刃渡り何センチから銃刀法違反?規制される刃物の種類や罰則、逮捕された後の流れを解説
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令和5年(2023年)9月、京都市内の倉庫に拳銃3丁と実弾を保管したとして、滋賀県警は京都市の建築業者の男性と北九州市の会社員の男性を銃刀法違反の容疑で逮捕しました。
また、同年5月には、兵庫県伊丹市の男性がマンション内に拳銃1丁と実弾を保管したとして、同じく銃刀法違反の容疑で京都府警に逮捕されています。
銃刀法違反は、拳銃や銃弾のみならず刃物も規制の対象としています。
普段の生活や仕事で使うナイフや包丁についても、刃渡りの長さなどによっては「所持」は禁止されていないが「携帯」が禁止されている場合があるため、刃物を持ち歩くことで処罰されてしまう可能性もあるのです。
本コラムでは、銃刀法違反の規制内容や罰則、逮捕された後の流れなどを、ベリーベスト法律事務所京都オフィスの弁護士が解説します。
1、「銃刀法」ってどんな法律なの?
「銃刀法」の正式名称は、「銃砲刀剣類所持等取締法」といいます。
その名の通り、鉄砲や刀剣類の所持・使用などに関して危害予防上必要な規制について定めている法律です。
「銃刀法」は、平成19年12月に長崎県佐世保市でおきた散弾銃使用殺傷事件や平成20年6月に東京都千代田区でおきたナイフによる無差別殺傷事件などを受けて銃砲規制や刃物規制が強化される改正がされるなど、時代とともに規制範囲も変化してきています。
「銃刀法」では、法令に基づいた職務上の理由など、正当な理由以外での鉄砲や刀剣類の所持を禁止しています。
また刃物の携帯についても、一定の規制を設けています。
続いて刀剣類や刃物について詳しくみていきます。
2、所持が禁止される「刀剣類」はどのようなものを指すのか?
所持することさえ原則として禁止される「刀剣類」には、次のようなものが該当します(銃刀法2条2項)
- 刃渡り15センチメートル以上の刀・やり・なぎなた
- 刃渡り5.5センチメートル以上の剣・あいくち
- 45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフ(一部例外もあります)
銃刀法に違反して刀剣類を所持していた場合には、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性があります。
なお日常に使用される包丁やナイフなどは「刀剣類」には該当せず、「刃物」とされます。
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3、「所持」は禁止されないが「携帯」が禁止される場合がある
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(1)「刃物」とは
「刃物」には、包丁や果物ナイフ、カッターナイフのほかにさまざまな機能を持つツールナイフも該当します。
「料理人の方がお店で使うために包丁を持っていく」「キャンプ先で食材を切るために包丁を持っていく」など「刃物」を携帯する機会は身近にあります。
しかし「刃物」の携帯については、法に違反しないように注意が必要です。 -
(2)「刃物」に関する銃刀法の規制
銃刀法22条では、業務その他正当な理由がある場合以外は原則として刃体(柄を除く刀の部分)の長さが6センチメートルを超える刃物の携帯を禁止することを規定しています。
ただし例外的に、はさみと折りたたみナイフと果物ナイフの場合には、一定の形状であれば刃体の長さが8センチメートル以下のものであれば携帯は禁止されません。
なお、ここでいう「携帯」とは、「自宅または居室以外の場所で直接手に持ったり身に付けるなど直ちに使用できる状態で身辺に置くこと」をいいます。 -
(3)携帯が許される「業務その他正当な理由がある場合」とは?
刃体の長さが6センチメートルを超えていても「業務その他正当な理由がある場合」には、刃物の携帯が許されます。
ここでいう「業務」とは、社会生活上の地位に基づいて反復継続して刃物を使用することがその人にとっての仕事の一部といえるような場合をいいます。
たとえば、料理人が仕事のためにカバンに料理包丁を入れて持ち歩くことは「業務」にあたり、銃刀法違反にはなりません。
また「正当な理由」とは、社会通念上正当な理由があるといえるような場合をいいます。
たとえば、店で購入した包丁を自宅へ持ち帰ることは、「正当な理由」にあたり銃刀法違反にはなりません。
「キャンプで使うナイフ類をキャンプ道具とともに梱包(こんぽう)して車の中に携帯していた」というような場合も認められるでしょう。
ただし「キャンプで使ったナイフ類を後日ずっと車の中に置きっぱなしにしていた」といった場合には、もはや「正当な理由」があるとは認められず銃刀法違反になる可能性があります。
また、護身用にナイフを持ち歩くことは、銃刀法違反になる可能性があるので注意が必要です。 -
(4)刃物の携帯の罰則は?
銃刀法に違反して刃物を携帯していた場合には、2年以下の懲役または30万円以下の罰金に処される可能性があります。
また刃体の長さが6センチメートル未満でも刃物を隠して携帯した場合には、「軽犯罪法」違反となる可能性もあります。「軽犯罪法」では、正当な理由がないのに刃物や鉄棒そのほか人の生命を害したり身体に重大な害を加えるような刃物などを隠して携帯することを禁止しています。そして違反すれば、拘留または科料に処される可能性もあります。
4、模造刀剣類はどのような規制を受ける?
銃刀法22条の4では、模造刀剣類についても業務その他正当な理由がある場合を除いて携帯することを禁止しています。
模造刀剣類とは、金属で作られかつ刀剣類に著しく類似する形態を有する物で、内閣府令で定めるものをいいます。
大まかにいえば、金属製で本物の刀剣類と間違うような刀剣といえます。
木製のものや人を傷つける恐れがないことが一見して分かるような刀剣を模したものは、銃刀法違反となりません。
コスプレなどで模造刀剣類を携帯して外出するような場合には、銃刀法違反にならないように注意しましょう。
なお、模造刀剣類の携帯による銃刀法違反については、20万円以下の罰金に処される可能性があります。
5、銃刀法違反で逮捕されたらどうなる?
銃刀法違反で逮捕された場合には、逮捕後は主に次のような流れになります。
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(1)逮捕
警察に銃刀法違反で逮捕された場合には、警察署で取り調べを受けることになります。
警察は、逮捕から48時間以内に検察官に送致するかどうかを判断していきます。
なお、通常この段階ではたとえご家族であっても本人に面会することはできません。本人と面会できるのは弁護士に限られます。 -
(2)検察官送致
事件が検察官に送致された場合には、検察による取り調べが行われることになります。
検察官は、送致後24時間以内に勾留(引き続き身体拘束をすること)を裁判官に請求するかどうかを判断しなければなりません。
銃刀法違反では違反の内容が軽微であれば、早期に釈放されることもあります。
しかし恐喝や強盗などの他の悪質な犯罪とともに銃刀法違反で逮捕された場合には、裁判所によって勾留請求が認められ、身体拘束の期間が長引く可能性があります。 -
(3)勾留
検察官の勾留請求を受けて裁判官が勾留を決定した場合には、基本的に10日間勾留されることになります。また勾留延長が認められた場合には、勾留期間は最大20日間にも及ぶこともあります。
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(4)不起訴または起訴の決定
検察官が事件を刑事裁判で裁く必要はないと判断すれば、不起訴になります。
不起訴になれば、事件は終了し、前科がつくこともありません。
しかし、検察官が事件を刑事裁判で裁く必要があると判断する場合には、起訴されることになります。 -
(5)刑事裁判
起訴された場合には、裁判で主張や反論や立証などを行い最終的には裁判官が有罪または無罪の判決を言い渡します。有罪であれば量刑も言い渡されます。
6、まとめ
本コラムでは、銃刀法違反になる刃物について詳しくみるとともに、逮捕された後の流れについて解説していきました。
まずは、銃刀法について正確な知識を持ち違反にならないように注意することが大切です。
しかし「正当な理由があるのに逮捕された」「知らずに違反してしまった」といった場合には、不当に重い刑罰を受けないためにも早いタイミングで弁護士に相談することが重要です。
もしも銃刀法違反をはじめ刑事事件で逮捕された場合には、ベリーベスト法律事務所・京都オフィスまでご相談ください。刑事事件の実績が豊富な弁護士が力になります。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています