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死後事務委任契約とは? 死後誰にも迷惑をかけたくない場合の生前対策

2024年01月11日
  • 遺産を残す方
  • 死後事務委任契約
死後事務委任契約とは? 死後誰にも迷惑をかけたくない場合の生前対策

京都府の統計によると、令和4年における京都府内の死亡数は3万1489人であり、出生数(1万5068人)を1万人以上上回りました。

「自分が世を去った後の身辺整理は、前もって信頼できる人に任せておきたい」と望む方は多いでしょう。その場合には、「死後事務委任契約」を活用することができます。死後事務委任契約を締結すると、必要な死後事務を選択して依頼することが可能になり、身寄りがない方でも死後事務を任せられるのです。

本コラムでは、死後事務委任契約を利用した生前対策について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。

1、死後事務とは?

亡くなった後の身辺整理全般に関する事務を、総称して「死後事務」といいます。

ある人が亡くなったときには、葬儀や埋葬、各種届け出・遺品整理・住居の撤収・債務の支払いなど、さまざまな事務処理が発生します。

しかし、本人はすでに亡くなっているために、これらの事務を自ら行うことはできません。一番わかりやすいのは「葬儀」でしょう。葬儀は人の死にともなう手続きの最たるものですが、亡くなった本人は、当然ながら自分でこれを行うことができません。

そこで、死後事務を本人の代わりに行ってくれる人が必要となるのです。

2、死後事務委任契約とは?

死後事務委任契約を締結すれば、生前の段階で信頼できる人を指名して、死後事務をあらかじめ依頼しておくことができます
死後事務委任契約を遺言などと併用することで、より万全な生前対策を実施することができるのです。

  1. (1)死後事務を信頼できる人に委託するために生前締結する契約

    「死後事務委任契約」とは、その文字通り、死後事務の委任を内容とする契約のことです。

    亡くなった方に身寄りがない場合や、信頼できる親族がいない場合には、死後事務がきちんと行われないおそれがあります。
    また、仮に信頼できる親族がいるとしても、その親族に何の伝言もせずに亡くなってしまった場合には、身辺整理のために何をしてよいかわからず、戸惑ってしまうことになりかねません。

    生前に死後事務委任契約を締結して、死後事務の内容を特定して信頼できる人に依頼しておけば、死後事務が円滑に執り行われることが期待できるのです。

  2. (2)依頼できる事務の内容

    死後事務として委任できる事務手続きの内容は多岐にわたります。
    具体的な例は、以下の通りです。

    • 官公庁や金融機関などへの各種届け出
    • 葬儀(通夜、告別式、火葬、納骨、埋葬などのすべてを含む)の実施
    • 遺品整理
    • 医療費や老人ホーム等の施設利用料、家賃など各種費用の精算
    • インターネット上のアカウントの整理(SNSなど)
    • 電子機器に保存された情報の削除処理
    • 親族への連絡
    • ペットの世話の依頼 など
  3. (3)死後事務委任契約と遺言の違いは?

    死後事務委任契約は、遺言と並んで、本人の死後に備えた生前対策として位置づけられます。

    しかし、死後事務委任契約と遺言は、以下のような点で異なっているのです。

    ① 「契約」であるか「単独行為」であるか
    死後事務委任契約は、委任者と受任者の両者が合意によって締結する「契約」です。
    これに対して、遺言は、遺言者の「単独行為」とされます。

    ② 要式性の有無
    死後事務委任契約の締結方式にルールはなく、口頭によっても契約が成立します(実際には、後述のとおり、公正証書化しておくべきでしょう)。
    これに対して遺言の場合は、原則として「自筆証書遺言」「公正証書遺言」「秘密証書遺言」のいずれかの方式により、民法のルールに沿って作成する必要があります。

    ③ 対象事項
    遺言の記載の中で法的拘束力を有するものは、財産に関する事項のみです。
    これに対して死後事務委任契約では、幅広い死後事務を委任対象とすることができます。
    ただし後述するように、財産に関する事項を委任することについては一定の制約があるため、注意が必要です。


    上記のうち、両者で対象事項が異なる点については、特に注意する必要があります。
    たとえば財産に関する事項は遺言、それ以外の事項は死後事務委任契約で定めるなど、両者を併用することが有効でしょう。

3、死後事務委任契約を締結する際の流れ

死後事務委任契約を締結する際には、死後事務の内容を検討した後に、公正証書などの方式によって契約書を作成するという流れになります。

  1. (1)委任する死後事務の内容を検討する

    身辺整理の際に委任が必要となる死後事務は、亡くなる方の状況によって異なります。

    たとえば金融機関への届け出を行う場合には、口座がどこにあるのかを把握したうえで、すべての金融機関で手続きを行わなければなりません。
    また、遺品は処分してよいのか、それとも誰かに引き継いでもらいたいのかなど、本人の希望を踏まえて死後事務を設計する必要があります。

    死後事務委任契約を締結する際には、死後事務の内容や方針について、事前の検討を十分に行っておくことが重要になるのです

  2. (2)死後事務委任契約書を作成する|公正証書が確実

    死後事務の内容が固まったら、その内容を死後事務委任契約書にまとめて、委任者と受任者の間で締結することになります。

    契約書の内容で死後事務委任契約が行われたことを公に証明し、かつ契約書の紛失等を防ぐために、公証役場で公正証書を作成することをおすすめいたします。
    公正証書の作成手続きについては、弁護士に相談すればアドバイスを受けることができます

4、死後事務委任契約のメリットと注意点

死後事務委任契約には、生前に死後の身辺整理を準備する「終活」としてのメリットが多数存在しております。
その一方で、契約にあたっては、契約内容を十分に吟味する必要があります。

実際に死後事務委任契約を締結するかどうかは、契約することによるメリットと契約にかかる労力を総合的に比較したうえで判断するとよいでしょう。

  1. (1)メリット①|親族が身辺整理を行う手間が省ける

    死後事務委任契約を締結して、信頼できる人に死後事務を委任しておけば、それ以外の親族が身辺整理をする必要はなくなります。
    また、親族の中から死後事務の受任者を選ぶ場合でも、死後事務の内容を明確化しておくことで、スムーズに身辺整理へと取りかかることができるようになるのです。

    このように、死後事務委任契約を締結することで、できるだけ親族に迷惑をかけずに身辺整理ができるようになるのです

  2. (2)メリット②|故人の意思に沿った形で身辺整理が行われる

    死後事務委任契約では、身辺整理の方針についても規定しておくことができます。

    特に葬儀・遺品整理・インターネットアカウントの整理などについては、それぞれの人の事情によって、どのような方針で対応するかが大きく異なってきます。
    こうした事務については、死後事務委任契約で方針を定めておくことにより、故人の意思に沿った形で身辺整理をしてもらうことが可能になります。

  3. (3)メリット③|死後事務の把握漏れがない

    死後事務委任契約を締結する際には、対応が必要となる死後事務をリストアップしたうえで、それらを契約書に規定することになります。

    契約書を作成する際には、委任者である本人委任者もその内容を確認することになります。したがって、本人しかわからない事柄も含めて、死後事務の把握漏れがないというメリットがあるのです。

  4. (4)メリット④|身寄りがなくても死後の身辺整理が可能

    死後事務委任契約の受任者は、親族以外の第三者から選んでも問題ありません。

    たとえば、弁護士(あるいは行政書士・司法書士)などの専門家を受任者として死後事務委任契約を締結すれば、身寄りがない方でも身辺整理を行ってもらうことが可能になるのです

    なお、ベリーベスト法律事務所では、介護施設、訪問看護、クリーンサービス(生前整理・遺品整理)、葬儀、エンゼルケア(湯灌・メイク)等を必要とされている方に向けて、介護事業者や葬儀社のご紹介をすることもできます。

  5. (5)注意点|法的有効性について慎重な検討が必要

    死後事務委任契約には、上記の通り多くのメリットがある一方で、法的有効性を十分に吟味して締結しないと、死後、亡くなった人の希望通りの手続きが行われないおそれがあります。
    具体的には、以下の3点について、法律的な検討を事前に行うことが必要になるのです。

    ① 財産処分の委託は法的有効性に疑義あり
    財産の処分については、本来は遺言によって対処されるべき事柄です。
    死後事務委任契約によって、財産処分に関する代理権を無制限に認めてしまうと、遺言に高度の様式性を要求する法の趣旨が骨抜きにされてしまうおそれがあります。
    そのため、死後事務委任契約による財産処分の委託については、一定の制限を設けるべきという法的見解が存在しているのです。

    ② 委任者の死亡によって契約が終了するおそれがある
    委任契約は、委任者の死亡によって終了することが原則とされます(民法第653条第1項)。
    同項は任意規定であり、契約の定めにより排除できる、すなわち、委任者の死亡によっても契約を終了させない合意が存在すれば、この合意は有効である、という考え方が一般的です(最高裁平成4年9月22日判決など)。
    したがって、必ず、契約条項にこのような合意を入れておく必要があります。

    ③ 委任者の相続人によって、契約が解除されるおそれがある
    委任者はいつでも死後事務委任契約を解除できるため(民法第651条第1項)、相続人が介助犬を相続したとして、死後ジム委任契約を解除してしまう恐れはないのでしょうか。
    この点、特段の事情がない限り、委任者の地位の承継者からの解除を認めないとした東京高裁の裁判例はありますが、確立した見解とはいえません。
    そこで、相続人が解除権をあらかじめ放棄することを契約に盛り込むなどの配慮が必要となるでしょう。


    現状の実務は、死後事務委任契約の法的有効性を認める方向で動いています。
    しかし、解釈の余地がある側面も存在することが実情です。
    したがって、弁護士に相談して、法律面に関する検討を事前に行っておくことが重要になるのです

5、まとめ

死後事務委任契約を活用すれば、親族に迷惑をかけることなく身辺整理を行えるほか、身寄りのない方でも、信頼できる人物に身辺整理を任せることが可能になります。

「終活」としての生前対策を万全に行うためにも、遺言や家族信託などと併用して、死後事務委任契約を締結することを、ぜひ検討してください。

ベリーベスト法律事務所では、死後事務委任契約の締結に関するご相談を承っております。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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