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市役所の職員への暴行は公務執行妨害罪? 京都オフィスの弁護士が解説

2018年12月27日
  • 暴力事件
  • 公務執行妨害
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市役所の職員への暴行は公務執行妨害罪? 京都オフィスの弁護士が解説

平成29年5月、京都市右京区で、生活保護の実態調査に訪れた市職員に対して暴行を加えた男性が、公務執行妨害容疑で逮捕される事件がありました。犯人の男性は、市職員の対応に腹を立て、市職員のメガネを外し、胸ぐらをつかみ、壁に押し付けるなどの暴行を加えたと報道されています。

なぜこのようなケースが公務執行妨害罪に該当するのか、ご存じでしょうか。公務執行妨害罪と聞くと、警察官の職務質問などに抵抗していると適用される印象が強くあるようですが、役所の職員に対しての暴行も公務執行妨害に該当するためです。

今回は、公務執行妨害罪の定義や罰則、公務執行妨害罪で逮捕された場合の対処法などを、京都オフィスの弁護士が解説します。

1、公務執行妨害罪とは?

公務執行妨害罪という罪名自体は、聞いたことがある方も多いでしょう。具体的には、どのような理由で罪に問われる犯罪なのでしょうか?

  1. (1)公務執行妨害罪の定義

    公務執行妨害罪は、刑法第95条1項に規定されている犯罪です。条文では「公務員が職務を執行するにあたり、これに対して暴行または脅迫を加えた者」とされています。

    非常に誤解されやすいようなのですが、公務執行妨害罪は「公務員の身分」や「公務員個人」を保護する目的の法律ではありません。公務執行妨害罪が保護しようとする対象は、あくまでも「公務」です。

    前提として、公務員は、国や自治体に命じられて業務を行います。国や自治体が命じた業務は、国や国民のために遂行しなければならない業務です。これを暴行または脅迫によって妨害するという行為自体が、「国に対して被害を与えた」と解釈され、罪に問われます。よって、公務執行妨害の被害者をあえて特定するのであれば、「国」となるわけです。

    つまり、休憩中や休暇中など、公務にあたっていない公務員に対して暴行または脅迫を働いたとしても、公務執行妨害に問われることはありません。しかし、当然ながら何も罪に問われないわけではなく、それぞれ個人に対する暴行罪や傷害罪、脅迫罪などによって、罪に問われることになります。

  2. (2)公務員とは?

    ここでいう「公務員」とは、刑法第7条に規定されている次の者を指します。

    • 国または地方公共団体の職員
    • 窃取物を自分の所有物として扱い法令により公務に従事する議員、委員、その他職員


    公務執行妨害罪といえば代表的な対象となるのが警察官ですが、街頭で活動をしている警察官は基本的には都道府県で採用された地方公務員に該当します。そのほか、国家公務員としては裁判官・検察官・自衛官など、地方公共団体の職員としては市区町村役場の職員や消防官などが挙げられるでしょう。

    これらの公務員は、採用試験などを経てその職に就くことになりますが、選挙によって選出された国会議員や都道府県・市区町村の議員なども、ここでいう公務員に該当します。

    さらに「法令により公務に従事する職員」も公務員に該当するため、公務所からの委託を受けて公務にあたる委託職員なども公務員とみなします。これを、みなし公務員といい、街頭で違法駐車を取り締まる駐車監視員なども、公務員とみなすことになります。

  3. (3)暴行・脅迫とは?

    公務執行妨害罪は、職務中の公務員に対して暴行・脅迫を加えることで成立します。

    暴行とは、殴る・蹴るなどの直接的な暴力はもちろんですが、胸ぐらをつかむ、首を絞める、突き飛ばすなどのほか、直接に身体にあたらなくても石を投げつける行為なども該当します。

    脅迫とは、脅迫罪で例示されるような「殺すぞ」などのように危害を予見させるような文言に限りません。かつ脅迫を受けた者が「畏怖するに足りる(恐怖を覚え)、害悪を告知する」内容であれば、脅迫にみなされることになります。

2、公務執行妨害罪の罰則は?

公務執行妨害罪で有罪判決が下された場合は、「3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金」の範囲内で刑罰が科せられます。

公務執行妨害罪は「観念的競合」といって、ひとつの行為が複数の犯罪に該当する可能性が高い犯罪です。たとえば、職務質問中の警察官の顔面を殴った場合は、殴るという「暴行罪」と、職務中の公務員に暴行を加える「公務執行妨害罪」の両方が成立することになります。

なお、観念的競合にあたる場合、刑罰が重い一方で処断されるというルールがあります。暴行罪と公務執行妨害罪を比べるのであれば、刑罰が重たい公務執行妨害罪のみの刑罰が科せられることになります。

もし、暴行によって公務員が負傷した場合では、傷害罪のほうが、より刑罰が重いため、傷害罪のみの刑罰が科せられます。

3、市区町村職員への暴行・脅迫も該当するのか?

