「ひととき融資」とは? 逮捕されたらどうなるのか京都の弁護士が解説
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2019年5月には、複数の女性にお金を貸し付けて、融資や返済の度に性交渉を求めていた大阪府職員の男性が逮捕されたという報道がありました。このような事件の手口は「ひととき融資」と呼ばれ、多くのメディアで話題に上りました。
近年はインターネットの掲示板やSNSを通じて、融資を求めている女性に簡単にアクセスすることができます。しかし、安易な気持ちで「ひととき融資」を行ってしまうと逮捕される可能性があります。
本コラムでは、もしも「ひととき融資」を行ってしまった場合、どのような罪に問われるのか、逮捕された場合の流れはどうなるのか、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、「ひととき融資」とは?
「ひととき融資」とは、性交渉(肉体関係)を持つことを条件として貸し付けを行う個人間融資のことです。性交渉を持つことを条件としている点で、通称「パパ活」と呼ばれる行為と区別されます。
インターネット上には、掲示板やTwitterなどのSNSで融資してくれる男性を募集する女性の書き込みや投稿が存在します。
そういった女性は、一般の金融機関からお金を借りられない事情を抱えているためか、女性は融資する男性の要求を拒めない窮状にあることも少なくなく、「ひととき融資」に応じざるを得ない事態に陥ってしまっているようです。
「ひととき融資」は、売春禁止法や刑法上の性犯罪として処罰することが難しいとされます。
しかし「ひととき融資」は、被害者の窮状につけ込む許されない行為です。
そのため「ひととき融資」が行われている現状を改善するために、適用できる法律を使って逮捕するなどの取り締まりが行われています。
実際に大阪府の事件では、加害者は貸金業法や出資法違反の罪に問われています。
なお貸金業法や出資法だけでなくその他の法律に違反する可能性もあれば、その法律の適用も考慮されることになるでしょう。
2、「ひととき融資」はどのような罪になる? 刑罰は?
「ひととき融資」を行った場合、貸し付けた人は次のような罪に問われる可能性があります。
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(1)貸金業法違反
金銭の貸し付けを業として行う場合には、財務局または都道府県に申請して業者登録を受けなければならないと貸金業法によって規定されています。
この金銭の貸し付けを業として行う場合とは、不特定多数の相手に対する貸し付けを反復継続して行うことを意味します。
「ひととき融資」では複数の相手に融資していることが多く、そういった場合には貸金業法に違反し無登録で貸金業を営んだとして処罰の対象になる可能性があります。
なお、無登録で貸金業を営んだ場合の刑罰は、10年以下の懲役もしくは3000万円以下と規定されています。 -
(2)出資法違反
出資法で定められた上限金利を超える金利で貸し付けを行っていた場合には、出資法違反になる可能性があります。
出資法で定める上限金利は、貸金業者による貸し付けの場合には年20%・個人による貸し付けの場合は年109.5%です。
これらを超える利率で利息の契約をしたり利息を請求・収受したりすることは禁止されており、違反すれば罰則が科されます。
貸金業者が上限金利の年20%を超える貸し付けを行っていた場合には、10年以下の懲役または3000万円以下の罰金あるいはその両方が科されることになります。
また、個人が上限金利の年109.5%を超える貸し付けを行っていた場合には、5年以下の懲役または1000万円以下の罰金あるいはその両方が科されることになります。 -
(3)強制性交等罪、準強制性交等罪など
「ひととき融資」における性交渉について、売春禁止法や刑法上の性犯罪として処罰することは難しいとされます。
しかし、暴行や脅迫を用いたり相手の抵抗できない状態を利用して性交渉が行われたことが立証された場合には、強制性交等罪や準強制性交等罪にあたる可能性もあります。
強制性交等罪や準強制性交等罪が成立すれば、5年以上20年以下の懲役に処される可能性があります。
また、18歳未満の借り主に対して「ひととき融資」を行った場合には、青少年健全育成条例違反になる可能性があります。地域によって罰則は異なりますが、京都府の条例では1年以下の懲役または50万円以下の罰金に処されることになっています。
なお、性交渉時の動画や写真などをもとに脅迫して金銭を要求したり、借り主に暴行などを振るうなど他の罪にも該当するような行為があれば、当然その罪の刑罰も科される可能性があります。
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3、「ひととき融資」で逮捕されたらどうなる?
「ひととき融資」を行い逮捕された後の流れは、次のとおりです。
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(1)警察での取り調べ
「ひととき融資」で逮捕されると、警察署の取調室で取り調べを受けることになります。警察は、取り調べを通じて48時間以内に釈放するか事件を検察に送致するか(送検といいます)決めていきます。
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(2)検察官送致・勾留
送致された事件は、検察官によって取り調べが行われます。検察官は、送致後24時間以内に勾留請求するか釈放するか判断します。検察官はさらに事件の捜査が必要だと判断した場合には、裁判官に対して勾留請求をします。裁判官によって勾留が認められれば、原則として10日間、被疑者の身柄は拘束されます。検察官がさらに捜査の時間が必要だと判断して勾留の延長を請求し、裁判官が勾留の延長を認めれば拘束期間はさらに最大10日間延長されます。
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(3)検察官の起訴・不起訴の判断
検察官は、取り調べなどが終了すると起訴するか不起訴にするかを判断します。
起訴されると、刑事裁判にかけられ非常に高い確率で有罪が確定します。日本では99%有罪となります。有罪になれば、前科がつくことになります。一方、不起訴になれば釈放され前科がつくこともありません。 -
(4)刑事裁判
検察官に起訴されて刑事裁判になった場合には、被告人側と検察側で主張・立証・反論を繰り返し争点を明らかにしていきます。
そして最終的には、裁判官が「有罪か無罪か」「有罪であればどの程度の刑罰が妥当か」を判断して判決を言い渡します。
なお、実刑判決が確定した場合には刑務所で刑期を過ごすことになりますが、執行猶予付き判決であれば刑務所に行くことなく家で生活することができるという大きな違いがあります。
4、逮捕されたときには弁護士に相談を
「ひととき融資」を行い逮捕されたときには、可能な限り早期に弁護士に相談することが大切です。弁護士に相談するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
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(1)取り調べでの対応のアドバイスが受けられる
早期に弁護士に相談した場合には、取り調べに対する適切なアドバイスを得ることができます。逮捕された直後はたとえ家族でも面会することができません。しかし、弁護士であれば時間に制限なく面会することができます。面会を通じて、厳しい取り調べに対してどのように対応すればよいのかといったアドバイスや、やってもいないことを供述しないための精神的なサポートを受けることができます。
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(2)早期釈放を目指すことができる
逮捕され、勾留される場合には長期間にわたって身柄が拘束されるため、職場や学校など日常生活に大きな影響が出るでしょう。逮捕され、捜査機関によって捜査が継続しているなかで弁護士は逃亡の恐れがないことや証拠を隠滅するおそれがないといった事情を示しつつ、交渉し早期釈放に向けた活動を行います。
勾留が回避され、早期釈放が実現すれば、日常生活への影響もそれだけ低くなります。 -
(3)示談交渉を行う
勾留が決定された場合には、前科の付かない不起訴を目指すことになります。
刑事事件では、「被害者との示談交渉が成立しているか」「被害弁償が行われているか」が釈放や不起訴といった判断に影響します。
弁護士は、代理人として被害者の方と示談交渉を行うことができます。
弁護士は、客観的かつ冷静に被害者の方と話し合いを進められる立場にあるため、起訴される前に示談交渉を成立することができれば、不起訴を得られる可能性も生じてきます。 -
(4)裁判になっても有利な判決を得やすい
起訴され、刑事裁判になった場合でも、弁護士は被告人が有利な判決を得られるように弁護活動を行うことができます。罪を認める場合には、執行猶予付き判決を得られる可能性があれば獲得できるよう弁護活動を行います。執行猶予付き判決を得ることができれば刑務所へ行くことはありません。
5、まとめ
本コラムでは、「ひととき融資」で逮捕された場合の流れや刑罰について解説してきました。もしも「ひととき融資」で逮捕された場合には、可能な限り早く弁護士を選任し、弁護活動をはじめることが重要です。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士は、全国に広がるネットワークを生かして迅速に対応し早期から弁護活動を行います。ご自身が事件を起こしてしまい逮捕されるかもしれないと不安に思っている、あるいは家族が逮捕されてしまい弁護士を必要としているといったような場合には、ぜひ当事務所までご相談ください。
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