介護をしてきた嫁の相続権は? 寄与分の権利者と特別寄与料について弁護士が解説

2019年10月28日
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介護をしてきた嫁の相続権は? 寄与分の権利者と特別寄与料について弁護士が解説

高齢化が進み、嫁が義父母の介護をしているという家庭も多く見られます。しかし、どんなに献身的に面倒をみたとしても、残念ながら義父母の遺産は「嫁」には相続されません。
これには、不公平だと思われる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、嫁には寄与分の権利があるのか、寄与分の条件・相続分の計算方法とともに、平成30年度民法改正により新たに創設された「特別寄与料の請求権」について、ベリーベスト法律事務所・京都オフィスの弁護士が解説します。


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1、寄与分とは?

寄与分とは「共同相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者」に対して相続財産を分配する制度です。民法904条の2により定められています。

  1. (1)寄与分の決め方

    被相続人が亡くなると、相続人の間で遺産を共有している「共同相続」の状態となります。
    その後、相続人全員で遺産分割協議を行い、同意が得られれば寄与分が認められます。分配については、被相続人への貢献などを鑑みて決められます。

  2. (2)寄与分が認められる条件

    寄与分が認められるには、下記の条件を満たす必要があります。

    ●無償性
    原則、寄与の行為が無償で行われる必要があります。そのため、被相続人から生活費や報酬等を受けている場合は、寄与が認められないことがあります。

    ●継続性
    寄与の行為が、おおむね2~3年にわたって行われている必要があります。ただし、ケースにより判断が異なる場合もあります。

    ●専従性
    家業への貢献を臨時や片手間で行っている場合、寄与行為として認められません。ただし、場合によっては他の業務を行っていたとしても、専従性の要件を満たすこともあります。

    ●その他の条件
    その他にも、相続開始時までの寄与であることや、相続人間で寄与の貢献度が明らかに異なることが条件となります。

  3. (3)寄与が認められるケース

    では、どのような場合に寄与分が認められるのでしょうか。ケースごとに解説します。

    ●家業従事型
    長男が被相続人の家業を手伝っていた場合などを指します。被相続人の事業に対して、無報酬またはそれに近い報酬で従事した際に寄与が認められます。

    ●療養看護型
    被相続人の在宅介護を長年行っていた場合などを指します。病院などに入院しておらず、医療費などの支出を免れていた場合に認められます。

    ●金銭等出資型
    被相続人の子どもが、被相続人の介護施設への入居費用を負担した場合などを指します。また、財産などを提供した場合も該当します。

    ●扶養型
    被相続人を扶養し、それによって被相続人の財産の維持が認められた場合などを指します。条件としては、被相続人に扶養の必要性があることや、身分関係において通常期待される範囲を超える貢献であることが挙げられます。

    ●財産管理型
    被相続人の所有している不動産の管理や清掃を継続的に行っていた場合などを指します。建物の管理や清掃を行っていた代わりに、無償でその不動産に居住していた場合は認められません。

2、寄与分の権利者

寄与分の権利者として認められているのは、被相続人の法定相続人です。被相続人の配偶者(夫または妻)、直系卑属(子や孫)、直系尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹(またはおい・めい)が法定相続人にあたります。
法定相続人にあたらない場合であったとしても、「被相続人の親族(配偶者・6親等内の血族・3親等内の姻族)は、「特別寄与者」となります。被相続人の長男の嫁なども、特別寄与者に該当します。特別寄与者には寄与分が認められていませんが、平成30年の民法改正により、特別寄与料を請求する権利が認められました。

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3、寄与分がある場合の相続分の計算

次に、寄与分が認められた場合の相続分の計算方法について説明しましょう。
まず、相続財産から寄与分を控除し、みなし相続財産を算出します。これを法定相続分にしたがって分配した後に、寄与分を上乗せします。

具体的な例をあげて計算してみましょう。
1500万円の相続財産を、被相続人の子である法定相続人A・B・Cの3人でわけることとします。このうち、Aに300万の寄与分が認められている場合、計算方法は以下のようになります。

  • 1500万円(遺産)-300万円(寄与分)=1200万円(みなし相続財産)
  • みなし相続財産を分割し、寄与分がある場合は上乗せする。
  • A…1200万×3分の1+300万(寄与分)=700万円
  • B…1200万×3分の1=400万円
  • C…1200万×3分の1=400万円

4、相続人以外が特別寄与料を請求するには

前述の通り、これまでは被相続人の長男の嫁など、法定相続人以外には寄与分が認められていませんでした。そのため、法定相続人以外が遺産相続を希望する場合には、被相続人の養子にしたり遺言書で遺贈したりという対策がとられていました。
しかし、平成30年の民法改正により「特別寄与料請求権」が創設され、令和元年7月1日からは特別寄与者も財産を請求できるようになったのです。

  1. (1)特別寄与料の決め方

    特別寄与料を受け取るには、寄与分同様に被相続人への貢献について条件を満たしていなければなりません。請求が認定されると、相続人による遺産分割協議で具体的な金額が話し合われます。全員の了承を得られれば、決定した特別寄与料を受け取ることができます。

  2. (2)特別寄与料を請求するためにしておくべきこと

    ただし、特別寄与料を認めてもらうためには、どれだけ被相続人に貢献していたがわかる判断材料が必要となります。相続人とのトラブルを回避するためにも、介護日記や出費のわかる領収書などを残しておくと良いでしょう。判断材料となるものが手元にないという場合は、弁護士などに相談することをおすすめします。

5、まとめ

民法改正によって、寄与分が認められていなかった親族にも特別寄与料の請求権が与えられ、不平等さが改善されつつあります。介護などで長年被相続人に貢献してきた息子の嫁など、新たに特別寄与料の請求を検討される方も増えていくでしょう。請求金額の算出方法は個々のケースによって複雑です。ご自身のケースが特別寄与の条件に該当するのかお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所・京都オフィスの弁護士にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています