遠方に住む息子が結婚詐欺で逮捕! 詐欺罪の量刑や逮捕後の流れとは?
- 財産事件
- 結婚詐欺
- 逮捕
- 京都
令和元年6月、交際中の女性から現金をだまし取ったとして、厚生労働省職員を装っていた派遣社員の男性が逮捕されました。男性は結婚する意思がないにもかかわらず、女性から現金120万円をだまし取ったとされています。
京都府内でも、このような結婚詐欺の事件は増えています。なかには、遠方に住む子どもが結婚詐欺容疑で逮捕され、その後の心配をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここでは、結婚詐欺の量刑や逮捕後の流れについて、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士が解説していきます。
1、結婚詐欺とは?
結婚詐欺そのものを取り締まる法令はなく、詐欺罪が適用されるかがポイントになります。しかし、結婚詐欺において詐欺罪に該当する行為があったことを立証するのはとても難しいといわれています。なぜならば、結婚詐欺についてのやり取りは男女間において口頭で行われることが多く、客観的な証拠が残りにくいため等です。
2、結婚詐欺が詐欺罪として成立するには
-
(1)詐欺罪の成立
詐欺罪は、刑法246条により以下のように定められています。
- 人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
- 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
詐欺罪が成立するためには、以下の条件が必要となります。
●欺罔(ぎもう)行為
詐欺罪は、人をだます、つまり欺く行為が認められた場合にのみ成立します。また、欺く対象は人と限られており、機械であるATMから不正に出金などの行為は詐欺罪ではなく窃盗罪にあたります。
●被害者の錯誤
錯誤とは、認識と事実が異なることです。詐欺罪は未遂の処罰規定があるため、被害者が途中で錯誤に気づいた場合、未遂であっても詐欺未遂罪が成立しえます。
●交付行為
詐欺罪の成立には、相手を欺くことにより錯誤を生じ、財産などの利益を交付させる必要があります。相手の意思に関せず財産を奪い取った場合は、窃盗罪等の他の犯罪となります。
●財産の移転
詐欺罪は、最終的には財産の利益が移転することで成立します。犯人にだます意思(欺罔)があって被害者をだまし(錯誤)、被害者が財産を処分し(交付行為)、財産が犯人または第三者に渡った(財産の移転)一連の流れが必要となります。 -
(2)結婚詐欺を立証する証拠
結婚詐欺を詐欺罪として立証するには、客観的な証拠を集めておく必要があります。具体的には以下のようなものが挙げられます。
- 身元証明書の虚偽
- 偽名
- 金銭の借用書
- お金を振り込んだ履歴の記録
- 虚偽やだましの音声を録音したテープ
- 虚偽やだましのメールの履歴
お問い合わせください。
3、詐欺罪の量刑は?
結婚詐欺が詐欺罪として認められると、10年以下の懲役となります。
損害額が大きかったり、複数回詐欺を行っていたりすると、刑が加重される可能性もあります。組織的に詐欺行為を働いていた場合には組織犯罪処罰法が適用され、1年以上の有期懲役へ加重されることもあります。ただし、初犯または被害の程度が軽微である場合には、執行猶予がつく可能性はあります。
また、詐欺罪は罰金刑がありませんが、詐欺によって取得した金銭は持ち主に返却する義務があります。詐欺罪の時効は、詐欺行為が終わったときから7年間です。被害者が損害賠償を求める権利を持つ損害賠償請求期間は、損害と犯人を知った時点から3年間と定められています。
4、結婚詐欺で逮捕されたら身柄はどうなる?
-
(1)警察による取り調べ
警察の逮捕後は、警察署の留置場に留置されて厳しい取り調べを受けます。取り調べの結果、身柄拘束の必要がないと判断された場合は釈放されます。しかし、身柄拘束の必要があると判断された場合は、逮捕から48時間以内に事件を検察に送致する流れとなります。
-
(2)検察による捜査
検察では、身柄拘束の必要がないと判断された場合は被疑者を釈放します。しかし、身柄拘束の必要があると判断された場合は、送致から24時間以内に裁判官に勾留の請求を行う流れとなります。
-
(3)裁判官による勾留
被疑者が罪を犯した理由が明確であり、被疑者に一定の事由がある場合、裁判官は勾留を決定します。勾留は原則10日間ですが、やむを得ない場合は延長することもあります。
-
(4)検察官による処分
検察官は、事件を起訴するかどうかを判断します。起訴された場合には、裁判が終わるまで長時間身柄が拘束されることもあります。
5、家族ができることは?
勾留が決定する逮捕後72時間以内に被害者との示談を成立させるべく動くためにも、家族は早急に弁護士を選任しましょう。
逮捕されてしまうと、家族であっても面会することができません。しかし、弁護士であれば被疑者と面会ができます。取り調べを受ける被疑者へ的確なアドバイスをすることが可能です。
6、弁護士に依頼するべき理由
-
(1)弁護の方針を決定できる
被疑者のためには、早期に弁護の方針を決定することが必要です。特に、結婚詐欺において詐欺罪が立証されるか否かについては、被害者をだます意思があったかどうかが争点となります。弁護の方針が定まっていない状態のままで、主張が二転三転してしまうと後々の裁判に影響が出てしまう可能性があります。早めに弁護士を選任することで、弁護方針を早期に決定することができます。
-
(2)勾留を防ぐ働きかけができる
弁護士は、検察官や裁判官に意見書を提出することができます。弁護士に依頼することで、個々のケースに合わせた適切な働きかけが可能となります。勾留後は、最大で20日間、身柄が拘束されることになります。早期に示談が成立するよう、動いてくれるでしょう。
-
(3)勾留への不服申立ができる
弁護士は、勾留に対して準抗告という不服申立を行うことができます。これは裁判官に勾留する必要がないことを主張し、身柄の解放を目指すものです。勾留の決定後は、弁護士以外との接見が禁止される場合があります。接見禁止の決定後は、家族であっても被疑者との接見が難しくなるため、勾留への不服申立や接見禁止解除などのためにも弁護士に依頼しましょう。
-
(4)不起訴の選択肢を提案できる
結婚詐欺での詐欺罪を争う場合であっても、示談となる可能性があります。示談交渉の内容によっては、不起訴となることもあり得るでしょう。弁護士は、個々のケースに合わせて不起訴に向けた働きも行うことができます。
勾留への不服申し立てや、示談交渉がうまくいかないこともあるでしょう。しかし、弁護士に依頼することで、保釈請求など本人の状況に合わせた弁護ができるというメリットがあります。
7、まとめ
結婚詐欺においては、詐欺罪が成立するか否かがポイントになります。詐欺罪で逮捕された場合は、勾留が長期となることもあります。被疑者を一刻も早く助け出すためには、できる限り早期の段階で弁護士に依頼することをおすすめします。
家族が結婚詐欺の加害者となり、逮捕後の流れや量刑についてご心配の方は、ベリーベスト法律事務所 京都オフィスの弁護士にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています