わいせつ物頒布罪とは? 逮捕された場合に弁護士ができること
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わいせつな文章や画像などをネットで不特定多数に公開すると、「わいせつ物頒布罪」という罪で逮捕される可能性があります。しかし、この罪は何がわいせつ物になるのか、線引きが難しいものでもあります。
2014年に自身の女性器の3Dデータをネットに掲載してダウンロードさせた方がわいせつ物頒布罪で逮捕されましたが、本人はそれを芸術的な創作物であると主張し、裁判では無罪を主張しました。京都でも芸術活動をされている方は多数いらっしゃいますが、同様の事件に巻き込まれる可能性があるかもしれません。
もしわいせつ物頒布罪で逮捕されてしまった場合には、どのように解決すればいいのでしょうか。また、そもそものわいせつとはどういうものか、その定義についても考えてみたいと思います。
1、わいせつ物頒布罪の内容とわいせつの定義
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(1)わいせつ物頒布罪とは
わいせつ物頒布罪とは、刑法175条で定められている犯罪です。
1項では「わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者」と「電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者」には、2年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金もしくは科料に処し、または懲役おび罰金を併科すると規定されています。
この電磁的記録媒体とは、CDなどコンピューターによる情報処理によって記録するものを指します。有償かどうかは関係なく、不特定多数がわいせつ物を見たり確認できたりする状態にすることが罪に問われることになる犯罪です。
また、2項では「有償で頒布する目的で前項の物を所持し、又は同項の電磁的記録を保管した物」は、1項同様の刑罰が処されると規定されています。つまり、金銭的利益を得るためにわいせつ物を所持したり、頒布されたものを保管していたりする場合も罪に問われます。 -
(2)わいせつの定義
「わいせつ」とされる物は、最高裁判所の判例で「徒に性欲を興奮又は刺激せしめ且つ普通人の正常な性的羞恥心を害し善良な性的道徳義観念に反する」ものとされています。しかし、この定義はあいまいで判断基準が難しく、問題とされることも多くあります。
わいせつ性の判断は、一般社会の良識・社会通念を基準として行われ、文書や画像などを全体的に判断するとされています。よって、著者や作者が主観的にわいせつ物と思っていなかったり、実際に購読している者がわいせつ物と思っていない場合でもわいせつ物と判断される可能性があります。
有罪となった判例として、「チャタレー」事件があります。イギリスの作家D・H・ローレンスの作品である「チャタレー夫人の恋人」を日本語に訳した作家と出版元の社長などが、わいせつ物頒布として罪に問われた事件です。芸術作品ではあるものの、度を超えた性的描写がある作品であり、それを理解した上で出版したものとして、起訴されました。その際に最高裁は、芸術作品であるからといってわいせつ性を否定することはできないとして有罪判決を下し、罰金が科せられました。
一方で、わいせつ物頒布罪として起訴されたものの、無罪とされた「愛のコリーダ」事件のような判例もあります。「愛のコリーダ」という日本とフランス合作映画の脚本と宣伝用写真などを掲載した書籍の一部が、わいせつ文書図画に当たるとして監督や出版社社長が検挙起訴されました。しかし、裁判ではこれまでのチャタレー事件などの判例を維持しながらも、当該作品はわいせつ物には当たらないとして無罪になったのです。
この事件では、社会通念は時の経過によって変遷する性質のものであり、近時の我が国では、社会が大胆な性表現も肯定して受容するよう変化しつつあるとして無罪としました。
2、わいせつ物頒布罪で逮捕されてしまった場合
前述したように、わいせつ物の判断基準はあいまいです。
もしわいせつ物頒布罪で逮捕されてしまったら、どのようにすればいいのでしょうか? まずは一般的な刑事事件の流れに沿って、早期釈放されるために必要なことや、示談の可能性について考えてみましょう。
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(1)早期釈放されるには?
逮捕されたら、あなたは「被疑者」として扱われることになります。被疑者はまず、警察で48時間を上限に取り調べを受けます。この間は弁護士以外と接見することはできないので、逮捕後にはまず弁護士を呼んで、今後の対策を考える必要があるでしょう。
取り調べが終わり、罪を犯した可能性が高い判断されると、被疑者の身柄は警察から検察官に送致されます。送致を受けた検察官は、24時間以内にさらなる取り調べの必要性を判断し、必要性があると判断すれば裁判所に勾留請求をします。
この警察と検察での取り調べの合計72時間以内になんらかの手を打たなければ、最大20日間勾留が続きます。場合によっては裁判が終わるまで勾留されるという事態になりかねません。その間、仕事や学校へ行くこともできなくなるため、今後の社会生活に大きな支障が出る可能性は否定できないでしょう。
罪の疑いを晴らしたり、逃亡や証拠隠滅の可能性がないことを示したりすることで早期釈放される可能性がありますが、自身だけで行うことは難しいものです。逮捕後は少しでも早く弁護士のサポートを受けて、早期釈放を目指しましょう。 -
(2)示談で解決は可能?
示談とは、事件を起こした加害者が被害者に対して賠償金を支払って当事者同士で和解する方法です。主に交通事故や被害者がいる刑事事件で示談が用いられますが、わいせつ物頒布罪の場合は示談すべき被害者は存在しません。
わいせつ物頒布罪は、「社会公共に対する犯罪」になるため、個人の被害者がいないからです。したがって、わいせつ物頒布罪では示談はできません。
お問い合わせください。
3、わいせつ物頒布罪で逮捕された場合の弁護活動
わいせつ物頒布罪で逮捕された場合、どのような弁護活動が行われるのでしょうか? 具体的には大きく3つの弁護活動が行われますので、それぞれ紹介していきます。
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(1)反省文などを作成し、執行猶予や減刑に導く
罪を認めた上で、警察や裁判所に反省の姿勢を示せば、刑罰を減刑できる可能性もありますし、起訴猶予と呼ばれる不起訴処分になることも期待できます。起訴猶予は、起訴をすれば有罪であるものの罪が軽く反省している場合に起訴されないことです。
書面を書く場合は、自分の言葉でできる限り多い分量で、事件の経緯や現在の気持ちや今後すべきことなど記載します。具体的な内容、書き方などは弁護士がアドバイスします。 -
(2)再犯防止のための環境調整
反省の姿勢を表すと同時に、再び罪を犯さないように、環境を整えることも大切です。性犯罪は再犯率が高いという統計があります。したがって、家族や知人から監視をしてもらうことなど、具体的な対策を表明することで、再犯防止が期待され、減刑や起訴猶予の判断が下される可能性があります。
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(3)贖罪寄付
事件の反省の気持ちを表すために公的な団体に寄付することを「贖罪寄付(しょくざいきふ)」と呼びます。
前述のようにわいせつ物領布罪には、具体的な被害者はいません。このような場合に、贖罪寄付は示談のような役割を果たします。
この寄付は、日弁連や各地の弁護士会が設けている制度で、弁護士会に寄付することで証明書を発行してもらえます。この証明書を情状証拠として提出することで、罪を償う気持ちがあると判断されて、減刑や起訴猶予を期待することができるのです。
寄付金は、弁護士による法律援助が必用な方に使用されることとなります。
4、まとめ
もしわいせつ物頒布罪で逮捕された場合や、逮捕される可能性があると心配されているのであれば、まずはベリーベスト法律事務所 京都オフィスまでご相談ください。
判断の難しい問題でもあり、事例があっても個々の状況で結果が変わることもあり得ます。自己判断は禁物といえますし、自身だけで解決することは困難かと思われます。刑事事件に対応した経験と実績が豊富な弁護士が、状況に適したアドバイスやサポートを行います。
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