知っておきたい窃盗罪の基礎知識。逮捕要件や逮捕後の流れ、対処法とは?
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窃盗罪という言葉は、ニュースで耳にする機会も多く、非常にメジャーな犯罪であるといえるでしょう。数多くの伝統文化が集まる京都でも、工芸品や仏像が持ち去られる事件がたびたび起きています。このような行為は窃盗罪に該当する可能性が高く、実際に京都市内の老舗店で金属工芸品を盗んだ男が窃盗容疑で逮捕されています。
工芸品に限らず、傘や自転車など、自分の持ち物ではないものをその場から持ち去ったあと、「現行犯で逮捕されなかったから大丈夫だろう」と安易に考えて放置している……という経験はありませんか? 今後、思いもよらない事態に発展してしまうかもしれません。心当たりがある方は、今すぐ具体的な行動を起こす必要があるでしょう。
今回は、特に窃盗を犯した経験をお持ちの方が知っておくべき、窃盗罪の概要と逮捕後の流れ、対処法について弁護士が解説します。
1、窃盗罪とはどのような犯罪なのか
ほとんどの方が、「窃盗は悪いことだ」という認識があるはずです。しかし、窃盗罪といわれると、具体的にどのような犯罪を指していて、どのような罰則があるのかなど、詳細を説明することは、意外と難しいものです。まずは、窃盗罪の基礎知識を知っておきましょう。
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(1)窃盗罪の定義
窃盗は、刑法第235条において「人の財物を窃取する」ことで成立する犯罪と規定されています。
「人」は、いうまでもなく、「自分以外の人」、すなわち他人を指します。そして「財物」とは、お金や伝統工芸品、仏像、宝石など、形あるものだけにとどまらず、電気なども含まれます。さらに「窃取(せっしゅ)」は、持ち主の意志を無視して、自分や第三者が所有者であるかのように使用したり、保管場所を移転させたりすることを指します。
なお、窃盗罪には「故意(こい)」と「不法領得の意思(ふほうりょうとくのいし)」があることが、過去の判例では明言されています。ここで示す「故意」とは、他人のものを盗んでいるという認識と認容です。「不法領得の意思」とは、過去の判例で「権利者を排除して他人のものを自己の所有物としてその経済的用法に従いこれを利用処分する意思」と定義しています。
つまり、窃盗罪とは、他人が所有権を持つ財産的価値があるものを意図的に持ち去る、もしくは自分の所有物として扱い、一般的に利用されるように使おうとすることで問われる罪だということです。 -
(2)軽い気持ちでやっても窃盗罪? 具体例を紹介
窃盗罪は歴史的にも古くから設定されていて、日本の江戸時代においても重罪のひとつとして扱われてきました。現代においても侵入盗・自動車盗・ひったくり・スリを重要窃盗犯と定義し、捜査活動に力を入れています。
具体的には、以下のような行為が窃盗犯に問われることになります。- 店の陳列棚にある商品を盗む
- 人の荷物を持ち去る
- 人の乗り物や乗り物の部品を盗む
- 住居や事務所、車内を荒らして金銭を盗む
窃盗にはさまざまな手口があり、それによって犯罪意識の持ち方が異なることがあります。たとえば、スリや車上荒らしなどは、広く犯罪だと認識されています。しかし、その一方で、置いてある他人の傘や自転車を勝手に持ち去り使ってしまう行為については、罪悪感を抱かない方もいるようです。当然ながら、勝手に他人の傘や自転車を持ち去る行為も、窃盗に該当する行為です。
なお、本来は自分のものであっても、発見したからといって勝手に取り返してしまうと、状況によっては窃盗罪となることがある点には注意が必要です。これは、もともとあなたのものを盗んだ人物が、盗品であることを隠して譲渡していたり貸していたりするケースを想定されているためです。盗品であることを知らずに譲り受けたり借りたりしていた善意の第三者を守るための規定でもあります。もし、自分のものを別の場所で発見した場合は、警察に通報し、立ち会いしてもらったうえで所有者を確認してもらい、引き渡しすることをおすすめします。
2、窃盗罪の罰則と時効について
窃盗罪の罰則はどの程度なのか、ご存じでしょうか。また、窃盗の時効についても紹介します。
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(1)窃盗罪の罰則
窃盗罪の罰則は、「10年以下の懲役または50万円以下の罰金」です。懲役刑の場合は、1ヶ月から10年の範囲で言い渡されます。
なお、初犯の場合は不起訴処分や罰金刑で済むことが多い傾向がありますが、事件が悪質なケースでは初犯でも懲役刑が科せられることもあるでしょう。なお、被害者に暴行や脅迫を用いて窃盗を行った場合は、窃盗罪ではなく強盗罪に問われる可能性があり、その場合、さらに重い刑罰が用意されています。 -
(2)量刑は何によって変わるのか
窃盗罪の量刑は、損害の大きさや行為の悪質性などによって変わります。
たとえば、車やバイク、宝石などは高額なので被害が大きく、刑罰も重くなりやすいといえるでしょう。金額が小さくとも、複数回にわたり万引きを繰り返した、計画性が高い、組織的な犯行であるなどの場合は、悪質性が高いとみなされることがあります。
また、窃盗の際に住居侵入が伴った場合やものを壊してしまった場合は、窃盗罪の他に住居侵入罪、器物損壊罪にも問われるケースもあります。相手に暴行を加えてケガをさせてしまった場合は、強盗罪もしくは強盗致傷罪などが成立する可能性が高くなるでしょう。
複数の犯罪行為が伴った場合は、問われる罪が窃盗だけではなくなるため、刑罰も重くなる傾向があります。 -
(3)窃盗罪の時効は何年?
窃盗罪の公訴時効は、「犯行が終わったときから7年」と規定されています。公訴時効が成立すれば、検察は起訴できなくなります。
ただし、民事の損害賠償請求権や慰謝料請求権の消滅時効は、事件から20年経過するか、被害者が損害および加害者を知ったときから3年ですので、公訴時効経過後も損害賠償請求をされる可能性は残ります。
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3、窃盗罪で逮捕されたあとの流れ
窃盗罪で逮捕されたあとの一般的な流れと、少年事件のケースについて解説します。
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(1)逮捕されたあとの流れ
窃盗罪による逮捕後、警察は48時間以内に取り調べを行い、被疑者を検察へ送致するか否かを判断します。そして、検察は送致から24時間以内に再び捜査を行うとともに、裁判所に対して「勾留請求(こうりゅうせいきゅう)」をするかどうかを決定します。
勾留請求とは、引き続き身柄を拘束する必要がある場合の手続きのことです。請求が認められると、原則10日間、延長されればさらに10日間身柄を拘束されます。勾留期間が満了するまでに、起訴・不起訴処分が決定されます。 -
(2)少年事件の取り扱い
窃盗を犯したのが未成年であっても、14歳以上であれば逮捕される可能性があります。逮捕後の流れも基本的に成年と同じです。大きく異なるポイントは、勾留の代わりに少年鑑別所に送られることがある点と、事件が家庭裁判所に引き継がれる点です。
家庭裁判所では、犯罪事実の有無や少年の要保護性などを判断し、少年審判によって処分を決定します。少年審判では初犯で反省しているなど更生の可能性が認められれば、処分が軽くなる傾向があります。
もっとも、少年だからという理由で必ずしも処分が軽くなるわけではありません。非行の度合いが強い場合は少年院送致や検察への逆送などの処分がとられるケースもあります。
4、窃盗罪を犯してしまったときの対処法
窃盗罪を犯してしまい、逮捕される不安がある場合の対処法を紹介します。
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(1)被害者と示談をする
窃盗をした事実があるのなら、なによりも被害者との示談が重要です。警察の捜査が開始される前の示談であれば、被害者との示談によって事件化されず、逮捕を回避できるケースもあります。
逮捕されたあとでも、示談成立によって不起訴処分の獲得や量刑の軽減を目指せます。たとえば、万引きの初犯で被害額が小さい場合は、不起訴処分になるケースもあります。起訴されたとしても罰金刑や執行猶予つき判決を獲得すれば、日常生活への復帰が容易になります。 -
(2)弁護士に相談する
窃盗事件を起こしたあとは、できるだけ早いタイミングで弁護士に相談することが大切です。逮捕前から被害者との示談交渉を進めるだけでなく、実際に逮捕されたあとでも取り調べのアドバイスや早期釈放に向けた働きかけをしてもらうことができます。
起訴されて裁判になったとしても、事件の詳細を知っている弁護士に弁護を依頼することで、スムーズな弁護活動を受けることができるでしょう。
5、まとめ
今回は、窃盗罪の概要や逮捕後の流れ、今後の対処法などについて解説しました。
万が一、窃盗をしてしまったのであれば、罪を素直に認めて被害者との示談を成立させるなどの具体的な行動に移ることが大切です。初犯であったり、悪質性が低かったりと、一定の条件が整えば、逮捕回避や不起訴処分も十分に考えられます。
しかし、そのためには示談交渉や被害者への謝罪が必要不可欠です。自分ひとりで対応することは難しいといえるでしょう。できる限り弁護士を頼るようにして、早期解決を図ることをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所・京都オフィスに相談いただけば、弁護士が示談交渉や早期釈放に尽力します。窃盗罪の逮捕に不安をお持ちであれば、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています