逮捕後に行われる身体検査ではなにをする? 拒否したとき起こること
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京都府警察が公開している統計によると、令和5年中に府警が検挙した刑法犯の人員は3857人でした。ここ数年は減少傾向にあったものの、昨年より421件増加しており、毎年3000人を超える人が刑法犯として検挙されている状況です。
また、刑法犯として検挙された人のなかには「逮捕」による身柄拘束を受けた人も含まれています。令和5年版の犯罪白書によると、全刑法犯のうち逮捕を伴った事件は34.3%でした。
ドラマなどでは、逮捕された人に厳しい取り調べがなされるだけでなく、「身体検査」がおこなわれる様子が描かれることもあります。本コラムでは、実際の司法における「身体検査」について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
1、警察による「身体検査」とは?
警察がおこなう活動のなかには、さまざまな場面で「身体検査」が登場します。
以下では、警察による身体検査について、目的ごとに解説いたします。
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(1)危険物を所持していないかの検査
街頭で警察官が声をかけて不審点などを尋ねる「職務質問」や、事情聴取・取り調べにおいては、刃物などの危険物を所持していないかを確認するための検査がおこなわれます。
これらは「衣服の上から触れて確認する」「ポケットやカバンの中身を開披させる」といったものにとどまりますが、広い意味での身体検査といえるでしょう。 -
(2)証拠品を捜す検査
職務質問や関係先の家宅捜索がおこなわれる際には、ポケットの中や衣服の下などに証拠品を隠していないか検査されることもあります。
たとえば、覚醒剤の所持が疑われる状況のなかで、どうしてもポケットの中身を開披しなかったため、証拠品を捜す「捜索」として身体検査を受ける、といったケースが典型的です。
ここでいう「身体検査」は捜査の一環としておこなわれるものであり、裁判官が発付した令状にもとづいた、強制力のある捜査手続きです。
逆に言えば、容疑が濃厚であり身体に証拠品を隠し持っていることが明らかでも、令状なしに身体検査することは許されていません。
たとえ実際に犯罪の証明へとつながる証拠品が出てきても、無令状の違法捜査によって得られた証拠品は証拠品としての能力が否定される可能性があります。 -
(3)逮捕後の手続きとしての検査
警察に逮捕されると、警察署の留置場へと収容されることになります。
留置場へ収容される際には、危険物の持ち込みを防ぎ、房内の安全を守るための手続きとして身体検査がおこなわれます。
収容の初めは、上着を脱いで下着姿での検査を受けるのが原則であり、必要に応じて下着の中も検査されます。そのため、恥ずかしい思いをされる方もおられるでしょう。
また、女性の場合も例外ではありません。
むしろ、女性は男性よりも身に着ける下着が多いため、徹底した検査がおこなわれます。
ただし、女性の被留置者の検査は、必ず女性警察官または女性の警察職員が担当するという規則があります。
2、身体検査を受けるタイミング
以下では、警察による身体検査はどのようなタイミングで実施されるのかについて解説します。
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(1)留置場への収容時に実施される
逮捕に伴う手続き上の身体検査が実施されるのは、留置場に収容されるときです。
警察に逮捕されると、まず警察署へと連行されたうえで取調室へと通されたのち、逮捕容疑について説明されたうえでその釈明を述べる機会として「弁解録取」がおこなわれます。
弁解録取の内容は「弁解録取書」という書類にまとめられます。「その事件を起こしたことに間違いはありません」と認めたり、あるいは「まったくの事実無根です」と否定したりといった主張が初めて書類にまとめられる、重要な手続きです。
さらに、弁解録取の段階は、「逮捕された人には弁護士を選任する権利がある」ということを伝える最初の機会でもあるため、ほかの手続きよりも優先しておこなわれます。
弁解録取が終了すると、留置場へと収容されます。
基本的には、このタイミングで身体検査がおこなわれることになります。 -
(2)そのほかのタイミングにおける身体検査
留置場へと収容される最初に身体検査を受けたあとも、取り調べなどの機会に留置場を出ると、用件を終えて留置場に戻る際に身体検査がおこなわれます。
「以前に検査を済ませているから」という理由で省略されることはありません。
ただし、初回のように衣服を脱ぐのではなく、全身を金属探知機で調べて危険物の持ち込みがないかを検査するだけの簡易的な検査となります。
なお、被疑者を逮捕した警察は、被疑者の資料として顔や全身の写真や指紋などの採取をおこないます。
これらはあくまでも警察の「捜査」側の資料採取を目的としているため、被留置者の安全を目的とする身体検査とは異なるものです。
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3、身体検査は拒否できる?
いくら事件を起こしてしまった立場であっても、「身体を調べられるのは嫌だ」と考える方は多いでしょう。
特に、無実であるのにあらぬ疑いをかけられてしまい逮捕されてしまった場合には、身体検査に対する抵抗感は多大なものとなるはずです。
以下では、警察による身体検査を拒否することができるかどうかについて、解説します。
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(1)手続きとしての身体検査は拒否できない
逮捕後、初めて留置場に収容される際の手続きとしておこなわれる身体検査は拒否できません。
留置場に収容される際の身体検査は「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」の第181条1項に留置担当者の権限として明記されています。
条文では「留置開始に際して、被留置者の『識別』のため必要な限度内で身体を検査できる」とされており、被留置者を身体的な特徴などで見分けるために必要な手続きとして認められているのです。
さらに「被留置者の留置に関する規則」の第7条には、留置場への収容にあたって、被留置者の身体に外傷や異常がないかを確認する義務が定められています。
身体検査は、留置場内の安全を守るため警察に与えられた権利であると同時に、被留置者に事故が起きないよう警察に課せられた義務でもあるのです。 -
(2)要望を述べることは可能
留置場に収容される際の手続きとしての身体検査は、拒否できません。
ただし、身体検査にあたって、要望を述べることは可能です。
たとえば、性同一性障害によって女性として自認している男性にとって、男性警察官による身体検査を受けることは許しがたい屈辱となるでしょう。
このようなケースでは、警察に対して「女性警察官による身体検査を希望する」と要望を述べることで、個人としての尊厳を損なわれない対応がなされる可能性があります。
ただし、要望を述べても必ず受け入れられるとは限りません。
たとえば、「身体をさらすのは恥ずかしいので衣服は脱ぎたくない」「昔、大きな事故に遭って傷跡があるので見られたくない」といった要望は、被留置者の識別や留置場内の安全確保という観点から容認されにくいでしょう。 -
(3)任意の検査は拒否できる
法律や規則によって定められている身体検査は拒否できませんが、任意の検査は拒否できます。
たとえば、街頭での職務質問における所持品検査や、取調室に入る際に「危険な物を持っていないか調べさせてほしい」と言われて衣服の上から触れられるといったケースは、任意の検査であるため、拒否できえます。
ただし、任意の検査だからといってむやみに拒否するばかりでは、かえって「罪を犯しているのではないか?」「危険物や禁制品を所持しているかもしれない」と疑いが濃くなってしまいます。
対応に悩んだら、その場から弁護士に電話をかけてアドバイスを求めることも検討してください。
4、逮捕後の身体検査や刑事手続きに不安があるなら弁護士に相談を!
逮捕後、留置場に収容される際に受ける身体検査やその後の刑事手続きに不安があるなら、弁護士に相談しましょう。
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(1)身体検査における不当な扱いへの抗議が可能
留置場への収容にあたっては、被留置者の識別や危険物の持ち込み防止という観点から、身体検査は避けられません。
ただし、身体検査を通じて個人の尊厳が不当におかされる事態があった場合には、正式に抗議することができます。
もし身体検査において不当な扱いがあった場合は、弁護士に相談して抗議を申し入れて、処遇の改善を求めましょう。
たとえ罪を犯したのが事実であるとしても、罪に対する償いは、刑事裁判を経た判決によってのみ決められるものです。
逮捕・勾留による身柄拘束は、被疑者の逃亡や証拠隠滅を防ぐための処分であり、制裁を目的として行われるものではありません。
したがって、身柄拘束において不当な扱いを受け入れる必要はないのです。 -
(2)違法捜査への抗議も可能
警察による身体検査がおこなわれるのは、留置場への収容時だけではありません。
職務質問や取り調べといったさまざまな捜査活動のなかでも、身体の検査がおこなわれます。
ただし、捜査の目的があったとしても、任意捜査の範囲を超える場合には裁判官が発付した令状が必要です。
逆に言えば、無令状の身体検査は、違法捜査である可能性が高いのです。
犯罪を証明する重要な証拠が違法捜査によって得られたものであれば、有罪の証拠にはならない可能性があります。
弁護士を通じて、抗議しましょう。
5、まとめ
事件を起こして警察に逮捕されると、留置場に収容される手続きの一環として「身体検査」がおこなわれます。
危険物の持ち込み防止や留置場内の安全確保といった目的があるため、身体検査の拒否は認められません。
しかし、身体検査を通じて個人としての権利や尊厳を不当におかされた場合には、弁護士を通じて抗議することができえます。
警察による身体検査や刑事手続きに不安を感じている方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、不当な身体検査や不法捜査に対する抗議も含めて、刑事手続きに関するさまざまな不安を解消します。
身柄拘束からの早期釈放や処分の軽減に向けたサポートも、ベリーベスト法律事務所にお任せください。
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