配偶者へのDVで逮捕される? 刑罰や対処方法を弁護士が解説

2020年10月21日
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配偶者へのDVで逮捕される? 刑罰や対処方法を弁護士が解説

配偶者や恋人など親密な関係にある(あった)者から振るわれた暴力はドメスティック・バイオレンスと呼ばれ、最近では長期化するコロナ禍による家ごもりの影響などにより増加傾向が見られるとされ、社会問題化しています。
平成30年度に配偶者暴力相談支援センターに寄せられた配偶者からの暴力が関係する相談件数は全国で11万4481件にのぼり、京都府においては、京都市DV相談支援センターへの連絡を中心に6333件の相談が寄せられています。
配偶者への暴力は逮捕される可能性があります。「配偶者が悪いから」「教育のため」などといっても弁解は通用しません。

本記事では、配偶者への「DV」によって逮捕されるケースや、逮捕されたときにとるべき対処方法をベリーベスト京都オフィスの弁護士が解説します。ぜひ参考にしてみてください。


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1、DVで逮捕される可能性はある?

「DV(家庭内暴力)」とは、妻や夫、子どもなどの家族や恋人などの関係にある人に対して暴力を振るうことです。DV行為を行っていると、実際に逮捕される可能性があります。

DVは以下のような犯罪にあたる可能性があります。

  1. (1)暴行罪

    暴行罪は、相手に乱暴なことをしたときに成立します。

    具体例

    • 大声で怒鳴りつける
    • 胸ぐらをつかむ、揺する
    • 殴る、蹴る、引き倒す
    • 物を投げつける
    • 近くで危険物を振り回す

    刑罰は2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料です。

  2. (2)傷害罪

    配偶者などへ暴力を振るい、相手がけがをした場合は傷害罪が成立します。打撲、すり傷、骨折などの身体のけがだけではなく、うつ病などの「精神疾患」になった場合にも傷害罪となる可能性があります。

    刑罰は15年以下の懲役または50万円以下の罰金です。

  3. (3)強制性交等罪

    たとえ相手が妻であっても、暴力や脅迫によって無理やり性交渉をすると、強制性交等罪が成立する可能性があります。

    刑罰は5年以上の有期懲役刑です。

  4. (4)殺人未遂罪、殺人罪、傷害致死罪

    命に危険が及びうる危険な暴力を振るうと、DV被害者が死亡しなかったとしても「殺人未遂罪」となる可能性があります。実際に死亡した場合は殺人罪が成立します。
    殺すつもりがない場合でも、被害者が死亡すると「傷害致死罪」となり、非常に重い刑罰が適用されるので絶対に暴力を振るうべきではありません。

    殺人罪、殺人未遂罪の刑罰は死刑もしくは無期懲役、5年以上の有期懲役刑、傷害致死罪の刑罰は3年以上の有期懲役刑です。

  5. (5)配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(DV防止法)違反

    DVそのものではありませんが、DVをきっかけに「保護命令」というものが出され、行動によっては、DV防止法違反となってしまうことがあります。

    DVによって身に危険を感じると、配偶者などが裁判所へ「保護命令」を申し立てる可能性があります。保護命令の中心となるのは、「接近禁止命令」であり、接近禁止命令とは「配偶者に近づいてはならない」という裁判所からの命令です。
    裁判所から接近禁止命令が出ているにもかかわらず、これを無視して配偶者に近づくと、逮捕される可能性があります。

    DV防止法違反の刑罰は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑」です。

    なお暴行、傷害、強制性交等罪、殺人、傷害致死罪は「刑法犯」であり、どのような人にも成立しうる犯罪です。刑法犯とは、刑法に規定されている一般的な犯罪類型です。

    一方、DV防止法が適用されうるのは、配偶者や元配偶者、事実婚の状態にある相手に限られています。それ以外の人には成立しません。

    以上のように、悪質なDVのケースでは、本当に逮捕されて重い刑罰を適用される可能性があるので、決して軽く考えてはなりません。

2、DVの検挙率、実態

現実にDVによって警察に逮捕される人はどのくらいいるのでしょうか?
警視庁が発表している資料(「令和元年におけるストーカー事案及び配偶者からの暴力事案等への対応状況について」)によれば、2019年における刑法犯による検挙件数は9090件です。2003年には1060件であり、9倍近くに増加しています。
また、2019年におけるDV防止法違反での検挙件数は71件となっています。2003年には41件だったので、やはり増加傾向にあるといえるでしょう。

特に刑法犯による検挙件数が近年急増しています。これは、警察が配偶者間の暴力を問題視し、厳しく対応していることのあらわれといえるでしょう。警察に言われるまでもなく、配偶者への暴力は、その程度を問わず、許されないものですから、冗談であっても配偶者に暴力を振るってはいけません。

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3、暴力行為等処罰に関する法律とは?

暴力行為等処罰に関する法律(暴力行為等処罰法)は、特に危険で悪質な暴力行為を禁止するための法律です。
今は学校での「集団いじめ」や「配偶者間暴力、親子間暴力」に適用されるケースも増えています。

禁止されるのは、以下のような暴力です。

  1. (1)集団による暴行、脅迫、器物損壊

    多人数による暴力や脅迫行為、物の破壊は、暴力行為等処罰法違反となります。

    法定刑は「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」です。

  2. (2)銃砲刀剣類を用いた傷害

    銃やナイフ、包丁などの刀剣類を使って人を傷つけると暴力行為等処罰法違反が成立します。

    法定刑は「1年以上15年以下の懲役」とされています。

  3. (3)常習的な暴行傷害、脅迫、器物損壊

    暴行、傷害や脅迫、器物損壊の常習犯が、暴力を振るって人を傷つけると「1年以上15年以下の懲役刑」が科せられます。
    人を傷つけなくても、常習で暴力を振るったり脅迫したり物を壊したりすると、「3か月以上5年以下の懲役刑」が適用されます。

  4. (4)不正な利益を得る目的で集団あるいは常習的に脅迫

    「物やお金を巻き上げてやろう」など不正な利益を目的として被害者を脅迫し、面会を強要したり不安に陥れたりすると暴力行為等処罰法違反となります。
    法定刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」です。

  5. (5)集団的犯罪の依頼(請託)

    暴力行為の依頼(請託)も犯罪です。集団による暴行や脅迫による公務執行妨害罪・殺人罪・傷害罪・暴行罪・脅迫罪・強要罪・威力業務妨害罪・建造物損壊罪・器物損壊罪にあたる行為をさせるため、第三者へ金品提供をすると暴力行為等処罰法違反となります。
    刑罰は「6か月以下の懲役または10万円以下の罰金」とされています。

  6. (6)暴力行為等処罰法はDVにも適用される

    暴力行為等処罰法は、もともと暴力団などによる集団的暴行の規制に利用されていました。ただ、その後「暴力団対策法」もできて一定の成果が出たこともあり、現在ではむしろ暴力団による犯罪以外に適用される例が増えています。

    特に「配偶者間」などの家庭内暴力に適用されるケースもあります。以下のような事例が典型です。

    ・興奮して包丁を差し向けた
    配偶者間で暴力行為がなされた際に、「刃物」を持ち出す例があります。台所の包丁を手にとって相手に差し向け、脅すケースもあるでしょう。そのような場合、暴力行為等処罰法が成立して通常の脅迫罪や暴行罪より厳しく処罰される可能性があります。

    ・常習的に暴力を振るっている人がさらに配偶者へ暴力を振るった
    日常的に暴行や脅迫をして「常習犯」とされる人が、さらに配偶者へ暴行や脅迫行為を行った場合にも、暴力行為等処罰法違反となります。通常の脅迫罪、暴行罪や傷害罪より厳しく処罰される可能性が高くなります。

    近年、配偶者暴力に対する取り締まりが厳しくなっています。親子間や配偶者間でも暴力行為等処罰法違反で処罰されるケースが実際にあります。通報されるとそのまま逮捕されてしまう可能性もあるので、暴力を軽く考えてはなりません。

4、DVで逮捕されたときにやるべきこと

配偶者へ暴力を振るって逮捕されてしまったときは、以下のような対応が考えられます。

  1. (1)誠意を見せて謝罪する

    まずは相手に誠意を見せて謝罪しましょう。弁護人や両親などを通じて謝罪をすることになると思いますが、許してもらうことができれば、不起訴処分となり早期に解放される可能性もありますが過度な期待は持たないようにしましょう。

  2. (2)示談する

    DV案件も刑事事件に変わりはありません。被疑者の立場を有利にするには被害者との示談が有効です。できるだけ早めにDV被害者である相手と交渉を行い、示談を成立させましょう。きちんと慰謝料を支払い、被害届を取り下げてもらえたら、刑事事件でも不起訴処分になる可能性があります。

  3. (3)不利な供述はしない

    逮捕されると、警察官から取り調べを受けることになります。このとき、虚偽の供述はもちろんのこと、自分に不利な供述をすべきではありません。供述調書は起訴不起訴の決定をされるときや刑事裁判での資料となります。不適切な供述をすると、後に重い刑罰を適用されるリスクが高くなるので充分注意してください。

  4. (4)カウンセリングなどのDVを止める対応

    配偶者に許してもらえて釈放されたとしても、そのままでは、いつまた暴力を振るってしまうかわかりません。自分で暴力を止められないなら、カウンセリングや精神治療を受けるべきです。自助グループに参加するのも良いでしょう。

    再度同じことを繰り返して逮捕されると、今度は釈放してもらえず、厳しい処罰を受ける可能性が高くなります。「2度目はない」と覚悟して再発防止に努めましょう。

  5. (5)別居、離婚問題への対応も必要

    DVが刑事事件に発展してしまうと、配偶者が離婚を希望する可能性も高くなります。離婚調停を申し立てられるなど、大きなトラブルに発展するでしょう。DVは違法行為なので、暴力が原因で離婚するなら慰謝料も払わねばなりません。

    離婚に至らなくても、配偶者と一緒に暮らして暴力を振るってしまう場合、一時的に別居が必要となるケースもあります。配偶者が家出してしまう場合もあるでしょう。

    DV案件では夫婦問題が複雑になる可能性も高いので、なるべく早めに弁護士に相談して適切なアドバイスを受けてください。離婚調停や訴訟を申し立てられたとき、弁護士を代理人として慰謝料の減額請求なども行えます。

5、まとめ

DV案件では、DV加害者自身が暴力を止められず悩んでいる場合も少なくありません。反面自覚がないケースもあり、状況に応じた対応が必要です。
ここまでご覧になっているということは何かきっかけがあったのだと思います。
暴力をきっかけに別居トラブルになってしまった、離婚の話になってしまった。そうした場合、自分がDVの加害者になってしまったのかもしれない、けれどもDVの加害者としてどうしていいのか分からないという漠然とした不安にとらわれているかもしれません。
実際に、保護命令の申立ての書面が届いて、事態の重さに初めて気付かされたということもあるかもしれません。取り返しのつかないことをしてしまったという思いで、充分に反省の上、このページにたどり着かれたということだと思います。
弁護士にご相談いただけましたら、刑事事件への対応のみならず、カウンセリングや自助グループのご案内などが可能です。刑事事件に発展はしない場合であっても、離婚に関するご相談など、あらゆる側面からサポートが可能です。
どうしたら良いかわからず、お困りの方がいらっしゃいましたら、DV問題への対応への経験が多くある、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士へお早めにご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています