて転職活動をする際、有利になるのは自己都合による退職です。
会社の解散や倒産などは、労働者側の問題ではないので防ぎようのないものです。しかし、解雇には懲戒解雇や普通解雇など、本人に問題があって解雇を言い渡されるケースもあります。そのため、解雇の場合は面接官の印象が低くなり、受かりにくくなってしまう可能性もあります。 -
(2)失業保険の給付期間は「会社都合」の方が優遇
会社で雇用保険に加入していた場合は、一定条件を満たせば退職後に失業給付を受けることができます。会社都合による解雇の場合は、自己都合による退職よりも早い段階で失業保険の給付が開始され、給付期間も長く設定されています。また、状況によっては、解雇予告手当てを会社から受け取れる可能性もあります。
4、会社都合なのに自己都合として退職届を求められたときの対処法
本当は会社側が解雇をしようとしているにもかかわらず、労働者の自己都合として退職の手続きをさせようとする悪質な会社があります。会社側が解雇を不当なものだと理解しつつ、労働者とのトラブルを防ぐために半ば強引に自己都合にさせるケースなどに行われるようです。
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(1)拒み続ける
会社は合理的な理由がなく、雇用している労働者を不当に解雇することはできません。そのため、会社が解雇通知をせずに、自己都合による退職に持ち込もうとしてきた場合は、拒み続けるという選択肢があります。
会社側は自己退職に持ち込みたいので、退職届を要求するかもしれません。しかし、そのような一方的な求めには応じず、「解雇理由証明書」の提出を会社側に要求しましょう。解雇理由証明書を労働者が求めた場合は、会社は発行を拒否できないことが法律で定められています。 -
(2)弁護士に相談する
会社が解雇通知をせず、自己都合として処理しようとした場合、弁護士に相談することは非常に効果的な手段のひとつです。弁護士に依頼することによって、解雇について適切なアドバイスを受けられるだけでなく、あなたの代理人として弁護士が解雇理由証明書の請求手続きを行います。弁護士であれば、あなた自身の代わりとなって会社と交渉できるのです。
個人対企業という力関係では、労働者の意見を主張しにくいケースが多々あります。そのような場合も弁護士が交渉ごとを代理してくれるので安心です。
5、まとめ
今回の記事でお伝えしてきたように、解雇か自己都合かによって、その後の手当てや転職活動に大きな影響を与えます。解雇の場合は、会社側が自己都合による退職に持ち込もうとするケースがあります。また、知らないうちに自己都合扱いとして会社が勝手に手続きをするような悪質なケースも考えられます。
会社からの不当な解雇でお悩みであれば、まずは早急にベリーベスト法律事務所・京都オフィスまでご相談ください。労働問題に関する知見が豊富な京都オフィスの弁護士が問題解決に向けてサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています