追い出し部屋への異動は違法? 対処方法や相談先について弁護士が解説

2022年01月27日
  • 不当解雇・退職勧奨
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追い出し部屋への異動は違法? 対処方法や相談先について弁護士が解説

追い出し部屋という表現があります。一般的には、やりがいのない部署に異動を強いられたり、能力に合わない単純作業を押し付けられるなどして社内で孤立させられたりするような環境のことを言います。

追い出し部屋は、企業側が不要だと感じた従業員を自主的な退職に追い込むために用いられることが多いため、解雇問題と直結しています。本コラムでは、追い出し部屋への異動が違法になる場合や対処法について、ベリーベスト法律事務所の弁護士が詳しく解説します。


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1、追い出し部屋とは

日本は労働者の雇用を守るための法整備が進んだ国であるため、会社側が従業員を解雇する場合、客観的合理性と社会的相当性がない限り、解雇することは許されていません(労働契約法16条)。つまり、強い解雇制限があるため、会社が恣意(しい)的に従業員を解雇することはできません

そのため、会社としては、解雇ではなく、「従業員が自主的に退職するように追い込む」という手段をとるケースがあります。その手段として用いられるのが、「追い出し部屋」です。追い出し部屋では、能力や経験に見合った仕事が与えなかったり、大量の単純作業を強いたりすることで、社員の労働意欲や自尊心を失わせようとします。
追い出し部屋に入れられた社員が自分の能力や存在意義が認められない状況に苦痛を覚えて、自ら退職を選択するという事例は、多々起こっているのです。

2、追い出し部屋の違法性について

追い出し部屋は会社から労働者に対する配置転換または異動という形式で行われます。裁判などでは、この配置命令または異動が違法といえるのかが問題となります。配置転換や異動のすべて違法になるわけではありませんが、次のような場合には、違法と認められる可能性があるのです。

  1. (1)違法な配置転換にあたる場合

    部署異動などの配置転換は、正当な職務遂行のために行われる場合には違法ではありません。ただし、もっぱら「退職させる」という動機に基づいて行われた場合は、違法であり無効と判断されます。
    追い出し部屋への異動は、対象となった従業員に自主的に退職させるという意図が見え隠れしています。この場合、退職ありきの異動であることを客観的に立証できれば、配転命令の違法性と無効を主張することができるのです。具体的には、異動に至るまでの経緯、異動の必要性、人選の合理性、手続きの相当性、対象となる従業員の不利益性などが、考慮要素として考えられるでしょう。

  2. (2)違法な退職勧奨にあたる場合

    退職勧奨とは、会社側から労働者に対して自主的な退職をすすめてくる行為です。退職を勧めること自体は違法ではありません。しかし、退職勧奨が社会通念上相当な範囲を超える場合には、退職の強要として違法となる可能性があります。この「社会通念上相当な範囲」を超えるか否かについては、退職勧奨された労働者が、自由な意思決定を妨げられる状況であったか否かが判断基準となります。多数回、長期間にわたり退職を迫る、名誉を害す言葉で退職を迫る、理不尽に仕事を取り上げて追い込む、といった行為がある場合には、退職勧奨が違法になる可能性があります。

  3. (3)パワハラとみなされる場合

    パワーハラスメントとは、職場での地位などの優位性を利用して、業務な適正な範囲を超えて相手に肉体的・精神的苦痛を与える行為または職場の環境を害する行為をいいます。パワハラというと、暴力や暴言の繰り返しというイメージがあるかもしれませんが、実際にはさまざまな類型があります。
    追い出し部屋に関係するパワハラの類型としては、以下のようなものがあります。

    • 正当な理由もなく仕事を取り上げること
    • 経験にそぐわない単純作業だけをやらせるなど、過小な要求を繰り返す
    • ことさらに無視して、孤立させる
    • 回覧物や社内メールを一人だけ送らずに、人間関係を切り離す


    異動命令や追い出し部屋に異動したあとの業務命令行為がパワハラとして評価された場合には、違法な行為として、損害賠償請求の対象となります

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3、追い出し部屋に異動させられた場合の対処方法

  1. (1)すぐに応じないこと

    自分が受け取った異動の打診が、追い出し部屋への異動だと疑われる場合は、すぐには応じないようにしましょう。まずは異動の理由を説明するように求めてください。そして、その説明に納得できなければ、異動を拒否することも検討してください。
    拒否する場合には、退職強要を目的とする異動は違法であることを主張したうえで、異動を強要するなら裁判で訴える意向があることをはっきりと伝える、という方法が有力です。

  2. (2)記録を残すこと

    追い出し部屋に異動させられるときは、会社側に何らかの思惑があることが多いものです。自主的な退職に追い込みたい、人員整理のひとつの手段としている、特定の人物に対するパワハラなど、さまざまな可能性があります。
    会社側の思惑が何であるにしても、追い出し部屋に追い込まれる従業員としては、自分の身を自分で守る必要があります。そのためには、会社の対応や上司の言動について、きちんと記録をとっておくことが重要です
    あとから違法性を主張する場合にも、証拠がない場合には、主張が認めらないおそれがあります。「客観的にみて、会社の判断が不当である」と立証するためにも、会社からの通達はすべて口頭ではなく書類にしてもらうように求めて、メールや電話などの記録もきちんと残しておきましょう。

  3. (3)転職も選択肢に入れる

    追い出し部屋への異動を打診がされるような状況では、従業員は会社から十分な評価が得られていない可能性が高いでしょう。そのような場合には、会社に残っていても、困難な状況は続いていくはずです。
    また、「やりがいのある仕事をしたい」と望んでいる人にとっては、不本意な異動はストレスが多いものとなります。異動先での生活を受け入れられない場合や、そもそも会社の方針に納得ができない場合には、転職活動を行うことも現実的な対策となります。

  4. (4)会社の違法性を訴える

    追い出し部屋の異動が、パワハラや違法な退職勧奨にあたる場合は、法的な手段に訴えることができます。
    また、異動自体に違法性がなくても、追い出し部屋に移ったあとに退職せずに在職していると、会社からの風当たりがさらに強くなり、結果的に違法な状態に至ることもあります
    このような状況において会社に対して毅然(きぜん)とした態度で臨みたい場合は、法律の専門家である弁護士に依頼や相談をしたうえで、会社に対して違法性を主張することを検討しましょう。

4、追い出し部屋に関する相談先

追い出し部屋に異動を打診されたり、異動後につらい目にあわされたりしている場合は、次のような相談先に連絡してみましょう。

  1. (1)厚生労働省の労働相談窓口

    厚生労働省は、全国の各都道府県労働局と労働基準監督署内に、労働相談窓口を設置しています。解雇、配置転換、賃金の引き下げ、職場でのいやがらせ、パワハラなど、あらゆる分野の労働問題が労働相談の対象となります。
    労働相談窓口では、専門の相談員が、面談または電話で相談に乗ってくれます。全国379か所に設置されていますので、利用する際には最寄りの窓口をお調べください。

  2. (2)労働組合

    会社内に労働組合がある場合には、組合に相談するという方法もあります
    労働組合では、労働者の権利を守るためにさまざまな取り組みを行ったり、労働者の個別の事情の相談に乗ったりしてくれます。組合が味方になってくれそうな場合には、相談してみてもよいでしょう。

  3. (3)医療機関

    追い出し部屋に追いやられてストレスがたまることは、体調不良の原因となります。
    とくに、明らかな退職勧奨やパワハラがある場合には、精神的な負担が増して、心身が故障してしまうおそれもあるのです。
    仕事の問題が解決できたとしても、健康を壊してしまうと、これからの人生を生きるうえで大きな損失となりかねません。少しでも心身に異常を感じたら、決して無理をせず、早めに病院にいくようにしてください

  4. (4)労働審判

    追い出し部屋への異動措置が違法なレベルに達していると感じたなら、裁判所「労働審判」制度を使って、すぐに会社を訴えることも検討できます
    労働審判とは、労働審判官(裁判官)1人と労働問題についての専門的な知識と経験をもつ労働審判員2人から組織された労働審判委員会が、労働事件を解決するための手続きです。原則として3回以内の期日で審理が進む、スピーディーな解決が特徴となっています。
    労働審判では、まず、審判官・審判員を介した当事者間の話し合いを行います。話し合いで解決できない場合は、審判によって判断が下されて、解決に至ります。通常の裁判に比べて手続きが簡素な点がメリットですが、一方で、複雑かつ対立関係が激しい事案を解決するには不向きです。いずれにしても、労働審判はあくまで「裁判手続き」の一種として位置づけられているため、法的な判断や裁判所のルールにのっとって手続きを進める必要があります。

  5. (5)弁護士

    法的な手段を辞さないくらいに、会社に対して理不尽さや怒りを感じている場合には、まずは弁護士に相談することをおすすめします。
    そもそも、会社の対応が違法なレベルかどうかを判断することは、当事者である個人には難しいことです。しかし、労働事件に詳しい弁護士であれば、事情をうかがうことで違法かどうかを判断できます。また、会社の対応が違法であった場合は、異動の無効や、会社や上司の違法性を主張して訴えるなどの手続きも検討できます。
    仮に違法でない場合にも、弁護士なら「労働者がどのように行動すればよいのか」といったアドバイスをすることもできます。追い出し部屋への異動にはさまざまなパターンがあるため、個別の状況をふまえた対応を検討するためには、法律の専門家である弁護士に個別に相談することが重要なのです。

5、まとめ

追い出し部屋への異動を打診されると、精神的なダメージも大きく、会社に対する怒りも湧いてくるでしょう。
追い出し部屋への異動は、客観的にみても違法と判断される場合があります。疑問を抱いたら、早めに弁護士に相談して、自身の状況にあったアドバイスをもらいましょう。
ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでは、労働問題についての解決実績が豊富な弁護士が、労働者側の相談をうかがっています。ぜひ、お気軽にお問い合わせください

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