クレーム保護者への対処法とは? 塾におけるクレーム対応を法律的に解説
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京都は私立学校や近代小学校の発祥の地とされているだけでなく、人口に占める大学生の割合が日本一であるなど、まさに「学校と学生の都」といえます。そして、京都には多数の学習塾や予備校も存在します。
教育の現場では、子どもを思うあまり、度を超えたクレーマーとなってしまう親がいます。そして、いわゆる「モンスターペアレント」によるクレーム問題は、学校教育だけでなく学習塾や予備校でも深刻な問題として議論の対象となっています。
本コラムでは、クレーマー問題に悩まされる塾や予備校の経営者に向けて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が、クレームの対応方法などを解説します。
1、塾の経営者が悩まされるクレーマー問題
塾の経営者は、保護者からのクレームや理不尽な要求への対応に迫られることがあります。
たとえば、「成績が上がらなかったから、月謝を支払わない」「子どもの成績が下がったから、これまで支払った受講費を返金してほしい」「教師(クラス)を変えてほしい」「教師の対応が悪いので、上司を出せ」などと保護者に要求されて、対応に多大な負担がかかる、といった事態が考えられます。
このようなクレームの存在は、以下のような弊害が生じさせるおそれがあります。
- 口コミで悪評が広がり、集客に影響がでる
- インターネットに誹謗中傷を書き込まれて、評判や信頼が低下する
- クレーム対応にリソースを割かなければならないため、業務効率が低下する
- 経営者や従業員(講師)がクレーム対応に追われて本業がおろそかになる
- 従業員(講師)がクレーム対応に疲弊して、退職してしまう
- 他の保護者がクレーマーに対して居心地の悪さを感じて、生徒を退塾させてしまう
クレーマーを放置するにせよ、対応するにせよ、塾の経営に多大な悪影響が生じる可能性があります。
塾の経営を継続するためにも、法律的な手段も視野に入れながら、適切な対応を行うことが大切です。
2、クレーム対応の際は、正当なクレームと不当なクレームの見極めが重要
クレーム対応の際には、「正当なクレーム」と「不当なクレーム」を見極めることを念頭に置きましょう。
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(1)正当なクレームはサービスの質を高めるヒントになる
クレームのなかには、塾側のミスや講師の不適切な対応を指摘するものもあります。
塾側に落ち度があるクレームについては、真摯(しんし)に対応しなければなりません。
丁寧にヒアリングをしたうえで、問題があった点を素直に謝罪しましょう。
また、クレームの内容を経営陣や講師陣にも共有することで、問題点が改善されて、よりよいサービスが提供できるようになります。 -
(2)正当なクレームと不当なクレームの見極め方
正当なクレームと不当なクレームを見極めて、正当なクレームには適切な対応をする必要があります。
ただし、「正当なクレーム」と「不当なクレーム」の差は、わかりにくいこともあります。また、塾側の問題を指摘する正当なクレームであっても、その主張が度を超えてしまえば不当なクレームとなる場合もあります。
具体的な基準としては、以下のいずれかに当てはまるようであれば、不当なクレームと判断できるでしょう。- 金銭を要求する
- 土下座など、行きすぎた謝罪を要求する
- 月謝を支払わない等の規約に違反した行為がある
- 子どもの待遇を変えるようにと強要してくる
- 暴力や暴言がある
上記のようなクレームをされた場合、放置したり言いなりになったりすると、さらにクレーム行為が悪化してしまうおそれがあります。
不当なクレームには毅然(きぜん)とした対応を行いましょう。
3、クレーマー親への対応方法
クレームに対してその場しのぎの対応を行っても、むしろ事態が悪化してしまう可能性があります。クレームに対し、「不愉快な思いをさせたことについて、真摯に謝罪をする」という対応は一つの対応として有効ですし、それで解決するケースもあると思いますが、それでも解決しないということもあり得ます。
以下では、不当なクレームを繰り返す親に対する、対応方法の一例を紹介・解説します。
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(1)クレーム対応をマニュアル化する
平常時から準備しておくべきこととして、「クレーム対応の手順をマニュアル化する」ことがあります。
クレーム対応の担当者の決定やクレームを申し入れられた時の対応手順、トークスクリプトの作成などを規定しておくと、実際にクレームが発生した場合にも、対応がスムーズに進むためです。
マニュアル化が難しい場合には、弁護士などの専門家にご相談ください。 -
(2)クレームを記録して証拠として残す