冒頭の事件では、生活保護の実態調査のために自宅を訪問してきた市職員に対して暴行を加えたことで、公務執行妨害罪が成立しています。ここで事例を検討してみましょう。

まず、暴行を受けたのは京都市の生活保護の支給などを担当する生活福祉課の職員であり、刑法第7条が規定する「公務員」にあたることは間違いありません。

そして、生活保護の実態調査の最中に起きた事件であることも明らかになっています。つまり、本件では職員に割り当てられた「公務」を、適法に執行中であったと認められます。市職員による名札や名刺の提示があれば、相手が公務員であることは十分に認識できるので、公務員であることや職務中であることに疑いはありません。

次に暴行・脅迫の部分ですが、本件では、市職員の対応に腹を立てて、メガネを外す、胸ぐらをつかむ、壁に押し付けるなどの行為をしています。よって、暴行の程度は軽微でも、暴行を加えた(不法な有形力の行使)と認められるには十分でしょう。

さらに、この事例では、暴行を加えられたことによって、生活保護の実態調査を行うという職務が実際に妨害された、もしくは妨害しようとしたという事実があります。公務執行妨害罪では、暴行・脅迫によって公務が妨害された事実を問いません。暴行または脅迫を用いて妨害しようとすること自体が取り締まりの対象となります。つまり、実際には生活保護の実態調査が完了していたとしても、既遂犯として扱われます。

万が一、あなたの家族が、役所の職員に対して、カッとして手を上げたり、ペンを投げてしまったりしていたら……。暴行の程度が軽微だったとしても、公務執行妨害罪の成立は否定されない、ということです。

4、公務執行妨害事件で逮捕された場合の流れ

公務執行妨害罪で逮捕される場合は、トラブルの現場に駆けつけた警察官が現認することによって、現行犯逮捕されるケースが多い傾向にあります。ただし、役所などの公務所の窓口で暴行を加えて逃走した場合などでは、警察への届け出によって捜査が進められ、後日、逮捕状に基づいて通常逮捕されることもあるでしょう。

公務執行妨害罪で逮捕された場合は、刑事訴訟法に基づき、次の流れで刑事手続きを受けることになります。

  • 逮捕(警察の取り調べのため、48時間以内の身柄拘束)
  • 送致(検察庁への身柄引き継ぎ)
  • 勾留(送致から24時間以内に検察官が判断、10日間~20日間の身柄拘束の継続)
  • 起訴(刑事裁判の提起)
  • 被告人勾留(刑事裁判の判決までの身柄拘束)
  • 判決(刑罰の決定)


公務執行妨害罪では、計画的だったり、犯行が悪質だったり、反省していないケースを除き、長期にわたり身柄の拘束を受けることはあまりないといわれています。起訴されて、裁判となっても、争点がなければ判決までのスピードも早くなることが多いでしょう。

ただし、身柄拘束の期間が短い傾向にあったとしても、一時的に社会から隔離されることとなります。逮捕された事実は公表されるため、報道機関の判断によっては実名報道が行われる可能性もあり、大きなデメリットもはらんでいます。

これらのデメリットによる不利益を最小限度におさめるためにも、公務執行妨害罪で逮捕されてしまった場合は、素早く対策を講じる必要があるといえるでしょう。

5、公務執行妨害事件で弁護士を選任するメリット

公務執行妨害罪は、「示談ができない」という特性を持っています。前述のとおり、被害者はあくまでも国や地方公共団体であって、暴行・脅迫を受けた職員ではないからです。

示談ができないと聞くと、弁護士を選任するメリットがないようにも聞こえますが、それは間違いです。弁護士を選任することによって、逮捕から勾留決定までの間の弁護士による接見、逮捕された人への取り調べに臨む際のアドバイス、勾留の回避や早期釈放・減刑を求めた働きかけも期待できます。

逮捕された事実があまりにも不当であれば刑事裁判で主張することも可能です。その場合は特に、弁護士によるサポートは必須となるでしょう。

6、まとめ

公務執行妨害罪は、凶悪な計画などに基づいて敢行されるケースはあまり多くありません。日常のトラブルなどから発展することが多い犯罪です。カッとして手が出てしまうと該当するため、逮捕された人自身が驚いてしまうこともあるでしょう。あなた自身も、逮捕されたという知らせを聞いたとき、動揺したのではないでしょうか。

もし、家族や友人・知人などが公務執行妨害罪で逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスへ相談してください。公務執行妨害をはじめ、刑事事件に対応した経験が豊富な京都オフィスの弁護士が、あなたと家族が受ける可能性があるダメージを最小限に抑えられるよう、全力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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