不当解雇による慰謝料請求をするなら知っておきたい相場について

2018年07月04日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • 不当解雇
  • 慰謝料
不当解雇による慰謝料請求をするなら知っておきたい相場について

ある日、突然、会社から解雇を言い渡されることがあります。
合理的な理由なく解雇された場合、解雇が不当であると争うだけでなく、会社に謝罪してほしい、賠償金を払ってほしいと考える方もいるでしょう。

そこで今回は、不当解雇で慰謝料を請求できる場合と慰謝料の相場、慰謝料の請求方法などを解説します。


労働問題を京都の弁護士に相談 労働問題を京都の弁護士に相談

1、そもそも不当解雇とは?

不当解雇とは、法律や判例上の解雇条件を満たしていない解雇、または就業規則などの規定や労働協約などの規定に則っていない解雇をいいます。

2、不当解雇の慰謝料の相場について

  1. (1)慰謝料請求ができる場合

    不当解雇された場合、使用者に対して解雇の無効を主張することができます。

    また、解雇によって精神的苦痛を受けたことを理由に、会社に慰謝料を請求したいと考える方もいらっしゃるでしょう。
    しかし、慰謝料は、不法行為による損害賠償の一種として認められるものです。
    したがって、不当解雇であれば常に慰謝料を請求できるわけではなく、解雇が会社側の不法行為といえるほどの強い違法性がある場合に、慰謝料請求が認められるのです。

  2. (2)慰謝料の相場

    慰謝料請求が認められる場合の具体的な慰謝料の額は、これまでの裁判例ではおおむね50~100万円とされることが多いようです。

    セクハラやパラハラを受け、それを抗議・拒否したことから不当解雇されたような場合など、会社側の違法性が強いほど、慰謝料が高額になりやすいといえます。

まずはお気軽に
お問い合わせください。
電話でのお問い合わせ
【通話無料】平日9:30~21:00/土日祝9:30~18:00
メールでのお問い合わせ一覧
営業時間外はメールでお問い合わせください。

3、不当解雇かどうか判断する基準について

解雇の条件は、解雇の種類によって異なります。
したがって、不当解雇かどうか判断する基準も、解雇の種類によって異なることになります。

  1. (1)普通解雇

    普通解雇とは、後で解説する懲戒解雇、整理解雇以外の解雇を総称したものをいいます。
    普通解雇は、次の条件を満たす必要があります。

    就業規則、労働協約、労働契約に定める解雇理由があること

    解雇予告または解雇予告手当を支払うこと
    使用者が労働者を解雇する場合、少なくとも30日前に予告するか、30日分の平均賃金(解雇予告手当)を支払わなければならないとされています。

    法令上の制限に反しないこと
    労働基準法その他の法令によって、様々な理由で解雇が制限されています。代表的なものは次のとおりです。

    • 業務上の負傷や疾病の療養のために休業する期間とその後30日間、産前産後の女性の休業の期間とその後30日間の解雇の禁止
    • 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇の禁止
    • 労働者が労働組合員であること、正当な組合活動をしたことを理由とする解雇の禁止。
    • 性別を理由とする解雇、女性労働者の結婚、妊娠、出産、産前産後の休業などを理由とする解雇の禁止
    • 育児休業・介護休業などの利用の申出をしたり、利用したりしたことを理由とする解雇の禁止


    解雇権の濫用にあたらないこと
    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利濫用として無効とされます。

  2. (2)懲戒解雇

    懲戒解雇とは、懲戒処分(従業員の企業秩序違反行為に対する懲罰)としての解雇をいいます。

    懲戒は、労働者の行為の性質、態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合、権利濫用として無効とされます。

    懲戒解雇は、懲戒のなかで最も重い処分ですから、単なる成績不良などでは懲戒解雇をすることはできません。
    懲戒解雇が有効と認められる具体例としては、従業員が刑法など刑罰法規に違反する行為をしたときや、職務に必要な資格を有していなかったなどの重大な経歴詐称、長期にわたる無断欠勤などが考えられます。

  3. (3)整理解雇

    整理解雇(いわゆるリストラ)は、もっぱら会社側の都合によるものですから、整理解雇を有効と認めるにはより厳しい要件が必要とされています。
    具体的には、次の4つの要件を満たさなければならないとされています。

    1. ①人員削減の必要性があること
    2. ②整理解雇を選択する必要性があること(新規採用の中止や早期退職の募集など、整理解雇を回避するための努力をしたこと)
    3. ③人選に合理性があること(客観的、合理的な基準で解雇の対象を選定したこと)
    4. ④手続の妥当性があること(労働者に対し、整理解雇の必要性、方法などを説明し、誠意をもって協議をすることなど)


4、不当解雇で会社に慰謝料を請求する手順

3、で解説したそれぞれの解雇の要件を満たさない場合、不当解雇にあたります。
不当解雇の疑いがある場合には、以下の手順に従って慰謝料請求をすればいいでしょう。

  1. (1)解雇理由証明書を入手する

    解雇理由証明書とは、使用者によって作成される解雇の理由を記載した文書のことです。
    労働者が、退職の事由(解雇の場合は理由を含む)について証明書を請求した場合、使用者はこれを交付しなければならないとされています。

    不当解雇を争う場合、使用者から、解雇ではなく合意退職であると主張されることや、当初の説明と異なる解雇理由が主張されることが少なくありません。

    そのような事態を防ぐため、早期に会社から解雇理由証明書を入手しておくことが重要になるのです。

  2. (2)解雇理由を検討する

    入手した解雇理由証明書に基づき、解雇理由を検討し、解雇の要件を満たすか(不当解雇にあたるか)、慰謝料を請求できるほどの違法性が認められるかを検討します。
    慰謝料請求が認められる可能性が高いと判断される場合には、(3)以下の具体的な請求手続に移行します。

  3. (3)使用者と任意で交渉する

    慰謝料を請求する場合、まずは会社に内容証明郵便を送付するのが一般的です。
    この請求に対し、会社から何らかの回答があれば、会社と任意の交渉をします。

  4. (4)裁判所の手続を利用する

    会社が交渉の席に着こうとしない場合や任意の交渉をしたが合意に至らない場合、裁判所の手続を利用することで、慰謝料の支払いを実現させる方法が考えられます。
    裁判所の手続には、労働審判と労働訴訟があります。

    ①労働審判
    労働審判は、個別の労働紛争を迅速かつ適切に解決するために作られた制度です。
    労働審判は、労働審判官(裁判官)1名と、労働審判員2名の合計3名が担当します。
    公平を期すため、労働審判員は使用者側、労働者側それぞれの立場から1名ずつ選ばれることになっており、使用者、労働者双方の事情を考慮した解決が図られています。
    そのため、話し合いがまとまり、調停が成立して事件が終結することが多いとされています。
    話し合いがまとまらない場合には、労働審判委員会が一定の判断(審判)をしますが、原則として期日は3回以内とされていることから、迅速な解決が期待できます。

    ②労働訴訟
    労働審判に対しては異議を申し立てることができます。
    異議の申し立てがあった場合、労働審判は自動的に労働訴訟に移行します。
    労働審判に比べると、労働訴訟は手続が複雑になり、期日の回数制限もないので長期化しやすい傾向があります。
    また、口頭ではなく書面による主張、証拠の提出がより厳格に求められるので、知識のない労働者自身が対応するのは難しくなります。
    遅くとも労働訴訟の段階では弁護士に依頼をすることが望ましいといえます。

5、不当解雇の慰謝料以外に請求可能なお金について

慰謝料の相場や請求方法などを解説しましたが、手間暇のわりに支払われる慰謝料が少ないと感じた方も多いのではないでしょうか。
また、弁護士に依頼をした場合には、慰謝料が支払われたとしても弁護士費用を差し引くと手元にはほとんど残らない(最悪の場合、赤字になってしまう)こともあり得ないとは言えません。
そこで、慰謝料以外に会社に請求できるお金がないかを考える必要があります。

  1. (1)解雇予告手当をもらう

    3、(1)で解説したとおり、法律上、普通解雇の場合は解雇予告手当を支払わなければならないとされています。
    これが支払われていない場合には、慰謝料請求にあわせて解雇予告手当を請求することが考えられます。

  2. (2)賃金を請求する

    不当解雇は、解雇が無効であるということです。
    解雇が無効であるとすれば、労働者は会社の従業員の地位を失っていないということになります。
    そこで、解雇の無効を争い、それが認められた場合には、争っている期間の賃金を請求することができます。
    会社からみれば、労働者が実際にはその会社で働いていないのに賃金を払わなければならないということで、訴訟などで争いが長期化すれば、数百万円になることもありえます。

    そのため、実際には復職する気がなくても、復職を前提に慰謝料と未払賃金を請求し、退職してほしいと考えている会社から慰謝料の増額などの譲歩を引き出すという方法も考えられます。

  3. (3)逸失利益を請求する

    不当解雇を主張する場合でも、復職を希望されている方ばかりではありません。
    不当解雇をするような会社では働きなくない、あるいは家族の生活があるので早期に別の仕事を見つける必要があるなど、退職を前提に考える方もいらっしゃいます。

    退職を前提とする場合、(2)の賃金を請求することはできません。
    しかし、逸失利益(不当な解雇がなければ将来得られたであろう利益)を請求することはできます。
    解雇がなければ得られた利益とは、賃金に相当する利益ですが、問題はどの程度の期間の逸失利益が認められるかです。
    一般的には、再就職に必要な相当期間ということになると考えられます。

  4. (4)退職金の差額を請求する

    不当解雇によって、本来支払われるべき退職金が支払われなかったり、減額されたりした場合、その差額を請求することが考えられます。

    ただし、退職金の差額を請求することは、退職を受け入れたことを前提とする行為です。
    ですから、復職を希望する場合には、最初から退職金の差額を請求してはいけません。

6、まとめ

不当解雇について解説しましたが、参考になったでしょうか。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、不当解雇を含む労働問題の取扱実績の豊富な弁護士が、お客様の状況に合わせた最善の解決を目指します。
不当解雇の問題でお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスにお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています