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遺産分割における特別代理人の役割とは? 選任の手続きと流れを解説

2021年04月15日
  • 遺産分割協議
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遺産分割における特別代理人の役割とは? 選任の手続きと流れを解説

令和元年の京都府における相続の申告実績は2万7028人となっており、課税価格の合計は3519億円となっています。

夫が若くして亡くなり、子どもがまだ小さい場合でも、配偶者である「妻」と「子ども」が相続人になります。親権者として法定代理人である妻が子どもの代理をすると思われがちですが、この場合、子どもの「特別代理人」を選任する必要があります。

なぜ、特別代理人を選任しなければならないのでしょうか。また、特別代理人を選任するとしても、どのような手続きが必要なのでしょうか。

今回は、遺産分割における「特別代理人」の役割と、その選任手続きの進め方などについて解説します。

1、特別代理人とは

親権者と未成年の子どもが相続を行う場合には、利益相反行為にあたり、「特別代理人」を選任する必要があります

「利益相反行為」とは、Aさんが、Bさんの代理人などの立場を有する場合に、Aさん本人の利益とBさんの利益とがぶつかってしまうような行為をさします。

これだけではピンとこないと思いますので具体例を挙げますと、相続をする際に子どもが未成年以下である場合、遺産分割行為を法定代理人である親が単独で行うとします。この場合、親の相続分が増えれば子どもの相続分は減り、子どもの相続分が増えれば親の相続分が減るといった利益の衝突が生じます。

すなわち、母親が子どもの代理で遺産分割協議を行う場合、母親が母親自身の取り分と、子どもの取り分を母親の「さじ加減」で決めることになります。こうしたケースでは、母親が母親自身に有利な行為をするつもりがなかったとしても、「利益相反行為」として、特別代理人を選任しなければならないとされているのです。

2、遺産分割において特別代理人が必要となるケース

● 未成年と配偶者が相続するケース
夫が亡くなり2000万円の遺産があるケースにおいて、1歳の子どもと配偶者が相続する場合を考えてみましょう。

1歳の子どもと妻は、法定相続分ではそれぞれ2分の1なので、遺言がなければ1000万円ずつに分割するのが原則となります。しかし、遺産分割協議では、法定相続分に関わらず自由に相続分を決めることができます。

この場合、子どもの代理人として2000万円の全額について妻に相続させる、という内容の遺産分割協書を作成して、全額を配偶者が取得することもあり得ます。

保護者に未成年の代理人を認めると、子どもの取り分が確保されない相続内容となってしまう可能性が出ます。親と子どもが共に相続人となっているような場合に、親がどれだけ公平に分けようとしていたとしてもその意向に関わらず、子どもの利益を守り公平性を確保できているかを確認するために、「特別代理人」が選任されるのです。

● 複数の子どもがいる配偶者が相続放棄をした場合は?
夫が亡くなり、複数の未成年の子どもたちに財産を残すため、その配偶者が相続放棄をしたというケースを考えてみましょう。

相続放棄によって、配偶者は相続を受けるつもりはなく、子どもとの間で、「利益相反」が発生しないようにも思われます。

しかし、配偶者が子どもすべての代理人になると、子どもたちの間で利益相反が発生する可能性があります。たとえば、親の「えこひいき」によって、一部の子どもに対して多く相続させる可能性は否定できませんし、親の決めた分け方が客観的に見て公平公正であるとも限りません。したがって、親が相続放棄をしていても、子どもが複数いて、その間での配分が問題になり得るような場合には、「えこひいき」をするつもりがあろうとなかろうと、公平性の確保のため、特別代理人の選任が必要です。

3、特別代理人選任の手続き

特別代理人を選任するための手続きの流れは、次のとおりです。

  1. (1)申し立て

    特別代理人を選任するためには、子どもの住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。申し立てを行うことができるのは、親権者または利害関係人になります。

    費用は、①収入印紙800円(子ども一人につき)、②連絡用の郵便切手代(裁判所により異なります。)です。

    申し立てに必要な書類は、①特別代理人選任申立書、②未成年者の戸籍謄本、③親権者の戸籍謄本、④特別代理人候補者の住民票、⑤利益相反に関する資料(遺産分割協議書案など)です。

    特別代理人選任申立書には、申立人の氏名、住所、生年月日、職業、未成年者との関係を記入します。次に未成年者の氏名、住所、生年月日、職業又は在校名、申し立ての理由と特別代理人候補者の氏名、住所、生年月日、職業、未成年者との関係を書きます。

    特別代理人には特に資格はなく、未成年の子どもと利害関係にない叔父や叔母などの親族にする例も少なくありません。司法書士や弁護士などの専門家に依頼することも可能です。

    利益相反に関する資料である「遺産分割協議案」では、相続財産について、誰がどのような割合で引き継ぐかを記載する必要があります。その場合、財産の範囲がわかる資料などが必要になります。預金は残高証明書や通帳の写し、不動産であれば登記簿謄本などです。

    利益相反の相当性の判断は特別代理人が行うべきものなので、未成年者保護の観点から不相当であると判断される場合には、遺産分割協議書案の内容どおりに成立させる必要はありません

    特別代理人は、その権限の行使につき善管注意義務(善良なる管理者の注意義務)を負う以上、被相続人の遺産を調査するなどして、当該遺産分割協議案の相当性を判断する注意義務があります。したがって、特別代理人が漫然と未成年者に不利な遺産分割協議を成立させた場合などには、不法行為に基づく損害賠償責任を負うことがあります。

  2. (2)審理・問い合わせ

    管轄の家庭裁判所に特別代理人申立書と必要書類を提出すると、審理が始まります。

    審理では、未成年者に不利になっていないかが審査されます。未成年者に法定相続分を下回る配分しかなされない場合には、合理的な説明が必要になります。裁判所から疑義が述べられた場合、その問い合わせに対する理由を書く必要があります。

  3. (3)審判・通知

    裁判官が審理の結果問題ないと判断した場合には、特別代理人を選任し、特別代理人選任審判書が送付されます。

    申し立てから審判結果が通知されるまで、約1か月から3か月程度かかります

4、未成年者が相続人となる場合の注意点

  1. (1)胎児がいる場合

    胎児の段階では権利能力(権利・義務の主体になりうる地位)はないので、本来、相続権は発生しないのですが、民法第886条で、例外的に「胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす」と規定しています。生まれる直前に親が亡くなった場合、時期が遅いだけで相続権が認められないのは、不平等と考えられるからです。

    なお、判例は生きて生まれることを条件とするとの見解なので、母体から全部露出した段階で生きていれば相続権が発生します。また、死産の場合には相続権が発生せず、子どもはいなかったものとして遺産分割を行います。

    このように、胎児がいる場合、その出生までは誰が相続人になるかという相続人の範囲が確定しません。そのため、生まれるまでは遺産分割協議は行わないのが一般的です。

    ただ、その場合でも相続税が発生する場合は、被相続人の死亡を知った日から10か月以内に申告する必要があるので注意が必要です。無事生まれた場合には、やはり親と利益相反となるので、特別代理人の選任が必要になります。

  2. (2)未成年者がいる場合の遺産分割協議

    未成年者がいる場合の遺産分割協議は、特別代理人が代理をしますが、遺産分割協議案は特別代理人が選任される前に作られるので、その内容が問題になることがあります。

    法定相続分以上の財産が未成年者に分配されるには問題ありませんが、未成年者が法定相続分よりも少ない場合には、今後かかるであろう子どもの養育費や学費などを差し引いた、などの合理的な理由が必要になります

  3. (3)相続放棄をする場合

    未成年者を含む法定相続人全員が相続放棄をする場合には、特別代理人を選任する必要はありません
    親も子どもも相続放棄しているので、子どもと利益相反とはならないからです。他方、親は相続を受け、子どもは相続放棄するというのは、利益相反となるので、特別代理人の選任が必要になります。

  4. (4)特別代理人の適性

    特別代理人に特別必要とされる資格はありませんが、相続財産について利害のない人を選ぶ必要があります。間接的にでも特別代理人に利益が入る可能性がある場合には、選任されません。また、財産の内容を知られても差し支えないという関係性であることも選ぶポイントの一つになります。

    家庭裁判所からの問い合わせに答える必要もあるので、社会人として適切な対応ができる人を選定する必要もあります。手続きは必ずしも深い法的知識や交渉が必要となるものではありませんが、自信がないという場合には、弁護士に特別代理人になってもらうのもひとつの方法です。

5、まとめ

遺産分割において特別代理人が必要となるケース、特別代理人選任の手続き、未成年者が相続人となる場合の注意点などについて解説してきました。

ほとんどの分野で、自分の子どもの代理人になれると思っている方も多いと思いますが、相続において、未成年者がいる場合は特別代理人の選任が必要になります。

特別代理人の選任が必要か分からないなど、相続について相談したいという場合には、弁護士への相談がスムーズです。ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、相続に関わる手続き全般について、他士業とも連携しながらワンストップで法務サービスを提供しておりますので、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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