クレームを申し入れられたら、「丁寧にヒアリングをすること」とともに、「クレーム内容を記録しておくこと」が重要になります。
その際には、事実関係と相手の主張とを、それぞれ切り離して記録することが重要です。
また、文言のメモだけでなく、時系列も記録してください。クレームが入った日時、クレームの原因となった出来事が発生した日時を明確にしておくことは、のちの対応で有効になります。
さらに、クレームに対応をした従業員の名前も明記するようにしておきましょう。
クレームがメールやチャット等で申し入れられている場合は、スクリーンショットなどの方法で画面を保存してください。
対面でのクレームや電話でのクレームの場合は、音声データや録画データが証拠となりえます。
相手の行為が度を超えている場合、違法な行為や悪質な行為があった場合には、それらの行為に関する証拠が非常に重要になります。
常にクレームを記録できるように、ICレコーダー等を用意しておくとよいでしょう。 -
(3)警察への相談
クレーマー側が以下のような行為をした場合には、警察への通報を検討してください。
- 敷地から出るようにと伝えても居座る
- 備品を壊す、蹴る等の行為がある
- 殴る、胸ぐらをつかむ、水をかける等の行為がある
- 「○○しなければ殴る」といった脅迫行為があった
原則として、警察は、違法性がない行為には対応しません。
しかし、身に危険が及ぶような行為がある場合は、ご自身や講師、周囲の児童達の身の安全を守るために、すぐに連絡するべきです。 -
(4)法的手段の行使を検討
相手の行為が度を超えており、塾側に経済的な損害が生じている場合には損害賠償を請求できる可能性があります。
たとえば、相手が月謝の支払いを拒んでいるケースは、経済的な損失が生じているといえます。
また、塾側の経営者や教師などに精神的苦痛が発生していれば、慰謝料を請求できる可能性もあります。
相手側が不当にも請求に応じない場合には、民事訴訟の提起を検討するのも一手でしょう。
4、クレーマー対応を弁護士に依頼するメリット
クレーマーの被害に遭われている塾の経営者は、弁護士に依頼することで、より適切で確実なクレーム対応をすることができます。
以下では、クレーマー対応を弁護士に依頼することの、四つのメリットを解説します。
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(1)弁護士が対応することで相手が冷静になる
交渉相手が弁護士に変わるだけで萎縮したり態度が軟化したりすることがあります。
相手が法律の専門家であるとわかったら、逆上していた保護者も冷静になり、穏当な態度で話し合いに応じることが期待できます。 -
(2)クレーマー対応を弁護士に依頼し、負担を軽減できる
クレーマーへの対応は、非常に労力がかかります。
クレーマー保護者との電話や面談での交渉を経営者が行った場合、時間や精神力という貴重なリソースをクレーマーに割くことになり、組織としての効率も大幅に低下してしまうでしょう。
弁護士に交渉を依頼すれば、経営者はクレーマー対応の負担を軽減でき、本来の業務に専念することができます。 -
(3)インターネット上の誹謗中傷対応も可能
弁護士は、インターネットに記載された悪評や誹謗中傷等についても対応することが可能な場合があります。
インターネットへの誹謗中傷の書き込みは、塾の評判を低下させますので、迅速な対応が求められます。
不当かつ違法な誹謗中傷等に、毅然とした対応をするためには、相手方の氏名住所を特定したうえで損害賠償を求めることも検討しましょう。
また、被害の拡大を防ぐために、不当かつ違法な書き込みの削除も必要な場合があります。
弁護士に依頼をすれば、インターネット上のクレームについても、情報の開示請求や書き込みの削除請求を行うことができることがあります。 -
(4)民事訴訟を見据えた対応
弁護士なら、初期の段階で民事訴訟や刑事告訴を見据えたうえで、戦略的にクレームに対応することができます。
具体的には、相手が行った不法行為や違法行為の証拠の確保から、内容証明郵便の送付など、スムーズに訴訟に移行できるように気を配りながら対応いたします。
また、弁護士は全てのクレームについて民事訴訟等を行うわけではありません。
事情を適切に把握したうえで、訴訟の必要性を個別に判断します。
したがって、弁護士に依頼をしたからといって、すぐに訴訟などに発展するということにはなりませんので、ご安心ください。
5、まとめ
モンスターペアレンツによる過度なクレームは、塾の経営を脅かす深刻な問題です。
クレーマーを放置すると、風評被害が拡大したり、通常業務に支障を来したりするおそれがあります。
クレーマーの対応にお困りの方やお悩みの方は、弁護士にまでご連絡ください。
ベリーベスト法律事務所では、事情を丁寧に伺ったうえで、状況に即した解決方法を提案いたします。
塾を経営されているがクレームに悩まれている方々は、まずはべリーベスト法律事務所までご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています