京都府の「青少年の健全な育成に関する条例」に違反! 罰則や対策を解説
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- 青少年健全育成条例違反
平成30年7月、京都府の「青少年の健全な育成に関する条例」が改正されました。
従来までの制限・禁止事項に加えて、さらに児童ポルノの提供を求める行為が禁止されたのです。
青少年健全育成条例は、青少年が被害を受けるおそれのある行為について規制・禁止を加えています。なかには、重大な犯罪行為だとは認識しないまま罪を犯してしまうケースもあるため注意が必要です。
本コラムでは、青少年健全育成条例の内容や制限・禁止されている行為や、青少年健全育成条例違反で逮捕されてしまった場合の対応について、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、青少年健全育成条例とは
青少年健全育成条例とは、各都道府県において個別に制定されている条例です。
全国47都道府県においてもれなく存在しており、京都府でも「青少年の健全な育成に関する条例」として昭和56年に制定されました。
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(1)青少年健全育成条例の目的
青少年健全育成条例は、青少年の健全育成と保護を目的としています(男児でも女児でも、同じく対象となります)。
この目的を達成するために、青少年を取り巻く社会環境を整備するとともに、青少年の健全育成を阻害するさまざまな有害行為について規制・禁止を加えています。
青少年健全育成条例は、各都道府県が独自に制定しているため、名称や内容に多少の差異が存在します。かつては「青少年保護育成条例」という名称が用いられていたケースが多く、現在でも警察庁が統一的に使用する呼称は「青少年保護育成条例」となっています。 -
(2)京都府の青少年健全育成条例
京都府の「青少年の健全な育成に関する条例」は、概ね全国の青少年健全育成条例に準じた内容になっています。
2、青少年健全育成条例違反となる6つの行為
青少年健全育成条例が規制・禁止しているおもな行為は6つです。
- 青少年の深夜外出の制限
- カラオケボックスなど、深夜営業施設への青少年の立ち入りの制限
- 青少年への有害図書類の販売(自動販売機を含む)、有害興行の観覧制限
- 青少年への酒・たばこ・有害がん具の販売禁止
- 青少年が使用した下着類の買い取り禁止
- 青少年とのみだらな性行為・わいせつ行為の禁止
これらの規制・禁止事項の多くは、青少年の利用が予想される店舗や事業者に対して課せられています。深夜営業施設への立ち入りや、有害図書・有害がん具類の販売方法については、事業者が努力すべき部分です。
また、近年では、フィルタリングによるインターネット利用の制限、児童ポルノ提供を求める行為の禁止のほか、有害役務営業における青少年者の従事禁止(いわゆるJKビジネスなど)も追加される動きが活発化しています。
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3、青少年へのみだらな性行為が罰せられる罪
青少年健全育成条例に違反して、18歳未満の青少年に対してみだらな性行為やわいせつな行為をはたらいた場合は、概ね1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が規定されています。この規定を指して、青少年健全育成条例のことを「淫行条例」と呼ぶこともあります。
また、青少年に対してわいせつな行為などをはたらいた場合、青少年健全育成条例違反ではなく、以下のような別の犯罪に問われるおそれがあります。
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(1)児童買春罪
18歳未満の児童に対して、金品などの支払いや支払いの約束をして、性交や類似行為などをはたらいた場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法における「児童買春罪」に問われます。
児童買春罪に問われた場合、5年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。
なお、京都府の「青少年の健全な育成に関する条例」では、対償(金品のやりとり)をもって淫行・わいせつ行為をはたらいた場合を処罰の対象としています。性交・肛門性交・口腔性交・青少年の性器に触れるまたは自身の性器に触れさせるなどの行為がない場合は条例違反として処罰されます。 -
(2)強制わいせつ罪
青少年に対して暴行・脅迫を用いたうえでわいせつな行為をはたらけば、刑法の強制わいせつ罪に問われます。対象の年齢が13歳未満であれば、たとえ合意があったとしても強制わいせつ罪が成立します。
強制わいせつ罪の法定刑は6月以上10年以下の懲役です。 -
(3)強制性交等罪
青少年に対して暴行・脅迫を用いて性交・肛門性交・口腔性交をはたらいた場合は強制性交等罪が成立します。強制わいせつ罪と同じく、13歳未満であれば合意があった場合でも罪に問われます。
法定刑は5年以上の有期懲役で、減軽されない限り執行猶予がつかない重罪です。
4、相手の青少年はどのような罪に問われる?
青少年との性行為・わいせつ行為に至るケースは、決して暴力的なものばかりではありません。たとえば、青少年から誘引を受けたり、いわゆる援助交際のように利害が一致したうえで合意してわいせつ行為に至ったりする場合もあります。
では、条例違反に問われるケースでは、行為の相手となった青少年が同じように罪に問われることはあるのでしょうか?
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(1)青少年は罰せられない
青少年健全育成条例は、青少年の健全育成と保護を目的としています。
青少年に対する一定の制限は規定されていますが、青少年を処罰する規定はありません。
つまり、援助交際などのケースであっても、青少年は処罰を受けません。 -
(2)使用者は罰せられるおそれがある
性行為・わいせつ行為の相手となった青少年が罰せられることはありませんが、リフレなどの名目で青少年にわいせつな接客をさせる、いわゆる「JKビジネス」などの使用者は、有害役務営業を営む者の禁止行為として、条例違反になるおそれがあります。
京都府の場合、青少年を有害役務営業に従事させた使用者は6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
5、逮捕後の流れと対策
青少年健全育成条例違反で逮捕された場合、逮捕から起訴までの間、最長で23日間の身柄拘束を受けることになります。また、刑事裁判で有罪判決を受けてしまえば、懲役刑を受けて刑務所に収監されてしまい、長く社会生活から隔絶されるリスクも伴います。
青少年健全育成条例違反の容疑で逮捕されてしまった場合、または逮捕されるおそれがある場合は、まず弁護士に相談しましょう。
弁護士を選任していれば、逮捕後でも弁護士を通じて外部と連絡を取ったり、取り調べに際してアドバイスが受けられたりします。
また、18歳未満であることを知らなかった、あるいは店舗から「成人女性だと聞かされていた」など、不測の事態で逮捕されてしまった場合は、合理的な証拠を提示して、起訴の回避や刑罰の軽減等が主張できます。
6、まとめ
青少年健全育成条例は、青少年の健全育成・保護を阻害するさまざまな行為を禁じています。
特に、青少年が被害者となる性行為・わいせつ行為への罰則は厳しく規定されており、出会い系サイトやマッチングアプリを利用した援助交際、リフレなどの有害役務は、条例違反として刑罰を受けるリスクがあります。
京都府の「青少年の健全な育成に関する条例」に違反してしまい、逮捕や処罰に不安を抱えている方は、ベリーベスト法律事務所・京都オフィスにご相談ください。
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