会社からリストラされそうになったら拒否できる? 対処方法について

2021年03月30日
  • 不当解雇・退職勧奨
  • リストラ
  • 拒否
会社からリストラされそうになったら拒否できる? 対処方法について

京都労働局が公表している京都府の雇用失業情勢によると、令和2年11月の雇用保険受給者実人員は1万576人であり、前年同月比で31%の増加となっています。

また、受給資格決定件数は2165人であり、こちらも前年同月比で9.9%の増加となっています。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、企業が事業活動を縮小せざるを得なくなったことも、失業者数の増加の要因であると考えられます。

このようなコロナ禍の経営不振を受けて、企業の中では、業績回復のために人件費削減を目的としたリストラを行っているところもあるかもしれません。

突然リストラを言い渡されたとしても、労働者としては、住宅ローンや家族の生活費などもあるため、そのまま受け入れられるものではありません。できることであれば会社との雇用関係を継続していきたいと考える方が多いのではないでしょうか。

今回は、会社からリストラされそうになったときの適切な対処法について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説します。


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1、そもそもリストラとは

リストラという言葉は雇用契約を終了する意味合いで用いられることが多いですが、具体的にはどのようなことを指すのでしょうか。

  1. (1)リストラの意味

    リストラとは、「リストラクチャリング」の略称であり、もともとは、企業や社会などの「再構築」を意味する言葉として使われていたものです。

    当初は、現状の事業規模や従業員数を維持または増強した上での組織再構築を意味していましたが、現在では、「不採算事業や部署の縮小を行う」こと、または、それに伴う「従業員の解雇を行う」という意味で用いられるようになっています。

  2. (2)リストラの種類

    リストラという言葉は上記のとおり、不採算事業や部門縮小に伴う従業員の解雇・退職という意味合いで使われています。企業におけるリストラの手段として用いられる方法としては、主に以下のものがあります。

    ①希望退職募集制度
    希望退職募集制度とは、会社が通常の退職よりも有利な条件を提示して、退職希望者を募集し、退職を促す制度のことをいいます。優遇される退職条件としては、退職金の増額という扱いがなされるのが一般的です。

    希望退職者の募集による退職は、会社と労働者との合意によってなされますが、退職の扱いは自己都合退職ではなく、会社都合退職として手続きが行われます

    ②退職勧奨
    退職勧奨とは、会社が労働者に対して辞職や労働契約の合意解約を促すことをいいます。
    企業が経営上の理由でリストラを行う場合は、希望退職募集制度を実施しながらも、併せて目標退職者数を確保する目的や特定の労働者を退職させる目的で退職勧奨がなされることがあります

    ③解雇(整理解雇)
    解雇には、普通解雇、懲戒解雇、整理解雇等がありますが、リストラにおいて用いられる解雇の手法は主に「整理解雇」です。

    整理解雇とは、人員削減を目的として、会社からの一方的な申し出によって労働契約を終了させるものをいいます。

    普通解雇や懲戒解雇は、労働者側に何らかの落ち度があってなされる解雇であるのに対して、整理解雇は、労働者側の落ち度がない状況で会社側が一方的に解雇をするという違いがあります。

    また、希望退職募集と退職勧奨による退職は、あくまでも会社と労働者との合意に基づいてなされるのに対して、整理解雇は会社が労働者との合意に基づかず一方的に行われます。

2、違法なリストラの条件

会社からリストラを言い渡されたとしても、その理由や態様によっては違法なリストラとなることがあります。

  1. (1)退職勧奨が違法となる条件

    退職勧奨は、会社が労働者に対して退職を促すというものでしかありません。
    そのため、労働者が会社の退職勧奨に応じて、退職するかどうかは労働者の意思で自由に決定することができます。したがって、会社からの退職勧奨が、あくまでも「退職の勧め」にとどまるものであれば、違法ではありません。

    しかし、退職勧奨が労働者の自由意思を侵害するような手段、あるいは態様で行われた場合には、退職強要として違法となることがあります。労働者が退職勧奨に応じない姿勢を明確に示しているにもかかわらず、しつこく退職を求めたり、いわゆる追い出し部屋に追いやったり、退職届を無理やり書かせるといった行為は違法な退職勧奨となる可能性があります。

  2. (2)整理解雇が違法となる条件

    整理解雇は、会社側の一方的な都合で行う解雇であるため、整理解雇の対象となった労働者の不利益は甚大です。そのため、労働者保護の立場から、解雇の有効性については、以下の四要素によって厳格に判断されています。

    ①人員削減の必要性
    人員削減の必要性とは、企業経営上、人員削減措置が十分な必要性に基づいていること、またはやむを得ないといえることをいいます。

    ②解雇回避努力
    解雇回避努力とは、解雇以外の人員削減手段(残業削減、一時休業、配転、出向、希望退職者募集など)で解雇をできる限り回避することをいいます。

    ③人選の合理性
    人選の合理性とは、客観的に合理的な選定基準を定めて(家族構成、勤務態度、勤続年数など)、その選定基準を適切に運用し、解雇対象者を選定することをいいます。

    ④手続きの妥当性
    手続きの妥当性とは、使用者は、労働者または労働組合に対して、整理解雇の必要性や整理解雇の内容について説明を行い、真摯(しんし)に協議をすること等をいいます。

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3、リストラ対象となった場合にするべきこと

もし自分がリストラの対象となったときには、リストラに応じるか否かに関わらず、以下のことを確認しておくとよいでしょう。

  1. (1)リストラの理由を確認する

    リストラといっても、上記のとおりその態様にはさまざまな種類があります。そのため、まずは、会社に対して、どのような根拠でリストラを求めているかどうかを確認しましょう。

    リストラが単に退職勧奨にすぎないということであれば、あくまでも退職に応じるかどうかは労働者が自由に決めることができますので、リストラに応じたくなければ断ることができます。また、退職勧奨ではなく解雇であった場合にも、普通解雇なのか、懲戒解雇なのか、整理解雇なのかによってその後の争い方が変わってきます。解雇となったときには、会社に対してその理由を聞くとともに、解雇理由証明書の交付を求めるようにしましょう

  2. (2)リストラの条件を確認する

    退職勧奨は、整理解雇の前段階としてなされることもあり、退職勧奨を拒んだとしても結局は整理解雇の対象となってしまったということもあります。

    そのため、退職勧奨を受けたときには、それに応じて会社を退職するということもひとつの方法です。退職勧奨の際には、希望退職募集制度の適用がある場合も多く、任意に退職することによって、有利な条件で退職することが可能になることもあります

    ただ、退職勧奨を受けたときには、すぐに応じるのではなく、会社から提示された退職条件などを十分に考慮した上で、慎重に判断するようにしましょう。

4、リストラを拒否する方法

リストラを言い渡された場合には、それを拒否したり、違法性を争うことができる場合があります。

早期退職募集制度や退職勧奨などは、あくまでも労働者の自発的な意志によって会社を辞めることですので、会社からリストラを言い渡されたとしても、自由に拒否することができます。

他方、整理解雇としてのリストラは、会社として一方的に進めることが可能ですので、労働者の側でそれを拒否することが難しい場合が多いかもしれません。しかし、整理解雇の場合には、労働者保護のため厳格な解雇規制がありますので、整理解雇の要件を満たさないときには、その無効を求めてリストラを争うことができます。

5、弁護士がサポートできること

リストラを言い渡されたときには、弁護士への相談によって以下のサポートを受けることができます。

  1. (1)違法なリストラであるかを判断することができる

    リストラを宣告されたとしても、それが違法かどうかについて法律に詳しくない場合には正確に判断することができません。また、リストラもさまざまな種類があり、自分がどのような根拠でリストラされたか正確に理解していない方もいるでしょう

    退職勧奨によって辞めるかどうかは労働者の自由な意思によって決めることができますし、整理解雇をするとしても厳格な規制があるため、会社としては容易に解雇できるものではありません。

    そのため、実際には違法なリストラをされているというケースもありますので、まずは弁護士に相談をしてみることが重要です。

  2. (2)違法なリストラを争うことができる

    違法なリストラであった場合には、会社とその違法性をめぐって、争っていかなければなりません。

    労働者と会社では圧倒的に労働者が弱い立場にありますので、労働者個人が会社と話し合いをしようとしても、まともに取り合ってくれないことがあります。

    その場合、弁護士が労働者の代理人として交渉することで、会社と対等な立場での話し合いが実現する可能性が高まります。弁護士を窓口とすることによって、労働者本人が会社と直接話し合いをする必要がなくなることも弁護士に依頼をするメリットといえます。

  3. (3)必要な証拠収集のアドバイスをもらえる

    違法なリストラを争うためには、それを裏付ける証拠を収集しなければなりません。
    どのような証拠が必要となるかについては、事案によって異なってきますので、適切に判断するためには、弁護士のサポートが不可欠です。
    証拠の有無は、裁判に発展したときには勝敗を左右する重要な要素となります

6、まとめ

勤めている会社からリストラを言い渡されたとしても、その理由によっては、労働者が自由に拒否することができるものがあります。その内容に納得ができないのであれば、安易に応じることなく、まずは弁護士に相談をしましょう。

ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、労働問題について経験豊富な弁護士が労働者のサポートを行っています。リストラについてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています