横領罪するとどのような懲罰をうけるのか? 横領罪の種類と懲役について

2019年07月05日
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横領罪するとどのような懲罰をうけるのか? 横領罪の種類と懲役について

平成30年9月、会社からおよそ2000万円を横領した務上横領の疑いで、元経営者で当時パート従業員だった京都市在住の女性が逮捕されたという報道がありました。

このように、自分の管理下にある他人の財産や金品を着服すると、横領罪に問われる可能性があります。横領にもさまざまな種類があり、懲役の長さも異なります。ここでは、横領罪の種類やその定義、仮に横領に手を染めてしまったり横領を疑われたりした場合の対処法などについて、京都オフィスの弁護士が解説します。


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1、横領罪の概要と種類

  1. (1)横領罪とは

    横領罪とは「自分で管理や所有している他人の金銭や物品を自分のものにしてしまうこと」です。具体的には下記のような事例が横領罪に該当します。

    • 管理を任されていた会社のお金を私的な買い物で使い込んだ
    • 預かっていた友達の本を売り払った
    • 落ちていた財布のお金を使った


    このように、自分が管理していたもの、もしくは、他人の管理下から離れたものを自分のものにして、逮捕されると「横領罪」で有罪になる可能性があります。

    ちなみに、自分が管理していない会社の物品を盗んだ場合は窃盗罪に問われる可能性があります。

  2. (2)横領罪の種類と懲役

    横領罪には、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の3種類があります。それぞれ、対象となる行為や懲役が異なりますので、違いや量刑について解説します。また、横領罪に似た犯罪の「背任罪」の概要と違いについてもわかりやすく説明します。

    ●単純横領罪
    単純横領罪は刑法252条で規定されている横領です。
    「自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の懲役に処する」

    1. ①友達から借りていたカバンを転売した
    2. ②友達から預かっていたお金でパチンコをした
    3. ③図書館の本を返却せずに自分のものにした


    これらの罪を犯し、逮捕されてしまうと単純横領罪に問われる可能性があり、有罪になると、「5年以下の懲役」に処される可能性があります。単純横領罪でも、罰金刑がありませんので、執行猶予が付かなければ刑務所に服役しなければなりません。

    ●業務上横領罪
    業務上横領罪とは、雇用や委託契約を結んでいる企業や団体の業務の中で横領した際に問われる可能性がある罪です。刑法253条では業務上横領罪を以下のように規定しています。

    「業務上自己の占有する他人の物を横領した者は、10年以下の懲役に処する」

    具体的には「経理を任されている方が会社のお金を使い込んだ」、「会社の備品を管理している総務の方が会社の備品を無断で販売して私服を肥やしていた」などのケースが、業務上横領に該当します。業務上横領は、単純横領よりも量刑が重く有罪になった場合は「10年以下の懲役に処する」と規定されています。こちらも罰金刑はありませんので、有罪になり執行猶予が付かなければすぐに服役することになってしまいます。また、執行猶予付き判決は「懲役3年以下、もしくは50万円以下の罰金」の判決の場合のみつけることができますので、懲役4年以上を言い渡された場合、執行猶予はつかずに、刑務所に服役しなければなりません。

    ●遺失物等横領罪
    遺失物等横領罪とは、忘れ物や落とし物を自分のものにする行為です。刑法254条では遺失物等横領罪を以下のように規定しています。

    「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」

    遺失物等横領罪における「遺失物」とは他人の管理下を離れたものです。たとえば海から流されてきたギターを自分のものにしてしまったが所有者が現れたなどの場合は遺失物等横領罪に問われる可能性があります。

    落とし物を拾って自分のものにして遺失物等横領に問われる可能性がありますが、落とし物の場合は、「他人の管理を離れたかどうか」で遺失物等横領罪に問われる場合と、窃盗罪に問われる場合があります。他人の管理を離れたかどうかは、落としてからの時間経過や持ち主との距離などの状況によって判断されます。

    遺失物等横領罪の量刑は「1年以下の懲役または10万円以下の罰金」ですが、窃盗罪は「10年以下の懲役」と、窃盗罪のほうが重い量刑を科されることになりますので、落ちていたものが所有者の管理を離れていたかどうかが重要になります。

    ●背任罪
    横領と似た犯罪で「背任罪」があります。背任罪は刑法247条により以下のように規定されています。

    「人のためにその事務を処理する者が、自己若しくは第三者の利益を図り又は本人に損害を加える目的で、その任務に背く行為をし、本人に財産上の損害を加えたときは、5年以上の懲役または50万円以下の罰金に処する」

    具体的には、「会社の従業員が、社長や会社をおとしめるために、わざと損害が出るような取引を行う」などのような行為が背任にあたります。横領罪では自分の管理下にある他人の金銭や物品を盗むと問われる可能性がある罪ですが、背任罪は、利益自体が対象になっています。横領罪と背任罪との違いは「損害を与える目的があったかどうか」だと考えられています。

2、横領罪は示談が有効

次に、横領罪で逮捕された場合の対処法について説明します。横領罪で逮捕された場合、早急にすべきことは「被害者との示談」です。示談を早期に完了させることで、処分が軽くなる、もしくは起訴されない可能性があるためです。ここでは、示談が有効な理由と、示談が成立しない場合の対処法について説明します。

  1. (1)横領罪で示談が有効な理由

    示談とは、民事上の手続きで被害額を賠償および、慰謝料等を支払うことで問題を解決することを言います。

    横領罪は刑法で規定された犯罪ですので、示談=無罪となるわけではありませんが、示談を完了させることで、起訴不起訴の判断や、執行猶予の有無などの判断に有利に働く可能性があります。

    横領罪のような犯罪では、被害者からの被害届の有無や示談ができているかどうかが、起訴不起訴の判断、そして刑事裁判になった場合の量刑や執行猶予の有無に大きく影響します。

    逮捕されてから早い段階で速やかに示談が完了していれば、勾留を回避できる可能性がありますし、勾留されていたとしても不起訴と判断されて刑事裁判が開かれない可能性もあります。

    また、万が一刑事裁判が開かれた場合も、示談が完了していることから軽い量刑となることもあります。遺失物等横領罪以外は、懲役刑しか存在しません。しかも最高刑が単純横領罪で5年、業務上横領罪の場合は10年と規定されており、「懲役4年以上」の判決が下された場合は、初犯でも執行猶予をつけることができず刑務所に服役しなければなりません。

    しかし、示談が完了していることで、量刑を減らせる可能性が高まりますので、単純横領罪や、業務上横領罪であっても懲役3年以下の判決が下り、執行猶予が付く可能性があります。

    つまり、横領罪に問われた社会的影響や人生への影響を抑えるためには示談を完了させることが必要不可欠なのです。

  2. (2)示談が成立しない場合

    被害者の被害感情が大きく示談ができない、加害者が示談のためのお金を用意できないために示談できない、などさまざまな事情により示談ができないケースがあります。その場合、は刑事事件の示談交渉実績がある弁護士に依頼することや、早急にお金を用意することが重要です。

    被害者の被害者感情が強く示談ができない場合は、弁護士を変えることなどで示談がスムーズに進む可能性があります。現在弁護士に依頼している場合は、弁護士の変更を検討してみましょう。弁護士に依頼していない場合は早急に弁護士に依頼してください。被害者の多くは加害者との直接の交渉よりも、冷静な第三者である弁護士との交渉には積極的に応じる傾向にあります。

    お金がない場合は、家族に示談のためにお金が必要であることを話した上で、対処法を相談しましょう。また、弁護士に相談することで解決の糸口が見つかる可能性もあります。

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3、横領事件における弁護士の必要性

次に横領罪で逮捕された場合の流れと弁護士の必要性について説明します。

通常、逮捕された場合は警察署の留置所に身柄を拘束されます。そして、48時間は警察、その後の24時間は検察官による取り調べが行われます。その合計72時間は、家族も面会することができません。

つまり、下記の期間、身柄の拘束を受ける可能性があるといえます。

  • 警察による逮捕  最長48時間
  • 検察庁への送致  最長24時間
  • 勾留  原則10日 延長の場合最大20日
  • 起訴・不起訴の判断


閉鎖された空間で取り調べが行われるため、不利な自白をしてしまうことが多々あります。のちのちの判断に悪影響を与える可能性が考えられます。そのような事態を避けるためには、家族でも面談不可能な72時間でも接見可能な弁護士に依頼すべきです。

弁護士は逮捕された方の要望に従って、いつでも接見することができ、取り調べの際に不利な状況にならないためのアドバイスが可能です。また、それと同時並行で被害者との示談も進行しますので、早期の示談が望めます。

逮捕から72時間に示談が完了すれば、その後の最大20日間に及ぶ勾留を回避できるかもしれません。また、勾留期間中もしくは検察の捜査が完了するまでに示談を完了させることができれば、不起訴と判断されて、前科がつかず晴れて日常生活に戻ることが可能です。

弁護士に依頼することで、身柄拘束の可能性や起訴の可能性を大幅に下げることができますので、逮捕されたら早めに弁護士に依頼しましょう。

4、まとめ

横領罪で逮捕されると、早急に示談を完了させなければ、執行猶予がつかない懲役刑に処される可能性があります。懲役刑を避けるため、起訴を回避するためには弁護士に依頼して弁護活動や示談交渉をスタートしましょう。

ベリーベスト法律事務所 京都オフィスでも横領罪の弁護を行います。逮捕される前、もしくは逮捕されてからできるだけ早い段階でご連絡ください。親身になってお話を聞き、迅速に対応します。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています