子どもが詐欺罪で逮捕されたら何ができる? 詐欺罪の疑問を京都の弁護士が解説
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京都府内でもオレオレ詐欺などをはじめとした特殊詐欺事件は多く起こっています。平成30年8月には、高齢者から現金やキャッシュカードをだまし取った容疑で詐欺グループ主犯格の男が逮捕されるとともに、受け子役の少年が3人逮捕されたことが報じられました。
もし自分の子どもが、このような詐欺事件の加害者になってしまったら、親としてどうしたらよいのでしょうか。できる限り本人の将来に影響がないようにしたいと考える方は少なくありません。
本コラムでは、家族が詐欺事件で逮捕されてしまった方に向けて、詐欺罪の基本的な知識や疑問、逮捕された家族のためにできることを、京都オフィスの弁護士が解説します。
1、詐欺罪の概要
まずは、詐欺の種類や罰則、量刑など、詐欺罪の基本的な情報を知っておきましょう。
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(1)詐欺の手口はさまざま
詐欺とひとくちに言っても、さまざまな手口があります。以下では、詐欺の種類として一例を紹介しましょう。
- 架空請求詐欺……架空の事実(例:動画サイトの利用料金が発生している)を根拠に請求書を送付し、現金を振り込ませる詐欺
- 投資詐欺……社債や未公開株、先物取引などの投資話を持ちかけて購入費用をだましとる詐欺
- 還付金詐欺……市役所や税務署の職員を名乗って電話をかけてATMへと誘導し、現金を振り込ませる詐欺
- 情報商材詐欺……「必ず誰でも1日で100万円稼げる」などの誇大広告で誘導し、ほとんど価値のない情報商材を購入させる詐欺
- オークション詐欺……ネットオークションなどで商品購入代金を先に振り込ませ、商品を送らない、別物を送るなどする詐欺
また警視庁では、不特定多数の人に対して行われる、電話やメールなどを用いた対面によらない詐欺を「特殊詐欺」と位置づけています。架空請求詐欺や還付金詐欺のほか、高齢者の親心につけこむ「オレオレ詐欺」もそのひとつです。
なお、実際に金品を受け取ることができなかったとしても、詐欺行為を行ったことが明らかであれば詐欺未遂罪として罪が問われることになります。 -
(2)詐欺罪の量刑
詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。量刑については、事件の重大性、悪質性、被害者の処罰感情などが考慮されます。たとえば次のような要素があると、量刑が重くなりやすい傾向にあります。
- 組織的に行った
- 被害者の損害額が大きい
- 被害者との示談が成立していない
- 犯行の動機に情状の余地がない
- 手口が巧妙、用意周到
また、詐欺罪はいくつもの詐欺行為を同時に行っていることがある犯罪です。初犯であれば法定刑の範囲内で罰が決まりますが、複数の詐欺に関与していたり、詐欺の前科があったりすると刑期が長くなることがあるでしょう。
2、詐欺事件で家族が気になる疑問
詐欺事件で子どもが逮捕されてしまうと、ご家族としては不安や疑問で頭がいっぱいになるはずです。ここでは、詐欺事件でご家族が気になる点を見ていきましょう。
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(1)逮捕されたあとの流れは?
詐欺罪で逮捕された方が成人しているときは、次の流れで手続きが進みます。
- 警察による捜査、検察への送致……逮捕後48時間以内
- 検察官による捜査、勾留請求……送致後24時間以内
- 勾留決定後……原則10日間、最長20日間の勾留
- 勾留期間満了、もしくは取り調べが終わり次第……起訴、不起訴処分の決定
つまり、特に何も対応しなければ、逮捕されてから起訴か不起訴かが決まるまでの間だけでも最長23日間も身柄の拘束を受けることになります。学校や会社へ通っているのであれば、大きな影響を受ける可能性は否定できません。
また、不起訴処分となれば前科もつかずに帰宅できますが、起訴されると刑事裁判が終わるまで引き続き身柄を拘束されます。その場合は保釈請求を行い、認められれば帰宅することができるでしょう。
なお、逮捕された本人が14歳以上の未成年者であれば「犯罪少年」と呼ばれ、成人同様に逮捕や勾留されることがあります。ただし、検察による不起訴という判断が下ることはありません。取り調べなどが終わったあと、原則的には家庭裁判所による少年審判が開かれ、少年自身の更生を目的にした処分がくだされます。
また、逮捕された本人が14歳未満のときは「触法少年」と呼ばれ、刑事責任を問うことができないため逮捕されることはありません。しかし、児童福祉法に基づき、児童相談所などによる措置が行われます。 -
(2)詐欺だと知らずに加担した場合も罪になる?
詐欺罪の成立には「故意」が必要です。自分がやっている行為が詐欺だとは知らずに加担した場合は、詐欺罪には問われないともいえるでしょう。
しかし、確証がなくても「もしかして詐欺のようなことをしているのでは」といった程度の認識があれば、故意があったと判断される点に注意が必要です。たとえば「受け子」と呼ばれる詐欺被害金の受け取り役を担当していた場合、「お金を受け取るだけでアルバイト代をもらえる」と聞いていたのであれば、多少なりとも疑う余地はあったでしょう。「まったく知らなかった」と主張しても通らない可能性が高いと考えられます。
取り調べでも厳しく追及されることになるでしょう。本当に詐欺だと知らず、一切考える余地がない状態であったにもかかわらず加担してしまった場合は、その事実を主張していくことになります。 -
(3)実名で報道される?
実名報道については報道機関の判断によるものですから、明確な基準はありません。一般的には、社会的な影響力や関心が高い事件については実名報道されやすいと言われています。
他方、加害者が未成年である場合や、事件の内容・結果が軽微である場合には実名報道されることがほとんどありません。なお、京都府警ではホームページ上で特殊詐欺の手口や犯人の音声を公開しており、府民の警戒を呼びかけています。このことからも、詐欺罪は社会的な影響力や関心が高い犯罪のひとつと言えるでしょう。
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3、詐欺罪で逮捕された子どものために家族ができること
子どもが詐欺罪で逮捕されてしまったとき、残された家族には何ができるのでしょうか。
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(1)早期に弁護士を依頼すること
詐欺罪は起訴され有罪になると、執行猶予がつかない限り必ず刑務所で服役する懲役刑が科される犯罪です。しかし、起訴、不起訴処分の決定までに長くても23日しか猶予がなく、少なくとも逮捕段階である72時間以内に適切な弁護活動を行うことが必要となります。また、たとえ執行猶予がついたとしても長期にわたる身柄拘束を受ければ、社会復帰がより難しくなる可能性が高まります。
そこでまずは、長期の身柄拘束と起訴を回避することが非常に重要なポイントとなるでしょう。ただし、いつでも接見ができ弁護活動を行えるのは弁護士のみに限られます。したがって、逮捕の事実を知った家族は、すぐにでも弁護士への依頼に向けて動き出すことが大切です。 -
(2)面会をして本人を励ますこと
逮捕後72時間は、たとえ家族であっても本人と面会することはできません。一般的には逮捕から3日以降の勾留段階になれば面会できるようになります。それでも組織の関与が疑われるような詐欺事件の場合、共犯者による証拠隠滅を防止するため、勾留段階になっても面会の制限を受けるケースがあるでしょう。
しかし、逮捕直後であっても接見が制限を受けている状況でも、弁護士であれば接見が可能です。依頼を受けた弁護士は、接見を通じて不当な取り調べを受けていないかを確認するとともに、事実関係を聴取し、そのうえで弁護活動を行います。
逮捕された本人は精神的につらい思いをしているでしょうから、家族の気持ちを伝えることや、差し入れをすることは大きな心の支えとなります。差し入れできるものについては留置場によってルールが若干異なります、事前に確認してみたほうがよいでしょう。 -
(3)示談を成立させること
詐欺事件において、示談成立は重要です。
事件の内容によっては、示談が成立することで不起訴処分になる可能性があります。不起訴処分となればすぐに身柄を解放され、前科もつきません。起訴されてしまったとしても、示談成立が考慮されて執行猶予がつく可能性は高まります。やはり示談は成立させておくべきだと言えるでしょう。
ただし、そもそも被害者の個人情報を警察は加害者家族に教えることはありません。また、ご家族が直接被害者と示談交渉を行おうとすると拒否される可能性が高いものです。交渉は弁護士に一任することが最善の方法です。
示談金については身柄を拘束されている本人が用意することはできませんので、ご家族が代わりに用意します。示談金の額は、実際の被害額や被害者の処罰感情に左右されますが、少なくとも被害回復が求められるため、高額になることも予想されます。弁護士が介入することで、不当に高い示談金を要求される事態は回避できるでしょう。
4、まとめ
今回は子どもが詐欺容疑で逮捕されてしまったケースを想定し、詐欺罪の概要や気になる疑問、ご家族にできることをお伝えしました。
子どもが逮捕されればご家族が動揺してしまうことに無理はありません。しかし、冷静かつ迅速な行動によって事態の悪化を防ぐことにつながります。まずはできるだけ早いタイミングで弁護士へ相談しましょう。
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