任意同行と出頭、逮捕はどう違う? 疑問点について弁護士が解説
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「大学の街」といわれる京都には多くの大学があり、市街地は学生でにぎわっています。その一方で、少年犯罪の摘発数や再犯者率などがやや高めの傾向となっています。
万引きや自転車泥棒などの場合、中にはゲーム感覚でしてしまう方もいるかもしれませんが、それらはれっきとした犯罪です。もし、軽い気持ちでこのような罪を犯してしまった場合、どうすればいいでしょうか?
また、誰にもバレていないと思っていたところ、数か月後に警察から任意で話を聞きたいため任意出頭、あるいは任意同行をしてほしいと連絡があったような場合、どのように対処すべきでしょうか?
本記事では、警察から任意同行を求められた場合の適切な対処方法について、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、任意同行とは?
刑事訴訟法第198条1項では、警察や検察官が犯罪の捜査をするにあたり必要があるときは、犯罪の疑いのある人物の出頭を求め、これを取り調べることができると規定しています。
警察官に職務質問を受けて任意同行を求められるイメージを思い浮かべる方も多いでしょうが、事件捜査の参考人として任意同行を求められる場合もあります。
また、警察からの呼び出しとして任意出頭を求められるケースもありますので、以下で詳しく説明していきます。
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(1)任意同行の定義
任意同行とは、警察が被疑者の家や職場などに出向いて、警察署や交番などの捜査機関への同行を求めることです。
あくまでも任意ですので、強制的に警察が捜査機関に連行したりすることはできません。
強制的に連行する場合は、裁判官の発布した逮捕状が必要になります。 -
(2)任意出頭との違い
任意出頭とは警察から電話や手紙などで、日時を指定して警察署まで来るように求められることをいいます。
こちらも任意同行と同様に強制的な処分ではありませんので、あくまでも任意での出頭を促すことになります。
どちらも任意で被疑者、または参考人として捜査機関に協力することですが、両者の違いは、警察が迎えに来る任意同行のほうは事件が重大であり、緊急性が高い可能性があると考えられます。
2、任意同行は断ることができる?
警察からの連絡や、自宅に来られて任意同行を求められたりした場合、どのような対応が適切なのでしょうか? ここでは、任意同行を求められた際の注意点を述べていきます。
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(1)任意同行は拒否できる
任意同行はあくまでも被疑者の意思に基づいて、犯罪の捜査に協力することです。したがって、逮捕や勾留されている場合を除いて、出頭を拒否したり、出頭したとしても、いつでも退去したりできます(刑事訴訟法198条1項但書)。
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(2)任意同行を拒否することのデメリットはある?
前述したように、任意同行は法律の規定に基づいて拒否できます。しかし、実際に任意同行を拒んだ場合、逮捕されてしまうのではないかと不安になる方も多いでしょう。
逮捕には裁判所が発布する逮捕状が必要で、犯人に逃亡、証拠隠滅の恐れがあるときに発行されます。
任意同行を拒むことで、逮捕の理由、必要性(例えば、逃亡、証拠隠滅の恐れがある)と認められた場合には逮捕状が発布されて、逮捕される可能性も高くなります。
そのため、罪を犯したことに覚えがあって任意同行を求められた場合は、可能な限り応じたほうがよいでしょう。
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3、任意同行されたら必ず逮捕される?
任意出頭後に捜査が進み、容疑が固まれば警察に逮捕される可能性はあります。しかし、必ずしも逮捕されるわけではありません。任意同行後にどのような経過をたどるのか、具体的に見ていきましょう。
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(1)在宅事件として取り扱う場合
警察が逮捕せずに任意同行を求める理由として、在宅事件として処理していこうと考えているケースがあげられます。
在宅事件とは、起訴するかどうか検察が判断するまでの間、自宅で通常通りの生活をしつつ、警察や検察から呼び出しがあった場合には、それに応じて取り調べなどの捜査を受ける事件のことです。
逮捕された場合、身体拘束の期間には厳しい制約があります。たとえば、逮捕されてから72時間は弁護士以外の誰とも連絡を取ることができないという状況に置かれます。このような状況に置くことが、病気などの身体上の理由で逮捕に適さないと判断された場合などには、逮捕されずに在宅事件として取り扱われるケースがあります。
なお、在宅事件は逮捕された場合と比較すると、法律に基づく時間の制約がないため、ほぼ通常通りの生活を送ることができますが、捜査が長期化する可能性があります。 -
(2)逮捕前の取り調べの場合
前述の通り、逮捕された場合には取り調べには厳しい時間制約があります。
逮捕後48時間以内に警察では取り調べを終了し、さらに取り調べの必要があると判断した場合、身柄を検察に移さなくてはなりません。
検察でも、24時間という時間制約の中で取り調べを完了し、そのまま身体拘束をして勾留し、取り調べを続けるかどうかを決めなくてはなりません。
その後、検察がさらに取り調べが必要であると判断し、裁判所に勾留請求をした結果、勾留が認められると、原則10日間、延長が認められると最大20日間勾留されます。
つまり、最大23日間の身体拘束を受けた後、起訴するかどうかの判断が下されます。
任意同行にはこのような制約がないため、逮捕の必要があるとの判断にいたるまでは任意同行を求めて取り調べを進めるケースがあります。
4、任意同行後でも弁護士に相談したほうがよい?
警察に任意同行を求められた場合、前述した理由から、可能なら協力したほうがよいと考えられます。そのときに、弁護士に相談する必要があるかどうか悩む方も多いでしょう。
しかし、任意同行であっても弁護士に相談することで、さまざまなメリットを受けることができます。
以下に具体的に、任意同行を弁護士に相談するタイミングとメリットについて見ていきましょう。
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(1)できれば任意同行前にご相談を
警察に任意同行を求められた場合、事前に弁護士に相談することができれば、任意同行を拒否できることや、応じたとしてもいつでも退去できることなどを教えてもらえます。
また、任意同行の場合、警察はその理由を説明せずに同行を求めてくるケースがあります。弁護士であれば、そのような場合でも、どのような事件について、被疑者もしくは参考人としてどのような話をききたいと考えているのかなど、事前に警察に具体的な内容を確認して、対応策を考えることができます。
また、取り調べに対してもどのように受け答えするべきかなどのアドバイスをすることができます。
なお、任意同行には明確な時間制約などがないため、連日の長期間の取り調べなどが不当な身体拘束につながる可能性もあります。弁護士に相談すれば、このような不当な取り扱いも避けられ、日程なども弁護士から警察に交渉して調整してもらうことができます。
任意同行には弁護士も同行することができますので、逮捕される可能性があり、不安がある方はぜひ事前に弁護士にご相談ください。 -
(2)任意同行後の弁護士への相談
任意同行の前に弁護士に相談することが望ましいですが、実際には、任意同行後に弁護士に相談される方が多いのが実情です。
そんな場合でも、弁護士ならば逮捕されずに在宅事件となるよう働きかけることもでき、逮捕された場合には逮捕後72時間の面会制限がある中でも唯一の面会者として、外部との連絡や、取り調べのアドバイス、早期釈放に向けた活動をすることが可能です。
勾留され、起訴された場合でも、裁判において手続きの不当性を争い、減刑や執行猶予を勝ち取ることに尽力します。
弁護士には、できるだけ早い段階で相談することで、身体拘束からの早期解放の可能性があります。任意同行を求められ、取り調べを受ける中で逮捕される可能性を少しでも感じた方は、すぐにでも弁護士に相談することをおすすめします。
5、まとめ
ここでは、警察に任意同行を求められた際の注意点や、アドバイスなどをご紹介してきました。
普段の生活の中でも、警察に職務質問をされたりすると、犯罪などに心当たりがなくても動揺してしまう方が多いと思います。実際に事件に心当たりがあり、逮捕される可能性がある方なら、なおさら動揺してしまうでしょう。
しかし、任意同行を求められてとっさに逃げてしまうなど、警察があやしいと疑うような行動を取ってしまうと、逮捕される可能性が高くなります。
そうならないためにも、警察に任意同行を求められた際には迅速に弁護士に相談することをおすすめします。もし本当に罪を犯したとしても、不当な取り調べを防ぎ、早期釈放、早期解決に向けて心強い味方になります。
警察に任意同行を求められ、逮捕されるかもしれないと不安に思っている方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスにぜひお気軽にご相談ください。刑事事件の経験豊富な弁護士が、早期解決に向け全力でサポートいたします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています