交通事故の被害に遭ってしまったら…… 症状固定や後遺障害ついて解説
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ここ京都は四季を通じて常に多くの観光客でにぎわっています。その一方、観光客が増えすぎるオーバーツーリズムも問題になっていますね。行列を避けるためや、良い写真を撮るために車道にはみ出している観光客を見ると、事故が起きてケガをしないか心配せずにはいられません。
交通事故に遭って負傷したとき、加害者がいる事故であれば、被害者は加害者に対して必要になった治療費などの損害を請求することができます。ケガが治るまでは治療費の請求できるのが原則なのです。ただ、ケガをして治療を続けていても、なかなか治らないケースもあります。そんなとき、ケガが治るまでずっと加害者に治療費を請求できるわけではありません。どこかで区切りをつけることになるのですが、その区切りのタイミングが「症状固定」といわれるものです。
今回は、この「症状固定」についてベリーベスト法律事務所・京都オフィスの弁護士が解説します。
1、「症状固定」とは?
「症状固定」とは、ケガの治療に区切りをつけるタイミングです。では、その区切りのタイミングはいつなのでしょう。
それは、一般に、ケガの治療を続けてもそれ以上良くもならないし、治療をやめたとしてもそれ以上悪くならない時期に来たとき、言い換えると症状が一進一退になったときと考えられています。
弁護士らしく専門的な言葉を使うと、「①医学上一般に承認された治療方法をもってしてもその効果が期待し得ない状態(療養の終了)で、かつ、②残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態に達したとき」が症状固定のタイミングです。
どうしてそのタイミングなのかというと、症状が良くも悪くもならない状態に達すると、以降の治療はしてもしなくても効果がないわけです。効果がない治療は、ケガの治療のために必要な治療とはみなされません。言い換えれば、意味のない治療ということになるのです。意味のない治療をすることは、被害者の被害回復のために必要なこととはいえません。そうすると、そのタイミング以降の治療費は、事故によって生じた損害とは考えられず、その損害は事故と因果関係のないものと考えられてしまうのです。
専門的な定義に書いたとおり、症状が最終の段階に達したときが症状固定です。そうすると、客観的に治療の効果がなくなったときに直ちに症状固定になるのではなく、最終の段階に達したかどうかを見極める経過観察の期間も必要でしょうから、その経過観察の期間も含めて通院が必要だったと考えることもできるでしょう。
このように区切りをつける背景には、交通事故を起こしケガの被害を生じさせたとしても、加害者がケガの治療についていつまでも責任を負うこととすると、加害者にとって酷になりすぎることがあるという価値判断があるものと思われます。
症状が残っているのであれば、「症状固定」の段階でどのような症状が残っているのかを評価して、その症状の重さに応じ、将来分の損害として、いわゆる後遺障害の損害額を算定して加害者に負担させ、その代わりにそれ以上いつまでも加害者に治療費を負担させることを避けるという運用がされているのです。
2、症状固定は誰が決める?
では、この「症状固定」のタイミングを誰が判断するのでしょうか。上述のとおり、症状固定は、治療の効果がなくなったタイミングです。
治療の効果があるかないかは、主治医が一番よく分かっているはずなので、「症状固定」のタイミングを判断するのは、主治医ということになります。
しかし、この考えは必ずしも正解ではありません。なぜなら、「症状固定」は、加害者の賠償範囲に区切りをつけるためのものですので、厳密に言うと、「症状固定」とは、加害者の法律上の責任を画する法的概念なのです。「症状固定」が法的概念である以上、最終的な判断権者は、裁判所であると考えることになるのです。
そのため、仮に、事故から1年間治療を続けても症状が良くならず、主治医がまだまだ治療を続ける必要があると言っていても、法的にみたとき、加害者が被害者への補償の責任を負うべきと考えられる期間はせいぜい半年であると裁判所が判断すれば、半年後が「症状固定」であるとされてしまうのです。
3、症状固定と判断されたらどうなる?
症状固定と判断されたら、それはどういう意味を持つのでしょうか。
ひとつは、加害者や保険会社に対し、原則としてそれ以降の治療費の請求ができなくなります。同様に、病院に行くための交通費もそれ以降は請求できません。また、慰謝料の算定も症状固定を区切りにして、それまでの治療期間や通院回数をもとに算定することになります。
すなわち、被害者にしてみれば、症状固定時期が先になればなるほど、加害者に請求できる金銭が大きくなるのです。
次に、症状固定となると、それ以降の治療費などを請求できない代わりに、そのときの症状の程度を評価して、どのような後遺障害があるのかを評価してもらうことになります。つまり、後遺障害とは、症状固定のときにどの程度の症状が残っているのかの評価であり、その程度は、後遺障害等級で表されることになります。その等級は、1級がもっとも重く、症状の程度に応じ、14等級まで細かく類型化されています。症状が残っていたら必ず後遺障害等級が認定されるのではなく、後遺障害に該当しないという判断がされることもあります。
そして、後遺障害等級が認定されると、その等級に応じて、症状固定以後の将来分の損害額を算定することができるようになるのです。
4、後遺障害が認定されるとどうなるの?
後遺症が残ったことに対する精神的苦痛を補償するのが、「後遺症慰謝料」という費目です。また、後遺症が残ると、将来の被害者の稼働能力にマイナスの影響が生じます。このマイナスは、被害者の損害と考えられますので、加害者はこれを補償しなければなりません。この損害は、「(後遺障害)逸失利益」と呼ばれています。
この、「後遺障害慰謝料」と「(後遺障害)逸失利益」は、後遺症の程度、すなわち後遺障害等級の高低によって、その金額の高低が定まることになるのです。
5、後遺障害の認定手続きは?
このように、ある程度の期間治療を続けても治らず、症状固定と判断されたとき、残った症状を後遺障害として、適切な等級を認定してもらう必要があります。
では、この後遺障害の等級認定の手続きはどのようなものなのでしょうか。
後遺障害等級は、症状固定時に残った症状の程度によって決まります。どの程度の症状が残っているのか、主治医に「後遺障害診断書」というものを書いてもらって証明することになります。
もっとも、後遺障害を認めるか認めないか、また、その等級が何級なのかを判断するのは主治医ではありません。主治医はあくまで症状固定時に残存した症状を診断書に記載するだけです。そして、医師が作成した後遺障害診断書に記載された症状をもとに、自賠責損害調査事務所という機関が、後遺障害の有無や等級を審査し、結論を出すのです。
通常であれば、症状固定と判断されたときに症状が残っていれば、この後遺障害の申請の手続きを保険会社から勧められます。しかし、時には後遺障害の認定手続きがあることを保険会社が教えてくれず、症状が残っているにもかかわらず、後遺障害の申請の手続きをしないままの方もいますので、そのようなことにならないよう、症状が残っているのであれば後遺障害の申請をしたいと保険会社に伝えるようにしてください。
6、後遺障害の手続きには種類があります
また、後遺障害の申請手続きには、「事前認定」という加害者の加入する保険会社が主導してする手続きと、被害者側が主導してする「被害者請求」という手続きがあります。
後遺障害の申請は、賠償額に大きく影響する重要な手続きです。私たちは、この重要な手続きを、相手方である保険会社に任せるのではなく、被害者請求の方法ですることを勧めています。
というのも、後遺障害の申請手続きで適切な準備ができていないと、本来認定されるべき後遺障害等級が認定されないことがあるのですが、そうならないよう、相手方当事者である保険会社に手続きをゆだねるのではなく、被害者側で申請手続きをコントロールすることで、より適切な後遺障害等級の認定を得られるようにすべきなのです。
申請手続きをコントロールするといっても、一般の方は何をしなければならないかを知らないことが多いでしょう。そんなときは、交通事故案件の経験が豊富な弁護士に依頼してください。そのような弁護士であれば、どのように申請手続きをすれば適切な後遺障害等級の認定を受けることができるのか、十分に把握できているのです。
7、まとめ
今回は、「症状固定」という概念を中心に解説しました。少し複雑でわかりにくいこともあったかも知れません。
もし事故に遭ってしまったら、そのあとどのように治療をしていくべきなのか、いつ症状固定になるのかなど、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。交通事故の経験が豊富な弁護士であれば、このような難しいこともわかりやすく説明してくれるでしょう。
弁護士に相談するというと高い費用を取られそうというイメージがあるかもしれませんが、ベリーベスト法律事務所は初回相談料、着手金は無料で対応しています。また、弁護士費用特約が付いている方であれば、弁護士費用特約から相談料と着手金、報酬金などを頂戴しますので、ご相談者さまご自身の負担はありません。
交通事故の被害に遭われてしまい、お困りの方は当事務所・京都オフィスまでまずはお気軽にご相談ください。
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