女性が警備員をするのは危険? 労働者が注意すべき点を解説
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警備員というと男性の仕事というイメージを持たれる方も多いと思いますが、最近では女性の警備員も増えています。警備の仕事には女性でなければ対応できないものも多いため、女性警備員は重宝されているのです。
しかし、警備員は危険が伴う仕事です。とくに女性の警備員は、不審者に絡まれたりケガを負ったりするなどのリスクが高くなってしまいます。また、男性の多い職場であるために、セクハラやパワハラなどのハラスメントにも注意が必要になります。
本コラムでは、女性が警備員をすることの危険性や女性警備員として働く方が注意すべきポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、女性の警備員が求められている理由
まず、女性の警備員の需要がますます増えている理由から解説します。
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(1)女性専用の場所でも巡回警備ができる
男性と異なり、女性の警備員であれば、女性専用の場所の巡回警備をすることができます。
たとえば、女子トイレ、女子更衣室、授乳室など女性しか立ち入ることができない場所に男性警備員が立ち入ると、巡回警備のためであっても利用者は不安に感じてしまいます。
このような不安を払拭するためには、女性警備員の存在が不可欠です。 -
(2)優しく親しみやすい対応ができる
警備員という仕事の性質上、男性の警備員には体格がよく大柄な人が多くいます。
そのため、男性の警備員に対して「強面で話しかけづらい」というイメージを持たれる方も多くいます。
しかし、女性であれば、男性警備員よりも物腰の柔らかいイメージがあるため、話しかけやすく安心感が抱けます。 -
(3)企業のイメージアップにつながる
民間企業では女性の社会進出が進んでいるため、「女性を積極的に採用する企業である」というイメージが定着すれば、企業のイメージアップにつながります。
警備員というと男性が多いというイメージが強いために、警備会社にとって女性警備員を積極的に採用することはとくにイメージアップにつながりやすいといえるのです。
2、女性が警備員をすることは危険?
以下では、女性が警備員をすることのリスクについて解説します。
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(1)女性であることを理由に酔っ払いやクレーマーに絡まれる危険がある
酔っ払いやクレーマーには、自分よりも強い人に対しては弱気であるのに女性や高齢者など弱い立場にある人に対しては強気な態度に出ることが多い、という傾向があります。
そのため、女性の警備員は、男性に比べて、酔っ払いやクレーマーの対応をした際に大声で怒鳴られたり理不尽な言いがかりを付けられたりする危険性が高いでしょう。 -
(2)力や体力が劣るため男性の不審者を相手にするとケガの危険が高い
男性と女性を比べると、一般的に、女性のほうが力や体力に劣ってしまいます。
不審者が体格のよい若い男性であった場合には、女性警備員だけでは対応できないこともあるでしょう。
また、無理に対応しようとしてもみ合いになった際にケガをする危険性も高いといえます。 -
(3)交通警備の仕事では男女関係なく危険性が高い
交通警備は、女性・男性を問わずリスクが高い業務です。
交通ルールを無視した車にはねられるなどしてケガをするおそれが存在するためです。
いずれにせよ、女性警備員は、男性警備員に比べてケガなどのリスクが高いといえます。
警備員の職種を選択する際には、案内・誘導業務や女性専用施設を中心とした施設警備など、よりリスクの少ない業務を選択することも検討しましょう。
お問い合わせください。
3、警備中にケガなどをしてしまった場合の手続き
以下では、警備中にケガなどをしてしまった場合に受けられる補償の種類や、補償を受け取るための手続きについて解説します。
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(1)仕事中のケガであれば労災保険による補償が受けられる
警備員は仕事中にケガをしやすい仕事といえますが、仕事中の出来事が原因となってケガをした場合には、労働基準監督署長による労災認定を受けることにより、労災保険による補償を受けることができます。
これにより、ケガをした場合の治療費やケガで仕事を休んでいる間の給料が補償されるほか、障害が残った場合にも補償を受けることができます。
具体的には、以下のような補償を労災保険から受けることができるのです。- 療養(補償)給付
- 休業(補償)給付
- 障害(補償)給付
- 傷病(補償)年金
- 遺族(補償)給付
- 介護(補償)給付
- 葬祭料(葬祭給付)
なお、労災保険が適用される労働者には、正社員以外にもアルバイトやパート、契約社員などの非正規労働者も含まれます。
そのため、アルバイトで警備員の仕事をしている方も、正社員と同様に労災保険からの補償を受けることができるのです。 -
(2)労災申請の流れ
労災保険からの補償を受ける場合には、以下のような手続きが必要になります。
① 会社に労災が発生した旨の報告
労災が発生した場合には、まずは労働者から会社に対してその旨の報告を行います。
それを受けた会社は、労働基準監督署に「労働者死傷病報告」を提出します。
② 労災指定医療機関を受診してケガの治療を行う
労災によりケガをした労働者は、ケガの治療のため病院を受診します。
その際には、労災指定医療機関を受診することをおすすめします。
労災指定医療機関であれば、窓口での医療費の負担なく無償で診察や治療を受けることができます。
他方、労災指定医療機関以外でも労災によるケガの治療は可能ですが、一旦被災労働者が窓口で医療費の支払いをしなければなりません。
ただし、後日申請することで、支払った治療費については還付を受けることができます。
③ 労働基準監督署に労災申請書類を提出
労災保険給付を受けるためには、労働基準監督署に労災申請書類の提出が必要になります。これは、会社を通じて提出することも、労働者が直接提出することもできます。
提出すべき書類は請求する補償内容によって異なってくるため、労働基準監督署の窓口で確認してみましょう。
④ 労働基準監督署による調査・給付決定
労災申請がなされると、労働基準監督署では、被災労働者や会社への聞き取り調査を実施します。
調査した内容をふまえたうえで、労災給付の要件に該当すると認められる場合には、労災保険の給付決定がなされます。
4、セクハラやパワハラにも要注意
女性警備員が増えてきているとはいえ、警備員の仕事は男性が多い職場であることには変わりありません。
女性の社会進出が進んではいますが、依然として女性蔑視の考え方が根付いている職場では、女性に対するセクハラやパワハラといったハラスメントが行われる可能性がある点にも注意が必要です。
このようなハラスメント被害については、適切な防止措置をとることが、パワハラ防止法や男女雇用機会均等保によって事業主に対して義務付けられています。
もし、職場でハラスメント被害に遭ってしまったという場合には、まずは、職場のハラスメント対応窓口で相談してみるとよいでしょう。
また、職場に適切な窓口がない場合や相談しても対応してもらえないという場合には、弁護士に相談することを検討してください。
5、会社に問題があったら弁護士に相談
会社には、労働者が安全かつ健康に労働することができるよう配慮する義務(安全配慮義務)があります。女性警備員に対して危険が及ぶ職場であるにもかかわらず、会社側が人員配置や安全対策を怠った場合には、会社の安全配慮義務違反が認められる可能性があります。
労災によるケガは、労災保険によって補償を受けることができますが、それだけでは十分な補償とはならない場合もあり、会社に安全配慮義務違反が認められる場合には、会社に対して慰謝料等の損害賠償を請求することができる場合があります。
会社が安全配慮義務に違反していたと思われる場合には、弁護士に相談したうえで、会社に対して損害賠償を請求することを検討しましょう。
また、「酔っ払いに絡まれたから配置転換の要望をした無視された」「セクハラ対策をしてくれない」など、会社の対応に問題がある場合にも、弁護士に相談してください。
弁護士が労働者の代理人となって会社と交渉をすることにより、職場環境を改善できる可能性があります。
6、まとめ
女性の社会進出が進んでおり、警備業界でも女性警備員が増えてきています。
また、女性専用スペースの巡回警備など、女性警備員でなければ対応できない業務も数多くあります。
そのため、女性警備員の需要は今後も増えていくでしょう。
警備員は、酔っ払いやクレーマーなどに絡まれるリスクがあり、ケガをしてしまう可能性も高い仕事です。
とくに女性の場合は、さまざまなトラブルに遭遇する可能性が男性よりも高いといえます。
仕事中のケガについては労災保険による補償の対象になりますが、会社にも責任があるという場合には会社に対して損害賠償を請求することもできます。
損害賠償を請求する際には、専門家である弁護士に相談してサポートを受けることをおすすめします。
また、会社がセクハラやパワハラを防止するための措置を取ってくれない、配置転換の要望を聞いてくれない、といった労働問題が起こった際にも、弁護士に相談すれば適切な対処をとることができます。
警備員として働かれている女性で、仕事に関する問題でお悩みの方は、まずはベリーベスト法律事務所までお気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています