空・陸の監視強化中の「あおり運転」で暴行罪!? 逮捕されたらどうなる?

2018年12月05日
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空・陸の監視強化中の「あおり運転」で暴行罪!? 逮捕されたらどうなる?

京都府警は平成29年12月から、高速道路上や自動車専用道路において、ヘリコプターとパトカーが連動してあおり運転を発見、検挙する「空陸一体作戦」を展開。社会問題になっている悪質なあおり運転を効果的に抑止、検挙できる方法として注目されています。

あおり運転は、いわば「車という凶器」を使った暴行行為です。あおり運転の被害者となれば、多くは強い恐怖を抱き、ときには命の危険さえも感じてしまうことがあるでしょう。警察では、あおり運転の被害者となったときは、相手をせず、ドアや窓は閉め、いち早く安全な場所へ避難し、110番で通報するように呼びかけています。

ここでは、あおり運転とはどのような行為を指すのかを改めて解説するとともに、あおり運転をすることによって処される可能性がある刑罰について、京都オフィスの弁護士が解説します。


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1、あおり運転とは

日ごろから、急いでいるときや前方にゆっくりと走行している車がいるときに、 車間距離を詰めてみたり、クラクションやパッシングを繰り返して進路を強引に譲らせたりしたことはないでしょうか? これらは、ただの「少々荒い運転」ではなく、れっきとした「犯罪」としてみなされる可能性が高い「あおり運転」と呼ばれる行為です。

まずは、あおり運転とはどのような行為を指すのかを、改めて確認しておきましょう。

  1. (1)あおり運転の定義

    あおり運転とは、道路を走行中の特定の自動車、二輪車、自転車に対して、ほかの運転者が何らかの原因や目的をもってあおることにより、道路における危険を生じさせる行為を指します。

    悪質なあおり運転によって尊い人命が奪われる痛ましい事故も発生したため、あおり運転は大きな社会問題としてクローズアップされるようになりました。平成30年6月には、全国で「あおり運転一斉取り締まり」が実施され、わずか7日間で1200件を超えるあおり運転が検挙されています。

  2. (2)あおり運転に該当する行為の例

    「あおり運転」とみなされる可能性が高い、具体的な行為は以下のとおりです。

    • 安全が確保できないほどに車間距離を狭める
    • 左右を走行する二輪車に異常な幅寄せをする
    • クラクションやパッシングをしつこく繰り返すことで進路を譲るよう促す
    • 前方の車を追い回す
    • 特定の車に危険な割り込みや前方に回り込んでの急ブレーキを繰り返す


    これらの行為のほか、相手に対して口頭での威嚇や運転による嫌がらせも含め、幅広く「あおり」と捉えられます。

    警察庁は、あおり運転に対して「あらゆる法令を駆使して厳正な捜査を徹底し、積極的な取り締まりを行う」と発表しています。今後は、よりいっそう厳しい取り締まりが行われることでしょう。

    令和2年6月より、あおり運転は厳罰化されています。詳しくは以下のコラムをご覧ください。
    >あおり運転が厳罰化! 令和2年創設の妨害運転罪について詳しく解説

2、あおり運転をすると「暴行罪」など刑法犯として裁かれる?

あおり運転の多くは、道路交通法違反として取り締まりを受けることになります。たとえば、前方の車に異常接近する行為から「車間距離保持義務違反」として検挙する例が代表的です。そのほかにも、割り込みや追い回し行為から「追い越し方法違反」や「進路変更禁止違反」「合図不履行違反」など、道路交通法上で危険運転とされる運転行為が該当します。

そのほかにも、警察庁は、あおり運転をする運転者に対し、たとえ現時点では事故を起こしていなかったとしても、「今後、危険運転によって事故を起こす可能性が高いとみなした運転者(危険性帯有者)」として最長180日間の免許停止処分を科すことができる法令の適用を明言しています(道路交通法第103条第1項第8号)。危険なあおり運転を少しでも減らすため、警察が適用できる法令を積極的に活用している背景が伺えるでしょう。

このような情勢の中で、警察がもっとも厳正に対処した場合は、「暴行罪」をはじめとした刑法犯として検挙されるケースがあることを覚えておく必要があります。

暴行罪は刑法第208条に規定されている犯罪です。条文では「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったとき」と掲げられているだけで、あおり運転について具体的に例示されているわけではありません。

ところが、暴行罪は「有形力の行使」によって該当する犯罪で、有形力の行使は身体への接触、非接触を問いません。たとえば「脅すつもりで目の前に石を投げる」などの行為も暴行罪に該当します。

あおり運転は、殴る・蹴るなどの直接的な暴力ではなくても、自動車を用いた暴行と捉えられて刑法上の暴行罪が適用されることになります。あおり運転によって暴行罪が適用された場合は「2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料」という刑罰が科せられます。

なお、すでにあおり運転の結果、刑法犯の「暴行罪」として検挙された例は全国的に存在し、平成30年8月に大阪で起きたあおり運転による死亡事故は、「殺人罪」として起訴されました。

道路交通法の違反による検挙であれば、違反点数の付加や点数制度による行政処分が下されます。しかし、刑法犯罪で有罪になれば、刑罰が下されるため、たとえ軽微な罪だとしても「前科」がつくことになります。

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3、あおり運転の証拠

あおり運転によって刑法犯とみなされ逮捕されるときは、すでに証拠がそろっていると考えてよいでしょう。

あおり運転の有力な証拠として、今後フル活用されることになることが予想されるのが、最近では多くの車が搭載しているドライブレコーダーです。かつて、危険運転が検挙される事例の多くは警察官の現認によるものでしたが、現認がない場合は被害者側の供述に頼るところがあり、争いが生じていました。ところが、ドライブレコーダーが普及したことによって、悪質なあおり運転が映像によって立証されるようになっているのです。

これまで、ドライブレコーダーは前方のみの装備が主でしたが、後方ドライブレコーダーの普及も進んでおり、今後も悪質なあおり運転にはドライブレコーダーが証拠として活用されています。先述した殺人罪が適用されたケースでは、逮捕時点では周囲を走行していた車のドライブレコーダーが有力な証拠となり、殺人罪が適用された決め手は、被疑者本人の車載ドライブレコーダーに残された自らの音声だったとみられています。

4、あおり運転で逮捕されてしまったら?

あおり運転が「暴行」とみなされ、逮捕される可能性は十分にあります。逮捕されるタイミングは、あおり運転中や直後はもちろん、後日逮捕される可能性も十分にあるでしょう。

●現行犯逮捕のケース……あおり運転をしている現場を警察官が目撃していた。もしくは、事故後、通報を受けた警察によって身柄を取り押さえられた。
●後日、通常逮捕されるケース……被害者や目撃者の証拠提出によって事件化ののち、容疑者として特定され、逮捕状が発行された。

よって、運転当日、何事も起きなかったからといって、逮捕される可能性が消えたわけではありません。前述のとおり、ドライブレコーダーという消えない証拠が残る可能性が高く、場合によってはSNSなどで動画が拡散されてしまえば、逮捕以上のダメージを受けてしまうこともあるでしょう。

あおり運転によって暴行罪が適用されて逮捕されたときは、刑事訴訟法で定められた手順に沿って、捜査を受けることになります。

まず警察は、逮捕した被疑者を取り調べ、逮捕から48時間以内に検察庁に送致するか微罪処分として釈放するかを検討します。検察へ送致されれば、検察官は送致から24時間以内に、さらに身柄を拘束して捜査を継続する「勾留(こうりゅう)」を行うか、処分を決定して釈放するか、「在宅事件扱い」として対応していくかを判断します。

道路交通法違反の事件として処理される場合、多くは勾留前の段階で交通違反に対する罰金を支払って釈放されます。しかし暴行罪が適用された場合は、継続捜査のためにさらに身柄拘束を受ける可能性があるでしょう。

検察官が裁判所に勾留を請求してこれが認められた場合、原則10日間、最大で20日間の身柄拘束が続きます。さらに、勾留が満期を迎えるまでに検察官が起訴すれば、刑事裁判が行われ、有罪が下されれば刑罰が科せられることになります。たとえ軽微な刑罰であろうと、有罪になれば、前科がつくことになるということです。

同時に、前述のとおり、暴行罪が適用されるような危険運転をするドライバーは「危険性帯有者」とみなされることがあります。よって、これまでの違反点数などにかかわらず、免許停止処分が下されることもあるでしょう。

5、あおり運転での逮捕が不安なら弁護士に相談を!

あおり運転をすれば、道路交通法違反での軽微な処分で済まされないケースが増えています。暴行罪が適用されて刑罰を受ける、危険性帯有によって免許停止処分を受けるなど、将来へ影響が残る結果となる可能性は否定できません。

また、あおり運転が暴行とみなされたうえで逮捕されれば、身柄拘束によって勤務先を長期欠勤することになるでしょう。また、あおり運転が大きな社会問題として捉えられている情勢から「あおり運転で逮捕」という見出しは耳目を集めます。状況によっては、実名報道される可能性もあるでしょう。

もし自分自身があおり運転をしていて、今後、捜査の手が伸びて逮捕されることが不安であれば、まずは弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談することによって、まずは自分自身の運転が逮捕に至るほどの危険運転なのかを適切に判断してもらうことができます。

ドライブレコーダーを搭載していれば、映像をもとにさらに正確な判断をしてもらうことができるでしょう。また、実際に逮捕されてしまっても、すでに弁護士を選任していれば素早い接見や、被害者との示談交渉など、早期の身柄釈放を求めた活動も期待できます。

6、まとめ

あおり運転は、悲惨な死亡事故につながった事案を受け、平成30年1月より、より厳しい取り締まりが行われるようになりました。もし、あなたがあおり運転をして、取り締まりを受けることになれば、運転免許の取り消しなど社会生活が不便になる処分を受けることになります。さらに、暴行の罪を問われて有罪になれば、あなたの経歴に刑法犯の前科がつくことになることも覚えておきましょう。

一時の焦りやいら立ちであおり運転をしてしまい、逮捕や処分などに不安を抱えている場合は、直ちに弁護士に相談することをおすすめします。まずは、法律の知識が豊富である弁護士の視点で、実際の危険度や逮捕、処分の可能性を判断してみてはいかがでしょうか。

ベリーベスト法律事務所・京都オフィスでは、交通事件および刑事事件の対応実績が豊富な弁護士が、適切なアドバイスを行うとともに、弁護活動に尽力します。お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています