逮捕・監禁罪とは? 成立要件や量刑上考慮されるポイントについて
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京都府警のデータによると、令和元年(2019年)中に、京都府内では2件の逮捕・監禁事件が検挙に至っています。
身内や交際相手と口論になってしまい、つい感情的になって相手を拘束したり、監禁したりしてしまった場合、「逮捕・監禁罪」として罪に問われてしまう可能性があります。
もしご自身の行為が逮捕・監禁罪に該当するようであれば、速やかに被害者と話し合いを行い、できる限り穏便な問題解決を目指しましょう。
この記事では、逮捕・監禁罪の成立要件や量刑上考慮されるポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。
(出典:「刑法犯 検挙件数(10カ年推移・罪種別)」(京都府))
1、逮捕・監禁罪とは?
逮捕・監禁罪とは、不法に(正当性なく)他人に対して強制力を加えて、他人の場所的移動の自由を奪う行為について成立する犯罪です(刑法220条)。
当該行為が「逮捕」に当たるか、それとも「監禁」に当たるかは、被害者に対して加える強制力の態様によって分かれます。
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(1)「逮捕」=直接的な拘束を加えて移動の自由を奪う行為
「逮捕」とは、他人に暴行などの直接的な強制力を加えて、場所的移動の自由を奪うことを意味しています。
なお、逮捕罪が成立するには、一定の時間拘束が継続する必要があります。
たとえば、暴行などによって一瞬だけ他人の場所的自由を奪ったような場合は、単に暴行罪が成立するにとどまります。 -
(2)「監禁」=一定の場所からの脱出を困難にして移動の自由を奪う行為
「監禁」とは、他人に対して移動することを物理的・心理的に困難にすることにより、場所的移動の自由を奪う行為を意味しています。
典型的には室内に外側から鍵をかけて閉じ込める行為などが想起されますが、それ以外にも脅迫を用いて心理的に脱出を困難にした場合なども「監禁」に該当します。
2、逮捕・監禁罪の罰則は?
逮捕・監禁罪の法定刑は、「3か月以上7年以下の懲役」です(刑法第220条)。
問題となっている行為が逮捕・監禁のいずれの場合であっても、法定刑に差はありません。
逮捕・監禁罪に罰金刑は定められていないので、略式起訴になることはあり得ず、訴追される場合には必ず公判廷における正式起訴が行われます。
なお、逮捕・監禁罪を犯し、それによって人を死傷させた場合には、傷害の罪と比較して重い刑により処断されます(逮捕等致死傷罪、刑法第221条)。
傷害罪の法定刑は「15年以下の懲役または50万円以下の罰金」(刑法第204条)、傷害致死罪の法定刑は「3年以上の有期懲役」です(刑法第205条)。
よって上記を併せて考えると、逮捕等致死傷罪の法定刑は、被害者を傷害した場合は「3か月以上15年以下の懲役」、死亡させた場合には「3年以上の有期懲役」となります。
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3、逮捕・監禁罪の量刑判断において考慮されるポイントは?
逮捕・監禁罪が成立する場合、犯人にどの程度の量刑が科されるかについては、主に以下の点を中心として判断されます。
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(1)暴行その他の拘束の強度
被害者に対してどのような手段を用いて逮捕・監禁を行ったかは、その悪質性の程度を示すものとして、量刑判断のうえで重要な考慮要素となります。
たとえば、被害者に対して物理的な身体拘束をほとんど加えずに監禁してしたような場合には、行為の悪質性は比較的低いと判断されやすいでしょう。
これに対して、被害者を縄で拘束したり、説得を試みる被害者に対して暴行を加えたりした場合には、極めて悪質な逮捕・監禁行為であると判断される可能性が高いと考えられます。 -
(2)計画性・目的の悪質性
逮捕・監禁が行われた目的も、犯罪行為の悪質性を判断するうえで重要となる考慮要素のひとつです。
単にカッとなって交際相手などを逮捕・監禁してしまった場合よりも、事前に計画を立てたうえで被害者を監禁した場合や、身代金など明確な目的があって被害者を監禁する場合の方が、悪質な犯罪行為であると判断される可能性が高いでしょう。
(なお、身代金目的がある場合には、逮捕・監禁罪とは別に「身代金目的略取等罪」が成立する可能性があります(刑法第225条の2第1項)。) -
(3)被害者との示談が成立しているかどうか
逮捕・監禁行為に関して、被害者との示談が成立している場合には、被害法益の回復がある程度図られたものとして、犯罪に対する可罰的違法性が減少します。
そのため、被害者との示談が成立している場合には、不起訴を含めた寛大な処分が行われる可能性が高まるでしょう。 -
(4)前科の有無
犯人に他の犯罪を含めた前科がある場合には、犯罪傾向が強いことを理由として量刑が重くなる傾向にあります。
特に、前の罪について実際に懲役刑に処せられ、執行が終了した日から5年以内に逮捕・監禁罪に当たる行為をした場合には、刑法上の「再犯」として取り扱われます(刑法第56条第1項)。
再犯に該当する場合、逮捕・監禁罪に対して科される刑事罰は、最大で2倍の懲役14年まで延びてしまうので注意が必要です(刑法第57条)。
4、逮捕・監禁罪が成立するケース・成立しないケース
逮捕・監禁罪がどのような場合に成立するのか、逆にどのような場合には成立しないのかについて、具体例を見てみましょう。
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(1)逮捕・監禁罪が成立する例
逮捕・監禁罪が成立する行為の例としては、以下のものが挙げられます。
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<逮捕罪が成立する例>
- 被害者を羽交い締めにして数分間拘束した場合
- 被害者をロープで柱にくくりつけて拘束した場合
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<監禁罪が成立する例>
- 被害者がいる居室に外から鍵をかけて閉じ込めた場合
- 「逃げたら殺す」などと被害者を脅迫して室内からの脱出を困難にした場合
- 被害者の意思に反して高速度で疾走するバイクやトラックなどの荷台に被害者を乗せて移動した場合
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(2)逮捕・監禁罪が成立しない例
これに対して、逮捕・監禁罪が成立しない例にはどのようなものがあるか、理由とともに解説します。
<逮捕・監禁罪が成立しない例>
①被害者ともみ合いになった際に一時的に羽交い締めにしたが、その後すぐ解放した場合
逮捕罪が成立するには、ある程度以上の時間、被害者の場所的移動の自由を奪ったと判断できることが必要です。
②生まれたばかりの子どもや意識喪失状態の人を拘束した場合
もともと自由な場所的移動ができないと判断される人については、そもそも逮捕・監禁罪の対象から除外されます。
③被害者が自由な意思により逮捕・監禁に同意している場合
この場合は、被害者が場所的移動の自由を放棄していると判断されるため、逮捕・監禁罪は成立しません。
ただし、被害者が真に自由な意思によって同意を与えているといえるかどうかは、逮捕・監禁の具体的な状況に照らして慎重に判断する必要があります。
たとえば、性行為を強いる目的で自宅に連行する意図を有しているのに、それを秘して異性を車に乗せて移動した場合には、被害者はだまされているだけであって、真に自由な意思により同意を与えているとはいえないでしょう。
5、逮捕・監禁罪で逮捕された場合の流れ・相談先は?
逮捕・監禁罪で逮捕されてしまった場合、できる限り寛大な処分を得るために、弁護士に相談しながら迅速かつ適切な対応を行う必要があります。
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(1)逮捕後の刑事手続きの流れ
逮捕・監禁罪で警察に逮捕された場合、その後72時間以内に検察官が勾留請求の要否を判断します(刑事訴訟法第205条第2項)。
勾留請求が行われた場合、その後最大20日間の「起訴前勾留」が行われ、その間に検察官が被疑者(容疑者)を起訴するかどうかを検討・判断します。
仮に起訴された場合、被疑者は「被告人」として、「起訴後勾留」という形で引き続き勾留され、ある程度の期間を置いて公判における審理に臨むことになります。
最終的には、公判において被告人に対する判決がいい渡され、有罪か無罪か、有罪の場合は量刑が決められます。
判決が確定した場合、その内容に従って、被告人は刑事罰を受けることになります。
なお、- 被疑者の勾留請求が行われなかった場合
- 勾留請求が裁判官により棄却された場合
- 裁判官の勾留決定に対する準抗告が認容された場合
- 検察官の判断で被疑者が不起訴処分となった場合
- 公判で被告人が無罪になった場合
等については、その時点で被疑者・被告人の身柄は解放されます。
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(2)速やかに弁護士に相談して身柄解放を目指しましょう
万が一逮捕・監禁罪で警察に逮捕されてしまった場合には、速やかに弁護士に相談をして、身柄拘束からの解放を目指しましょう。
弁護士は、被害者との示談を試みたり、検察官に対して被疑者の有利な情状を説明するなど、できる限り寛大な処分が得られるようにサポートします。
被疑者としても、身柄拘束をされたままでは自分だけで状況に対処することは困難ですので、外部に弁護士という味方がいることは心強い支えになるでしょう。
6、まとめ
カッとなって身内や交際相手を逮捕・監禁してしまった場合、事態を穏便に収拾するために、速やかに被害者に対して誠意をもって謝罪を行いましょう。
それでも被害者の被害感情が収まらない場合には、警察に対して被害を申告されて、逮捕・監禁罪で逮捕されてしまう可能性もあります。
その際には、弁護士へご相談ください。
ベリーベスト法律事務所では、刑事事件の専門チームが、依頼者の身柄解放や不起訴処分などに向けた弁護活動を親身になって行います。
逮捕・監禁行為をしてしまい、警察に逮捕されるのではないかと不安な方は、ぜひ一度ベリーベスト法律事務所 京都オフィスへご相談ください。
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