大麻初犯で子どもが逮捕!? 未成年の処罰内容と親が知っておきたい逮捕後の影響
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平成30年10月、京都府警は中学3年の男子生徒を大麻取締法違反で逮捕しました。任意で事情を聞いている中で本人が乾燥大麻を提出して容疑を認めたと報道されています。
京都府警の調査によれば、平成29年中に大麻事犯で検挙された人数は112人で、そのうち19人が少年だったと発表されています。未成年が薬物犯罪に手を染めるケースは決して少なくありません。自分の子どもが大麻に関わり逮捕されてしまったとき、どのような罰を受けるのか、これからどうなってしまうのか、心配でたまらないでしょう。
今回は、未成年の子どもが大麻取締法違反で逮捕されたケースを想定し、処罰や逮捕後の流れ、懸念される影響と対処法を、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、大麻事犯の概要と罰則
大麻とは、大麻草およびその製品を指します。覚せい剤や麻薬とは別のものですが、幻覚症状を引き起こすことや依存性が高いことなどは知られているとおりです。そこで、大麻取締法によって規制を受けています。
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(1)大麻は合法?
「大麻は合法」と誤解している人がいますが、都道府県知事が発行する免許を受けた取扱者,大麻栽培者,大麻研究者でない限り、大麻の所持、栽培、譲渡・譲受、輸出入などは一切禁止されています。
ただし「使用」は禁止されていません。これは、使用だけでは大麻のどの部分が体内に入ったのかが明らかではないためです。大麻草の中でも成熟した茎や種には、幻覚症状などを引き起こす成分が含まれていません。したがって、大麻取締法でも規制の対象外としています。また、自然界や特定の業務中に意図せず大麻成分を吸入してしまうこともありえます。そこで、たとえ体内から大麻成分が検出されても故意とは断定できないと考えられています。
ただし、通常であれば体内から大麻成分が検出されることはありません。したがって、使用が判明すれば所持の嫌疑を免れることはできないでしょう。所持品検査や捜索などによって、所持に結びつけば逮捕される可能性があります。 -
(2)未成年が大麻に手を出してしまう理由
未成年の場合、学校や遊び仲間など、狭い範囲のコミュニティで活動しがちです。友人や先輩から誘われ、「仲間外れになりたくない」「憧れの人から嫌われたくない」などの思いから、断れずに大麻に手を出してしまうケースが多いようです。
平成26年から危険ドラッグ規制が強化されたことにより、若者を中心に大麻回帰の流れが進んでいることも理由のひとつと考えられています。 -
(3)大麻取締法違反の刑罰
大麻取締法違反で取り締まりを受け、有罪になったときは、次の刑罰を受けます。
- 所持、譲渡・譲受……5年以下の懲役
- 営利目的の所持、譲渡・譲受……7年以下の懲役、情状によって200万円以下の罰金を併科
- 栽培、輸出入……7年以下の懲役
- 営利目的の栽培、輸出入……10年以下の懲役、情状によって300万円以下の罰金を併科
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(4)初犯の場合の量刑は?
初犯の場合、個人使用目的の単純な所持であれば、懲役1年程度に執行猶予3年がつくケースがほとんどと考えられます。栽培や輸出入に関しても、初犯かつ個人使用目的であれば、懲役1~2年に執行猶予3~4年が目安となるでしょう。
ただし、初犯であっても営利目的の場合は量刑が重くなります。販売目的で所持していたケースは社会への悪影響が甚大であるため、執行猶予はつかず実刑判決になることがほとんどです。初犯でも、懲役3~6年に罰金150~200万円が併科される可能性が高まります。
2、未成年が逮捕されたあとはどうなる?
未成年でも14歳以上であれば刑事責任能力が生じ、逮捕されることがあります。14歳以上の未成年が逮捕されたあとの流れと、どのような処分を受けるのかを知っておきましょう。
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(1)逮捕後の流れ
たとえ少年でも逮捕されれば警察による取り調べを受けます。嫌疑が晴れないときは、逮捕から最長48時間以内に、警察へ送致されます。
検察では、送検から24時間以内に取り調べが行われ、引き続き身柄を拘束する必要があると判断すると、裁判所に「勾留(こうりゅう)」を請求します。勾留が認められれば、20日間勾留されることもあります。
未成年の場合は、刑事収容施設の状況や逮捕された未成年者の個性などから総合的に判断し、少年鑑別所で勾留、もしくは勾留に代わる観護措置が行われることもあるでしょう。
勾留、もしくは観護措置を受けている間は、少年であっても取り調べを受けます。もし大麻所持が認められれば、事件は家庭裁判所に送致されます。 -
(2)未成年の処分内容は?
成人が大麻を所持した結果逮捕されたときは、警察や検察で取り調べを受けたあと、刑事裁判で処罰が科されることになります。しかし、未成年の子どもには処罰を与えることよりも、非行性を矯正し更生を図ることが必要だと考えられています。
そこで、罪を犯したことが明らかなとき、家庭裁判所の判断を経て「少年審判」を受けることになります。少年審判は非公開で行われ、本人のプライバシーが保護されます。
少年審判によって、次のいずれかの処分が決定されます。
- 保護観察処分……保護司などによる生活指導のもと、家庭内での更生を目指します。
- 更生施設への送致……児童自立支援施設、児童養護施設、少年院などの施設内で更生を図ります。
- 知事または児童相談所長送致……18歳未満で児童福祉法による措置が妥当だと判断されると児童福祉施設に送られます。
- 検察官送致……殺人などの重大事件では検察官に送られて刑事裁判を受けることがあります。
- 不処分……犯罪が認められない場合や処分の必要がないと判断されると不処分になります。
なお、教育的観点から少年審判の必要がないと判断されることもあります。これを審判不開始と呼び、逮捕された未成年者の身柄は釈放されます。
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(3)未成年の初犯だと処分が軽い?
未成年も初犯であることが処分内容に影響を与えます。初犯で単純な所持のケースであれば保護観察処分となり、日常生活に復帰できるケースは多々あります。
たとえば友人に悪ふざけで吸引させられたなど、本人に故意がなかった場合には審判不開始や不処分になるケースも考えられます。ただし、未成年でも営利目的や所持量が多い場合などには、処分が重くなるでしょう。
行為の様態や家庭内での更生が可能か否か、学校や家庭環境を含めて慎重に調査、判断されることになるのです。
お問い合わせください。
3、未成年の逮捕で懸念される3つの可能性
未成年が大麻所持で逮捕されても、原則、刑事罰を受けることも前科がつくこともありません。しかし、逮捕の影響は少なからずあるでしょう。逮捕後、特に懸念される3つの可能性と対処法を解説します。
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(1)周囲に知られる可能性
自宅に捜査員が出入りする様子などから近所に知られたり、家庭裁判所の調査段階で学校や会社に知られてしまったりする可能性があります。友人らから漏れ伝わる可能性もありますので、周囲に隠し通すことは難しいでしょう。
また、事件の実名報道については、未成年は年齢が配慮されて公にならないことがほとんどです。しかし、インターネット上、SNSなどで名前が拡散されてしまう可能性は否定できません。その場合は早急な対応が求められるでしょう。 -
(2)退学、解雇の可能性
退学や解雇については、学校や会社の判断に委ねられます。
公立中学校の場合は義務教育になるため退学扱いにはなりませんが、私立学校や高校生以上であれば退学の可能性も考えられます。大学生の場合、複数の大学の懲戒処分事項を見る限り、薬物犯罪は退学や停学、訓告の対象となっており、厳しい処分が予想されます。会社員も、会社規則に応じて解雇される可能性があります。
退学や解雇を避けるためには、初犯であること、本人の更生が見込めることなどを、学校や会社に対して説明し、厳しい処分をしないように働きかける必要があります。親だけの力では限界がありますので、弁護士などのサポートを受けることをおすすめします。
なお、逮捕されても早い段階で身柄を釈放されれば、学校や会社への影響を最小限に抑えることができます。まずは早期釈放を目指し、弁護士を通じて捜査機関への働きかけを行うことが大切です。 -
(3)再犯の可能性
薬物犯罪は再犯率が高いという特徴があります。大麻は別の薬物犯罪の入り口と言われることもあるため、さらに罰の重い薬物に手を出してしまう可能性もあるでしょう。薬物依存症になってしまう前に、できるだけ早い段階で自助グループや専門施設への入所なども検討する必要があるでしょう。
4、まとめ
今回は、未成年の子どもが大麻事件で逮捕された場合の処分や逮捕後の影響などを解説しました。逮捕されると長期間にわたって身柄を拘束され、厳しい取り調べを受けることがあります。未成年の子どもにとっては非常に負担が大きいはずです。親としては速やかに弁護士に相談し、今後の対応についてアドバイスを受けるとともに、子どもが起こした事件と真摯に向き合っていくことが求められます。
ベリーベスト法律事務所・京都オフィスの弁護士も全力でサポートいたします。未成年の子どもが大麻事件を起こしてお悩みの方、逮捕されてしまった子どもの将来への影響を最小限にしたいとお考えの方はまずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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